子どもの自信を育む「フロー体験」とは?折り紙・塗り絵遊びへの没頭がカギ!
塗り絵や折り紙がもたらす「フロー」って何?
フローとは、時間が経つことも忘れて何かに没頭している状態のことです。スポーツの場面でフロー状態になることは「ゾーン」と呼ばれることもあります。フロー状態に入ると目の前のことに高い集中力を発揮して没頭しているため疲れを感じず、充実した気持ちや幸福感も得やすいのだそうです。
子どもの遊びの中では、粘土や砂、水などのほんの少しの力で形が変化するものがフロー状態を起こしやすいといわれています。また、折り紙や塗り絵などのパターンのあるものもフロー体験につながりやすい遊びです。折り紙なら1枚の紙から目指す形に折り進めていく、塗り絵なら絵に色をつけていくといった分かりやすいパターンがあることが子どもに安心感を与えるといいます。
このフローを提唱したのは、心理学者のミハイ・チクセントミハイです。同氏は、7歳から10歳のときに第二次世界大戦を経験。家や仕事などの拠り所を失った人々が、幸せな生活を維持できないことを目の当たりにします。そこから「何が人生を生きるのに価するものか」について考え始めたのだといいます。
その後心理学と出会った同氏は「人は何に幸せを感じるのか」について40年以上研究を深めています。
フロー体験にはどんなメリットがある?
フローを体験すると、幸福感が高まるなどのメリットがあるといいます。ここでは、主なメリットを3つ紹介していきます。
メリット1:幸福感が高まりやすくなる
フローの状態にある、つまり子どもが遊びに没頭しているときには幸福感や充実感が高まりやすくなります。もちろん、子どもが「幸せだ」とはっきりと伝えることはありませんが、「面白い!」「楽しい!」といった言葉で幸福感を表現するといいます。フロー体験を通じて生まれた幸福感は、遊びから得られる「報酬」です。
メリット2:自己肯定感が高くなる
遊びに没頭するフロー体験から、幸福感を得られた子は自己肯定感も高まりやすいといいます。たとえば、塗り絵に夢中になっていく中では「ここは色を重ねてみよう」「違う色も合わせてみよう」と次々に自分の内側から面白さが沸き上がっているのだそうです。こうした経験を積み重ねた子は、自分にとっての面白いことや意義など、やりがいを重視する価値観を持ちやすいと専門家は話します。
一方で、「よくできたね」といった人からの評価が遊びの面白さになっている場合は、自己肯定感が低下しやすいのだそうです。人からの評価を大切にしすぎる価値観は、ときに評価に振り回されすぎてしまう可能性が高まります。外からの評価に揺らぐことなく、自分のやりがいを大切にする価値観を身につけるときにも、フロー体験は重要です。
メリット3:自信を育む
フローを体験している最中は自分の目的が明確に見えているため「できた!」という達成感があり、自信が育まれやすくなります。自分が思い描いていたイメージに近づけて完成させたときには、親が見ている以上に子どもの自信につながっていることがあるでしょう。
また、フロー体験を自身の経験を通して研究したベンジャミン・C氏によると、フロー状態にいるときには否定的な感情が抑制されるのだといいます。自己肯定感が高まっていくことと否定的な感情が抑制されていることから同氏は、フロー体験は充実した人生を送るための真の要素である、といいます。
フロー体験はどんなときに起こりやすい?
提唱者のミハイ・チクセントミハイ氏によると、次の7つの条件が揃うとフローの状態に入りやすいといいます。
- 自分が何をしたいか十分に分かっている
- すぐにフィードバックが得られる
- 何をする必要があるか分かっている
- 困難なことであってもできてしまう
- 時間の感覚がなくなる
- 自分自身のことを忘れてしまう
- 自分はより大きな何かの一部であると感じる
子どもがフロー状態に入るときにはこうした条件が揃っているかを明確にする必要はあまりないかもしれませんが、親がフロー体験をしようと思ったときには上記の条件を覚えておくと良いでしょう。
子どものフロー体験をサポートする親の対応とは?
