ノーベル賞受賞者も推進する「自然体験」とは?おすすめの自然体験教室5選
ノーベル賞受賞者もすすめる自然体験
自然体験は子どもの発達をさまざまな面から促す大切な経験であり、歴代のノーベル賞受賞者たちもその必要性を説いています。
ノーベル生理学・医学賞受賞者の大村智氏は「自然に親しむことは、あらゆる芸術や科学の基礎であり、出発点になる」と述べています。さらにノーベル化学賞受賞者である白川英樹氏は、自らが塾長となって教室を実施するなど子どもの自然体験を推進。異学年グループで、水辺の生き物や自然の生態系について調べてプレゼンする活動を行い、自然と親しむことを促しています。
なぜ子どもの自然体験の機会が減少しているのか
都市化によって身近な自然がなくなっていく一方で、ゲームやSNSなど屋内で楽しめるコンテンツが充実したことで、子どもの自然体験の機会が減少しています。また子どもが巻き込まれる事件も毎年起きており、外遊びに不安を抱く親が多くなっているのも一因でしょう。
さらに子どもの遊ぶ声にクレームが寄せられたり、ボール遊びや飲食の禁止など公園での決まり事が増えてしまったりと、屋外は遊びにくい環境になってしまいました。
子どもの心身の成長をもたらす外遊びや自然体験は、本来近所の公園や田畑など身近な場所で可能なものでしたが、昨今では家庭内で意識的に取り入れる必要があるでしょう。
自然体験で期待できる効果
自然体験が子どもにどのようなメリットをもたらすのか解説します。
身体機能の向上
自然体験では、身体能力の向上が期待できます。自然体験中は、木登りをしたり障害物を乗り越えたりくぐったりと、普段の生活ではあまりしない動きをすることが多いです。そのため、筋力や体幹、バランス感覚などが鍛えられるのです。
また、身体をよく動かすことによって生活リズムが整いやすくなるというメリットもあります。日中に太陽光を浴びて活動することで体内時計が整う他、運動でお腹がすきやすくなって三食の食事をしっかり食べる習慣がつくためです。
さらに自然の風景・音・香り・感触など、五感を鍛える要素も自然体験中にはたくさん。自然体験は、さまざまな面で身体を健康に導いてくれるでしょう。
心の健康増進
自然体験は心の健康にも役立ちます。コロラド大学では緑豊かな校庭が、子どものストレスや能力にどのように関係しているかを研究しました。その結果、樹木や草花などに触れられる環境にある子どもたちは、ストレスが軽減され集中力が高まったという結果になったのです。さらに、うつや不安感の改善に自然体験が影響を与えるとする研究結果も多く出ています。
また、忍耐力や精神的な落ち着きにも、自然体験は効果的です。外遊びで新しい経験をしたり、そのことで興奮したりといった体験は脳の神経を刺激。その刺激が、理性や論理的思考を司る前頭前野を活性化して、興奮の制御を助けます。
非認知能力の成長
非認知能力の成長にも、自然体験は大きく関わっています。非認知能力とは、思考力や問題解決力などの数値化されない能力。樹木や貝殻など、自然にあるものには決まった遊び方がありません。興味や想像力を活かして遊びを作り出し工夫を重ねる経験が、非認知能力の向上には大切です。
また、自然の中の遊びでは失敗と試行錯誤が何度も起こります。「木に登れない」「魚が獲れない」などうまくいかないことに対するチャレンジの積み重ねが、思考力や想像力を高めます。その他にも認知力やコミュニケーション能力の向上など、自然体験は多くの非認知能力の成長に影響があるのです。
家庭で取り組める自然体験
家庭で簡単に行える、幼児向けの自然体験を紹介します。
公園や山での遊び
四季折々で変化する植物に親しむことは、感性を磨くのにぴったりです。草花の観察はもちろん、実や花を使った色水遊び・工作、草花を食べ物に見立てるごっこ遊びなどもおすすめ。子どもの探求心・想像力・表現力などを刺激できます。秋や冬には落ち葉遊びもいいでしょう。
家族でキャンプや星空観察を行うのも、協調性や自主性を引き出して豊かな心を育みます。
川や海での遊び
川や海では、水遊びをはじめ砂遊びや貝殻拾いなどが楽しめます。水遊びや砂遊びは五感を刺激したり体力をつけたりするなど身体作りの基礎になるうえに、親子や友だち間でのコミュニケーションを促進して社会性を培える遊び。貝殻やきれいな石の収集も、子どもの探求心を満たして想像力を育みます。
また、海の生き物やきれいな環境を維持する必要性などを親子で話し合うことで、命の大切さや環境に対する意識を学べるでしょう。
生き物との触れ合い
動物や昆虫など、生き物との触れ合いも自然体験では重要です。「アニマルセラピー」でも知られているように、動物との触れ合いは精神の安定に好影響を与えるとされています。
