おうちでできる感染症予防とは?発熱時の過ごし方も解説します
子どもは感染症にかかりやすい?
「高熱を出すことはなかったのにある時期から急に病気をするようになった」、「保育園に入園して集団生活を始めたら、感染症に次々とかかるようになった」という話はよく耳にするものです。赤ちゃんは母親から病気に対する免疫をもらって産まれます。血液に含まれる免疫の量は、産まれてすぐの頃は母親と同程度ですが、時間が経つにつれて減少し、生後3~6か月ごろになるとほぼなくなると言われています。この頃から赤ちゃんは自分の力でウイルスや病原菌と戦い、免疫力を育てていくのです。風邪や感染症にかかる度に免疫システムがより強く、強固なものとなります。ウイルスや細菌に触れて免疫力を育てることは、子どもが健やかに育つために必要な過程なのです。
公益財団法人 母子健康協会|第28回 母子健康協会シンポジウム 季節と子どもの病気
1. 子どもの特性(https://jp.glico.com/boshi/futaba/no72/con05_02.htm )
子どもがかかりやすい感染症とは?
東京都国立市のホームページによると、子どもがかかりやすい感染症は以下の通りです。
<保育園在籍の場合、登園許可証が必要な病気>
● 麻疹(はしか)
● 風疹(三日ばしか)
● 水痘(水ぼうそう)
● 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
● 百日咳
● インフルエンザ
● 咽頭結膜炎(プール熱)
● 流行性角結膜炎(はやり目)
● 急性出血性結膜炎
● 腸管出血性大腸菌感染症
<保育園在籍の場合、登園許可証は必要でないが医師の判断が必要な病気>
● 溶連菌感染症
● 手足口病
● 伝染性紅斑(リンゴ病)
● 伝染性膿痂疹(とびひ)
● 突発性発疹
● 感染性胃腸炎
● ヘルパンギーナ
● RSウイルス感染症
● マイコプラズマ肺炎
国立市|子どもがかかりやすい感染症一覧
(https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/material/files/group/41/kansennshou2.pdf )
家庭でできる感染症の予防方法とは?
ここからは家庭で実践できる感染症の予防方法について解説します。
健康的な生活を心がける
免疫力を高めてウイルスや病原菌に強い体を作るためには、心身を健康に保つ生活を送ることが重要なポイントです。栄養バランスを考えて食事を摂り、夜は決まった時間に寝かせて十分な睡眠時間を確保します。日中は体操や散歩などで体を動かして、血液の巡りを良くして、毎日の入浴で体を温めましょう。このように健康的な生活を送ることで、免疫力を高められるのです。
手洗い・手指の消毒を徹底する
感染症対策は手洗いと手指の消毒が大切です。帰宅したとき、トイレに行った後、食事をする前は手洗いを習慣づけましょう。また手洗いをしてタオルで手を拭いた後、アルコールで手指を消毒すると、より徹底した感染症対策になります。ただし肌が弱い子や小さな子は、かぶれや口や目に入ってしまう恐れがあるためアルコールの使用を避けます。その際は手洗いをこまめに行い、石けんでしっかりとウイルスや細菌を落とすよう心がけましょう。
室内環境を整える
部屋の空気が換気されなければ、空気中にウイルスが滞り病気感染リスクが高まります。そのため定期的な換気を心がけると感染症対策に効果的です。また、部屋が乾燥していると空気中にウイルスが拡散されやすくなるため、部屋の湿度は40~60%程度を保つといいでしょう。加湿器や濡れたタオルを部屋に干すことで、湿度を調整できます。
ウイルスに合わせた方法で室内を消毒する
室内の家具やドアノブをこまめに消毒することで、接触感染を防げます。インフルエンザ、RSウイルス、新型コロナウイルスなどはアルコール消毒が有効です。ノロウイルスやロタウイルス、ヘルパンギーナ、アデノウイルスに手足口病の原因となるウイルスは、アルコール消毒が効きにくいタイプ。次の見出し内で紹介する方法を参考に、キッチンハイターなどの塩素系漂白液を使用して消毒しましょう。
<塩素系漂白剤を使った消毒液の作り方>
500mlペットボトルに濃度が6%の市販塩素系漂白剤を2ml(キャップの半量程度)加え、水を入れると清掃に使える消毒液になります。また嘔吐の処理をする場合は同様に500mlペットボトルに、濃度6%の塩素系漂白剤約8ml(キャップ2杯半程度)を加えます。塩素系漂白剤は刺激が強いため、使用する際は必ず換気をして、取り扱いに注意しましょう。
目黒区|消毒液(塩素系漂白剤)の作り方
(https://www.city.meguro.tokyo.jp/seikatsueisei/kenkoufukushi/eisei/shodokueki.html )
