情操教育は幼児期から始めた方が良い?家庭でできる8つの取り組み
情操教育とは?
情操教育は「心を育てる教育」といわれていますが、具体的にどのような力を育むものなのでしょうか?情操教育を始める時期の目安とあわせて、ご紹介します。
情操教育の目的
情操とは「美しいもの、すぐれたものに接して感動する、情感豊かな心。道徳的・芸術的・宗教的等、社会的価値をもった複雑な感情」とされています。そんな情操をさまざまな方法で育んでいくのが「情操教育」です。
例えば、美しい景色を見て「きれい」だと感じる心、他人への尊敬や思いやりの心、悪いことはせず良いことをしようとする気持ちなど、情操教育は多様な面から子どもの心を健全に育んでいくことを目的としています。
情操教育を通して、自分で考える力や創造力、個性を伸ばし、価値観や道徳心を築いていけるため、こうした情操教育は、読み書きや計算などの勉強よりも重視されることも多く、学校教育でも道徳や音楽、体育、図工といった科目として取り入れられています。
情操教育はいつから?
情操教育を始める時期に、明確な決まりはありません。情操教育と一言で言ってもその種類は幅広く、子どもの成長や発達に応じた教育を行うのが望ましいですが、3歳頃から積極的に取り入れる家庭が多いようです。
ある程度言葉でのコミュニケーションが円滑にとれるようになること、イヤイヤ期が落ち着いて子どもが前向きに取り組みやすいことなどから、3歳頃がひとつの目安となっているのでしょう。また幼児期は脳の発達が著しい時期なので、情操教育を効率的に行えるといわれています。
ただし情操教育は大きくなってでは効果がないというものではないため、小学校入学後からでもぜひ始めてみてくださいね。
情操教育の4つの種類
情操教育は、おおまかに4つの種類に分けられるといわれています。それぞれどのような教育なのか、具体的に解説していきます。
科学的情操教育
「どうして海の水はしょっぱいのだろう?」「夜はどうして暗いのだろう?」などと子どもは些細なことに「なぜ?」「どうして?」と疑問を抱くものですよね。そんな子どもの知的好奇心を刺激し、学ぶことの楽しさや自分で考える力を育むのが「科学的情操教育」です。
自分の置かれている状況や物事を観察し、どうしてこうなるのだろうと自分の力で論理的に追及していく感情を育むことから「論理的情操教育」とも呼ばれます。
道徳的情操教育
どれだけ勉強ができても、運動ができても、他人の気持ちを思いやることができなければ、社会に適応することは難しいかもしれません。そんな他人を慮る心や善悪の判断をして善い行いをしようする気持ちを育むのが「道徳的情操教育」です。
「困っている人を助けたい」「人を傷つけることはしない」といった道徳心を培うことは、協調性や社会性を伸ばすことにもつながるでしょう。どうすれば自分だけでなく、他人にとっても良い結果につながるのか自ら考えて行動できる力は、学校生活や社会生活を円満なものにしてくれそうですね。
道徳的情操は、遊びの中で育まれていくといいます。おもちゃの貸し借りや遊びのルールを学ぶことなどを通して、実践的に社会で生きていくうえで求められる道徳を身に付けていけるはずです。
情緒的情操教育
「情緒的情操教育」では、生命の尊さを知り、命を大切にする心を育みます。自分や家族、友だちなどの身近な人だけでなく、地球上のすべての動物や植物も含めたあらゆる生命がみな尊いものであることを学ぶことで、相手に敬意をはらった行動ができるようになるでしょう。
また宗教心が薄い傾向が強い日本人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、神仏の教えなどを通し、命の大切を学ぶことから「宗教的情操教育」と呼ばれることもあります。
美的情操教育
美しいものをみたときや素晴らしい音楽を聞いたときなどに、素直に「美しい」と感じ感動する心を育むのが「美的情操教育」です。美的情操を培うことで、豊かな感性や芸術への関心を引き出すことができるでしょう。
また美的センスを養うことは、自己表現が多彩になり、創造力や個性を伸ばすことにもつながるといわれています。
家庭での情操教育の8つの取り組み
子どもの情操教育を始めたいと考えていても、具体的にどのような取り組みが情操教育につながるのかよくわからないという人も少なくないでしょう。そんなときは、下記の取り組みに挑戦してみることをおすすめします。
取り組み1:身体を動かす時間を作る
思い切り身体を動かす経験をすることも、大切な情操教育のひとつです。運動によって体力がついたり、身体能力が向上したりするのはもちろん「早く走ることができた」「水の中に潜ることができた」などという達成感を得ることで、自信や自己肯定感を育むこともできるでしょう。
スイミングや体操教室、リトミックなどの習い事に通ってもいいですし、親子のコミュニケーションにもなるキャッチボールや親子ヨガなど手軽にできる運動に挑戦するのもおすすめです。積極的に体を動かす機会を作ることで、子どもの心身の健やかな成長を促しましょう。