動物や昆虫、水中の生き物に触れたり観察したりすることで、多様な生き物の生態を知り、多角的な考え方や思いやりの心を育めるなど、生き物との触れ合いが子どもに与えるメリットは多いでしょう。
未就学児から参加可能!全国の自然体験教室5選
全国には多くの自然体験教室があり、普段の生活ではなかなかできない体験を提供しています。ここでは、幼児でも参加可能な全国の自然体験教室をご紹介します。
国際自然大学校(都内近郊)
「国際自然大学校」は、都内近郊を中心に活動している民間の自然学校です。発達段階に合わせた年代別の活動を行っており、1年を通してのプログラムと単発で参加できるプログラムの他、ノッツ森のようちえんも実施。
年中児・年長児を対象としたキッズコースでは、創意工夫する力を育んで友だちと楽しく遊べる「あそび力」の向上をテーマにしています。
団体名称:特定非営利活動法人 国際自然大学校
対象年齢:年中~中学3年生
活動場所:都内近郊(山梨・京都・福岡・沖縄にも拠点があります)
Webサイト:https://www.nots.gr.jp/
早稲田こどもフィールドサイエンス教室(関東近辺)
年長から参加可能な「早稲田こどもフィールドサイエンス教室」は、関東近辺のフィールドでアクティビティを行う野外型の理科教室です。
早稲田大学アカデミックソリューションが運営しており、年長向けのコースでは磯の潮だまりの観察や、里山でのフィールドマップ作りを実施。1年を通した活動で、豊かな感性と自分で考える力を育みます。
団体名称:早稲田こどもフィールドサイエンス教室
対象年齢:年長~小学5年生
活動場所:関東近辺
そらまめキッズアドベンチャー(関東・関西・東海)
子ども専門の体験型ツアーを実施している「そらまめキッズアドベンチャー」。首都圏・関西・東海にツアーの集合場所があるため、関東在住でなくても参加しやすいのが特徴です。
季節ごとのツアーや野外体験では、稲刈りやパラグライダー、かけっこ特訓ツアーなど多岐にわたるプログラムを楽しめます。
団体名称:そらまめキッズアドベンチャー
対象年齢:年中~中学3年生
活動場所:全国各地
Webサイト:https://soramamekids.com/
いきものいんく(北海道)
北海道の「いきものいんく」では、年少から年長の子どもと保護者を対象にした「どんぐり塾」を開催しています。
季節に合わせて湖や川で生き物を探したり、森の中で自然・アート・算数を楽しく学んだり、「いきものいんくの森」ではツリーハウスや焚火を自由に楽しんだりと北海道の自然を生かした活動が魅力です。
団体名称:いきものいんく
対象年齢:年少~
活動場所:いきものいんくの森(北海道伊達市清住町47-1)
Webサイト:https://ikimonoinc.jp/
ボーイスカウト・ガールスカウト(全国)
ボーイスカウトは小学1年生、ガールスカウトは5歳から参加できます。どちらにも年代別のプログラムが用意されており、子どもの成長に合わせた活動を実施。異年齢でのグループ活動や海外交流、さまざまな技能の習得など野外活動を通して多彩な経験を積めます。
団体名称:公益財団法人ボーイスカウト日本連盟・公益社団法人ガールスカウト日本連盟
対象年齢:ボーイスカウト(小学1年~)、ガールスカウト(5歳~)
活動場所:日本全国
Webサイト:
https://www.scout.or.jp/
ママに聞きました!自然体験による子どもの成長
自然体験は、子どもにどのような変化をもたらすのでしょうか。ママの体験談をご紹介します。
生き物との触れ合いが命を考える機会になりました(6歳・4歳ママ)
母親である私自身が、幼少時代たくさんの自然や生き物に触れて育ち、生物の面白さにのめりこんだタイプです。そのため、子どもが自然について興味を持ったらサポートしたいという思いで子育てしています。
そのような背景もあり、6歳の息子と4歳の娘はともに生き物が大好き!しょっちゅう庭や近所の公園で生き物を探しては捕まえてきます。これまで飼育したのは、かたつむり、バッタ、おたまじゃくし、クワガタなど多種多様。
カタツムリの産卵、バッタの脱皮、おたまじゃくしがカエルになる姿など、生き物の営みを間近でみることで、子どもたちも命についてよく考えるようになりました。
以前は「ずっと飼いたい!逃がしたくない!」とよく言っていましたが、近ごろは「そろそろケースが狭くなってきたから元いた場所に逃がしてあげよう」と子どもたちで決めることが多いです。
これからも、子どもの知的好奇心を満たしながら、生き物の面白さや命の大切さを伝えていけたらと思っています。
さいごに
自然体験は、子どもの成長を促す大切な活動です。心身の健康に好影響を与えるだけでなく、さまざまな非認知能力を伸ばしてくれるでしょう。近所の公園や海・山でも気軽に取り組める他、全国には魅力的な自然体験を提供する施設・団体が多数あります。子どもの発達段階や興味に合わせて、楽しく活動できる場所を探してみましょう。今度の休みには家族で自然の中に出かけてみませんか。