不特定多数の人が密になる場所ではマスクを着用する
不特定多数の人が密集するような場所に出かける場合は、マスクを着用すると感染症予防効果を期待できるでしょう。ただし2歳未満の子どもは、マスク着用で窒息や熱中症などの体調の変化に気づきにくくなる恐れから、マスク着用は推奨されていません。
定期的に水分補給する
鼻や喉から肺に至るまでの気管には、体内に侵入したウイルスや異物を排出するための線毛があります。この線毛は通常粘膜に覆われていますが、水分が不足して乾燥するとウイルスを排出する働きが弱くなってしまいます。こまめに水分補給をしてウイルスを体内に入れないよう気をつけることで、感染症対策となるでしょう。
予防接種を受ける
予防接種で感染症を防げるものもあります。国は予防接種法によって子どもに受けさせる定期接種のワクチンを定めており、対象となるものは無料で接種ができます。定期接種となる感染症のワクチンは以下の通りです。
<定期接種として公費で受けられるワクチン>
ジフテリア
百日せき
破傷風
急性灰白髄炎(ポリオ)
B型肝炎
Hib感染症
小児肺炎球菌感染症
結核(BCG)
麻疹・風疹
水痘
日本脳炎
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症
ロタウイルス
また任意接種として個人でワクチンの費用を負担して接種できるものもあります。おたふくかぜやA型肝炎ワクチン、インフルエンザワクチンがこれに該当します。これらは自治体で補助が出る場合などをのぞくと費用は自己負担になりますが、接種することで感染リスクを下げ、重症化を防ぐ効果が期待できます。気になる方はぜひ、接種を検討してみましょう。
厚生労働省|予防接種情報|よくある質問 Q2受けた方がよいのはどのワクチン?
体調不良のときはなるべく無理をさせない
微熱や腹痛、軟便や発疹など体調に変化があるときは、元気そうに見えても体が弱っていることがあります。このような場合は、病気をもらいやすい状態と言えます。無理をさせるとほかのウイルスに感染することもあるため、様子を見ながらなるべくゆっくり休ませるようにするといいでしょう。
家庭でできる感染症の看病の方法とは?
ここからは感染症にかかってしまった場合、家庭でできる看病の方法を紹介します。
安静にする
感染症にかかったり、発熱したりすると体力を消耗しやすい状態に。そのため静かに休める環境を整え、安静に過ごすことで早めの改善につながるでしょう。
発熱時は様子を見ながら臨機応変な対応を
発熱時、熱が出始めて上がっていく際は、血管が収縮して手足が冷え、悪寒がします。子どもが寒がっている場合は上着を着せたり、布団を増やしたりして体を温めてあげましょう。逆に熱が上がりきって顔がほてったり、手足が熱くなってしまうときは、薄手の服に着替えさせたり、布団を減らしたりして熱を逃がすようにします。こまめに汗を拭いたり、着替えさせたりして体が冷えないように注意します。首やわきの下、足のつけ根などを冷やすことでラクになる場合もあるため、子どもが嫌がらなければ試してみましょう。
咳・鼻づまりの場合は上半身を高くして寝かせる
咳き込みや鼻づまりで寝づらいときは、枕やバスタオルを使って上半身を高くすると、症状がラクになって寝やすくなります。赤ちゃんは縦抱きの姿勢で寝かしつけするのもおすすめです。
鼻水をケア
自分で鼻水をかめない子には、市販の鼻吸い機やベビーオイルを塗布した綿棒を使い、こまめに鼻水を取り除いてあげるようにしましょう。鼻頭を蒸しタオルで温めたり、シャワーやお風呂の湯気などを吸わせたりすることで鼻詰まりが軽快する場合もあります。鼻づまりで子どもが辛そうにしているときは、試してみましょう。
食欲に合わせて消化によいものを与える
発熱時食欲がなくなる子は多いものです。通常は熱が下がれば食欲が戻るケースが多いため、発熱時は水分補給がしっかりできれば、無理に食べさせようとしなくても構いません。しかし長時間何も食べなければ、胃腸の機能が低下してしまうため、食欲に合わせてそのとき子どもが食べたいと言ったものや、消化に良いおかゆなどを食べさせるようにしましょう。
水分補給をする
咳や喉の痛み、鼻水や鼻づまりが起きるときは、喉が渇きやすくなります。また発熱時は脱水症状を起こしやすいため、こまめな水分補給が大切です。飲ませるものは水、麦茶、子ども用イオン飲料などであれば、喉に痛みがある際も飲みやすいでしょう。乳児にはミルクや母乳を飲ませることで水分補給ができます。
部屋の温度・湿度を調整する
病気のときは室温や湿度にも気を配りましょう。快適に過ごせる環境を保つことで、感染症の早期回復につながります。夏季は室温25~28℃程度、冬季は23~25℃、湿度は40~60%を目安に環境を整えてみてください。
子どもの発熱や感染症で受診したほうがいいときは?