子どものフロー体験は親の声掛けなどでさらに深めることができると言われていますが、親の対応には押さえておくべきポイントもあるようです。ここでは、フロー体験をサポートする親の対応について見ていきましょう。
子どもの活動を遮らない
子どもが何かに没頭しているときには、できるだけその活動を遮らないことが大切です。もちろん、けがや何か突発的な危険が起こる可能性もあるため見守ることは必要ですが、あれこれと口出ししたり求められていないのに手伝ってあげたりすることは避けましょう。
アドバイスよりも活動を受け止める声掛けが大切
没頭していた遊びがひと段落し、子どもが声をかけてきたり親を探し始めたりしたタイミングには、充実感を受け止める声掛けをしましょう。「ずいぶん楽しそうに遊んでいたね」「夢中になっていたのだね」などの声掛けは、没頭していた時間そのものを認めている言葉のため、子どもの自信につながっていきます。さらに子どもが工夫した点などがあったらほめてあげると良いでしょう。
一方で、このときに「もっとこうしたら良い」などのアドバイスは避けるべきだといいます。相手のためにと思って伝えたアドバイスでも、子どもから求められていない場合はせっかくのやる気を失わせる要因となるでしょう。親も何か特別なことを言わなきゃと身構える必要はなく、ただ笑顔で子どもの活動に関心を示してあげるだけで充分だと専門家は話します。
親の期待値で評価しない
子どもが折り紙や塗り絵をしていると、親は「手先が器用になっていくこと」や「絵が上手になっていくこと」など、能力が増したと喜ぶこともありますが、こうした親の期待値で評価をしないことも大切です。子どもに充足感をもたらしてくれるのは、本人の心が動かされて過ごした充実した時間であることを認識しておく必要があるでしょう。
もちろん、充実した時間を過ごした結果、手先が器用になったり絵が上手くなったりすることはあります。しかし、大人の期待する結果を軸に評価すると、子どもの自己肯定感を下げてしまうことにもなりかねないと専門家はいいます。子どもが没頭して楽しんだ時間そのものに目を向けることが大切でしょう。
子どもの熱中度UP!おすすめの折り紙・塗り絵YouTube5選
古くから遊ばれてきた折り紙や塗り絵ですが、大人であっても折り方や塗り方のコツなどは意外と知らないことも多いかもしれません。そこでここでは、子どもがより熱中度を高めてくれそうな、おすすめのYouTubeチャンネルを紹介していきます。
ばぁばの折り紙チャンネル
折り紙大好きなばぁばが丁寧な説明と動画で解説してくれる「ばぁばの折り紙チャンネル」。簡単なものから思わずやってみたくなる折り方まで、たくさんの動画がアップされています。クリスマスやハロウィンなど、季節のイベントに合わせたアイテムの折り方も紹介されていますよ。
【YouTube】
創作折り紙 カミキィkamikey origami
折り紙作家のカミキィさんが、簡単でかわいく手軽に折れる作品を紹介している「創作折り紙 カミキィkamikey origami」。ゆるりとやわらかな表情の動物やキャラクターの折り方もたくさん紹介されており、折り紙のリースは子どもだけでなく大人も楽しめそうな作品です。
【YouTube】
たつくりのおりがみ
季節やイベントの飾りつけにもぴったりな折り紙作品を紹介するチャンネル「たつくりのおりがみ」。お正月の門松や立体的なクリスマスブーツなど、わくわくするアイテムが豊富です。よく回るプロペラやよく飛ぶ紙飛行機など、遊べる折り紙作品も紹介されていますよ。
【YouTube】
きっずちゅーぶ/絵本読み聞かせ動画チャンネル「KidsTube」
絵本の読み聞かせを中心とした楽しく学べる知育チャンネルの「きっずちゅーぶ/絵本読み聞かせ動画チャンネル「KidsTube」」。チャンネル内の「赤ちゃんが泣き止む塗り絵」シリーズは、約1分30秒の早送りで動物や消防車などに塗り絵をしていく動画が公開されています。塗り絵ってそもそもどんなもの?と子どもがイメージを持つきっかけにも良さそうな動画です。
【YouTube】
t.s.meg/塗り絵チャンネル
塗り絵に熱中している子におすすめなのが「t.s.meg/塗り絵チャンネル」です。塗り絵アーティストのmegさんが、塗り方のコツなどを動画で教えてくれます。中には100円均一で購入した塗り絵などもあるため、同じものを揃えてマネしてみても良さそうです。
【YouTube】
まとめ
折り紙や塗り絵などの遊びがもたらすフロー体験は、そのときの子どもの幸福感だけでなく、人生を幸せにする価値観を育むためにも大切なことが分かりました。フローについて知ることで、子どもの遊んでいる姿を見る目も少し変わりそうですね。おうち時間をより充実したものにしたい方は、フロー体験について覚えておくと良いかもしれません。