参考サイト
- 朝日新聞デジタル|「子どものころの経験が」ノーベル賞8人、小中高生に送るメッセージ [大阪府](https://www.asahi.com/articles/ASS704SQNS70OXIE03MM.html)
- 公益財団法人 ソニー教育財団|科学の泉-子ども夢教室 | 科学の泉-子ども夢教室(https://www.sony-ef.or.jp/spring/)
- 国立青少年教育振興機構|青少年の体験活動等に関する意識調査(令和4年度調査)~減少する体験活動、放課後や休日の過ごし方の実際~(https://www.niye.go.jp/wp-content/uploads/2024/05/gaiyou_R4jiritsu.pdf)
- NHK|ウワサの保護者会 第20回「大丈夫!?子どもの外遊び」(https://www.nhk.or.jp/hogosya/pdf/nhk_etv_hogosya20.pdf)
- 令和3年警察白書|第3項 子供の安全を守るための取組(https://www.npa.go.jp/hakusyo/r03/honbun/html/x2213000.html)
- エンパワージャパン株式会社|外遊びはどこですればいいの?子供の遊び場が奪われていく(https://empowerjapan.jp/%E5%A4%96%E9%81%8A%E3%81%B3%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%A7/)
- Awaji Kids Garden|幼児期にこそ自然体験をさせたい4つの理由と大人のかかわり方(https://www.awajikidsgarden.com/post/akgnature)
- 文部科学省|第3章 健康なくらしに寄与する光 2 光の治療的応用―光による生体リズム調節―(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/toushin/attach/1333542.htm)
- ScienceDirect|Green schoolyards as havens from stress and resources for resilience in childhood and adolescence(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1353829214000379 )
- 株式会社リヴァ(LIVA)|森林浴とは?森林浴に期待される実証効果やうつ病との関係性について(https://liva.co.jp/magazine/15939 )
- 日本経済新聞|感情はどこから? 実は生存をかけて脳が下した判断 働きもののカラダの仕組み 北村昌陽(https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXNASFK0203P_S3A201C1000000/ )
- マイホームマガジン|「非認知能力」とは?自然遊びで子どもの「非認知能力」を育む方法を専門家が解説(https://myhomemarket.jp/magazine/30-outdoor-01-grit/index.html )
- ボーネルンド|専門家にうかがう「子どもの発達を促す砂遊びの10のヒント」|教育・保育関係者向けサイトPLAYSCAPE(https://playscape.bornelund.co.jp/shop/pages/column_development02.aspx )
- Gymboree(ジンボリー)|生き物への興味が子どもにもたらすメリットとは?(https://www.gymboglobal.jp/column/470 )
- NPO法人 国際自然大学校-NOTS|TOP(https://www.nots.gr.jp/)
- 早稲田こどもフィールドサイエンス教室(自然体験型理科教室)|TOP(https://waseda.fieldscience.jp/ )
- そらまめキッズアドベンチャー|子供のためのキャンプ・工場見学・自然体験・スキーツアーはそらまめキッズアドベンチャーへ(https://soramamekids.com/ )
- いきものいんく|TOP(https://ikimonoinc.jp/)
- ボーイスカウト日本連盟|TOP(https://www.scout.or.jp/)
- 公益社団法人ガールスカウト日本連盟|TOP(https://www.girlscout.or.jp/)