サッカーなどの団体競技に取り組むと、協調性や社会性を培うことができそうですね。また始めはなかなかうまくできなかった運動も、練習を重ねれば少しずつできるようになるもの。こつこつと練習を続けることは、忍耐力を鍛えることにつながりそうですね。
取り組み2:自然との触れ合いを大切にする
自然に触れる機会を作ることは、子どもの知的好奇心を刺激してくれるでしょう。キャンプや釣りなどにでかけたり、砂遊びや泥遊びを楽しんだりと、さまざまな形で自然の中で遊ぶ経験をさせてあげたいものですね。
自然の中には、風の吹く音、雨上がりの匂い、キラキラとこぼれる木漏れ日、ぽかぽかと温かな春の日差しなど五感を刺激するものが数多くあります。そうした自然を全身で感じることは、子どもの感性を刺激してくれるはずです。
筆者の家庭でも、春休みなど時間が取れるときには家族で山登りにでかけたり、川遊びや釣りを楽しんだりする機会を作るようにしています。普段の外遊びももちろん子どもは喜んでくれるのですが、非日常感のあるアウトドア経験に目を輝かせてくれています。
取り組み3:生き物に触れる機会を作る
ペットを飼ったり植物を育てたりと、生き物に触れる機会を作ることも大切な情操教育のひとつです。動物や植物とは、言葉を通してコミュニケーションをとることはできないですよね。
そのため、どう接すればいいのか自分で考えて行動することが求められます。そうした経験を重ねる中で、相手を思いやる心を育むことができるでしょう。また人間よりも寿命が短い動物や植物の死を経験することを通し、命の尊さを学べるはずです。
芋堀りなどの収穫体験に参加したり、家庭菜園に挑戦したりすることは食育にもつながります。また生き物や自然に触れる中で、子どもはさまざまな「なぜ?」「どうして?」に出会うことができるでしょう。
そうした疑問の答えを自分で導き出そうとすることは、知的好奇心を引き出し、論理的思考力を高めることにつながりそうですね。
取り組み4:芸術・文化に触れる
美術館や博物館、コンサートなどに直接足を運んで、本物に触れる機会を作るのもおすすめの情操教育です。近年はテレビやインターネットでさまざまな情報を簡単に閲覧することができますが、画面を通さず直接本物を目の当たりにすることは子どもにとってよりよい刺激となるでしょう。
ぜひ小さな子ども連れでも入館・入場できる展覧会やコンサートなどを探してみてくださいね。また地元の郷土料理を食べたり、民芸品に目を向けたりと、さまざまな文化に触れることも素晴らしい経験となるはずです。
取り組み5:工作をする
お絵描きや粘土などを使った工作活動を通して、子どもの自由な発想でのびのびと自己表現することで、子どもの想像力・創造力・表現力などを培うことができるでしょう。また工作で細かい作業を集中して行うことで「巧緻性(こうちせい)」という手先の器用さを伸ばすことができそうですね。
また落ち葉やどんぐりなどの自然のものを使って工作すると、より自然に親しめることでしょう。
取り組み6:家族以外の人と接する機会を作る
幼児期はどうしても家族だけと接する時間が多くなりがちですが、家族以外の人と接する機会を積極的に作ることをおすすめします。幼児教室やスイミングなどの習い事に通ったり、地域のイベントや児童館に足を運んだり、多くの人と接することでコミュニケーション能力や協調性、社会性を培っていけるのではないでしょうか?
また子ども同士のかかわりも、子どもの情操教育で大切にしたいもののひとつです。子ども同士のコミュニケーションでは、大人と接するときのように子どもに対する配慮をしてもらうことは難しいでしょう。そのため、喧嘩になってしまうことも珍しくありません。
しかしそういった経験を重ねることで、人の気持ちを考え、思いやる力を伸ばすことができるはずです。
取り組み7:季節の行事・宗教行事を大切にする
お正月や節分、ひな祭りに端午の節句、お月見など日本にはさまざまな季節の行事がありますよね。そんな行事に家族で取り組むことも、子どもにとって良い情操教育になるといいます。
行事の意味を教えたり、行事食を食べたりすることを通して、子どもに日本の文化に親しんでもらうことができるでしょう。季節の食べ物を積極的に食卓に並べることは、子どもの食育にもつながりそうですね。
またお墓参りやお盆などの宗教行事も、情操教育の重要な要素とされています。どうしてその行事を行うのか伝えることで、命の大切さや尊さについて考えることができるかもしれません。
取り組み8:読み聞かせをする
絵本は、子どもに知らない世界や言葉を教えてくれる存在だといわれています。そんな絵本を読み聞かせることで、子どもの感受性を刺激し、想像力や語彙力、情緒を育んでいけるかもしれません。
また絵本には「嘘をついてはいけない」「意地悪をしたら相手を悲しませてしまう」などという道徳的な教訓が込められていることも多いです。道徳的な物語に触れる中で、子どもは社会で生きていくために必要なことを学べるのではないでしょうか?
情操教育におすすめの絵本と読み聞かせの注意点
情操教育に効果的だといわれる絵本の読み聞かせですが、どのような絵本を選べばいいのか悩んでしまいますよね。おすすめの絵本と読み聞かせをするときに注意したいポイントをご紹介します。
おすすめの絵本
情操教育にどのような絵本が良いという明確な判断基準はありませんが、子どもの発達にあった絵本を選ぶことをおすすめします。赤ちゃんのころは色彩がはっきりとした文字数の少ない絵本、などという風に子どもが興味を持ってくれそうな絵本を探してみてはいかがでしょう?
ここからは、子どもの心を豊かにしてくれるおすすめ絵本をご紹介します。絵本選びに悩んだら、参考にしてみてくださいね。
『どうぞのいす』(作:香山美子/絵:柿本幸造)
うさぎさんが作った「どうぞのいす」にかわるがわる訪れる動物たちによる、食べ物のとりかえっこの物語です。「どうぞならば」と椅子の上の食べ物を食べるものの、からっぽにしてはあとの人に悪いと自分の持っていた食べものを置いていく、そんな連鎖していく優しさにほっこりと温かい気持ちになれる一冊です。
『どんなきもち?』(作:ミース・ファン・ハウト/訳:ほんまちひろ)
表情豊かな魚たちといっしょに、バリエーション豊かな気持ちを表現する言葉を学べる絵本です。自分がどういう気持ちなのか、言葉で表すのは子どもにとって難しいもの。「わくわく」「しょんぼり」といった気持ちがカラフルな色合いで描かれていて、子どもの心に響くことでしょう。
『こねてのばして』(作:ヨシタケシンスケ)
こちらの絵本は、不思議な何かをこねてのばして、さらにすわらせて、さわらせて、まきつけてとさまざまなスキンシップをとる一風変わった絵本です。普通に読んでももちろん楽しめますが、親子で触れ合いながら読むと楽しさが倍増しますよ。
『ちょっとだけ』(作:瀧村有子/絵:鈴木永子)
赤ちゃんが生まれて、お姉ちゃんになったなっちゃん。忙しいお母さんの代わりに、自分でいろんなことに挑戦する健気な姿に、切なくもぐっとくるママ・パパも多いのではないでしょうか?眠たくなったとき「ちょっとだけ」とママに甘えるなっちゃんに、たっぷりの愛情で答えるママの姿に胸が温かくなります。
『もこ もこもこ』(作:谷川俊太郎/絵:元永定正)
「しーん」「もこもこ」「にょきにょき」などのユニークな擬音だけで構成されているこちらは、1977年に発行されてから多くの子どもたちに愛されてきたベストセラー絵本です。シンプルながらその独特の世界観は、子どもの感性を刺激してくれることでしょう。赤ちゃんの頃から楽しめる1冊になっています。
読み聞かせの注意点
読み聞かせをするとき、子どもが楽しめるようにと登場人物によって声色を変えるなど熱演する人も多いですが、オーバーな表現は避けた方がいいといわれています。読み手が感情を込めて読み聞かせることで、声の印象が強くなって子どもが自由に絵本の世界を想像しづらくなるのだとか。(関連記事:「読み聞かせ」は知育に効くの?教育効果・やり方をご紹介)
親のイメージを子どもに押し付けてしまわないよう、淡々と読むことを意識してみてはいかがでしょうか?また絵本の感想を親が先に話してしまうと、子どもに親の価値観を押し付けてしまうことにつながるかもしれないため控えることをおすすめします。
子どもが絵本を読んで自然に感じたことを大切にできるよう、読み聞かせのあとに子どもを質問攻めにしたり感想を話すことを強要したりすることはしないほうがいいといわれています。
また絵本を読み聞かせている途中で子どもがどんどんページをめくってしまうなど、大人からするときちんと読めていないように感じる行動をとることもあるでしょう。そんなときは叱ったり責めたりせず、子どものペースに合わせてあげることをおすすめします。
まとめ
子どもに情操教育は感受性が豊かな幼児期から始めるのが望ましいといわれていますが、情操教育を重視するあまり、子どもの気持ちをないがしろにしてしまわないように注意しましょう。いくら良い取り組みをしても、子どもが興味・関心をもって前向きに取り組めなければ効果はあまり期待できないかもしれません。
「○○しなければならない」という固定観念をママやパパが捨て、子どもに合った情操教育を模索してみることをおすすめします。