感染症が疑われる場合や発熱をしている場合、どんな症状で受診すべきか迷うことがあるでしょう。通常は発熱があっても38℃以下で熱以外の症状がなく、食欲が普段通りで機嫌も悪くない場合は家庭で様子を見ていいと言われています。
ただし急な高熱や、熱が3~4日以上続く場合、発熱と合わせて咳、嘔吐などの気になる症状がある場合、一度受診してしばらくしても症状が軽快しない場合、発疹がある場合は診療時間内に小児科へ連れていくべきです。
また子どもが呼びかけに応じない、ぐったりしている、けいれんしている、呼吸困難に陥っている場合などは、救急外来も視野に入れた早めの受診がおすすめです。夜間や休日で救急外来を利用するか判断に迷う場合は、以下のようなWEBサイトや電話相談を使ってみましょう。
チェックリストで救急外来受診の判断ができるWEBサイト「こどもの救急」
こちらは厚生労働省研究班と公益社団法人日本小児科学会が監修したWEBサイト「こどもの救急」です。発熱(38℃以上)、けいれん・ふるえ、吐き気、意識がおかしい、頭を強くぶつけた場合など、症状ごとにチェックリストの項目を選択すると、どのような対応をすればいいかの判断をしてくれます。救急車を呼ぶ、救急外来へ行く、家で様子を見て診療時間内に病院へ行くなど具体的な対応がわかるため、子どもの様子がおかしいときはぜひ使ってみてください。
#8000で全国つながる「こども医療でんわ相談」
小児科の診療時間外や夜間、休日にどう対処していいかわからない症状が出た場合は「こども医療でんわ相談」を利用してみましょう。電話機や携帯電話から全国同一の短縮番号#8000にかけることで、都道府県の相談窓口の小児科医師や看護師につながり、子どもの症状に応じた適切な対処を教えてもらえます。自治体によって実施時間帯が異なりますが、概ね病院が開いていない時間に対応してくれます。夜間などで気になる症状がある場合は利用してみましょう。
厚生労働省|こども医療でんわ相談#8000
(https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html )
さいごに
子どもは病気にかかることで免疫システムを構築するため、病気は子どもの成長に必要な過程と言えるでしょう。しかし子どもが感染症にかかると苦しい姿に親も心が痛むものです。また看病も大変です。できることなら軽い症状で、短期間で回復してほしいと多くの親が願っていることでしょう。感染症予防や感染症を早く治すためには健康的な生活習慣、栄養バランスの整った食事、十分な睡眠時間や手洗いの徹底などの、普段の暮らしを整えることが大切です。ぜひ記事を参考に健康な生活を心がけてみてくださいね。
参考サイト
- 富士フイルム|子どもが病気にならない5つの感染症対策
(https://sp-jp.fujifilm.com/hydroag/column/007jokin_natsukansen.html ) - キッズドクターマガジン|子どもの病気を予防する感染対策10選!(https://kids-doctor.jp/magazine/z8f0b680k )
- 京都市|子ども達を感染症から守るために(https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000048/48264/tirasi_kodomokansensyo.pdf )
- 公益財団法人 母子健康協会|第28回 母子健康協会シンポジウム 季節と子どもの病気 2. 子どもの特性(https://jp.glico.com/boshi/futaba/no72/con05_02.htm )
- 大田市立病院|ドクターコラム 第99回『子どもは病気にかかりやすい』
(https://www.ohda-hp.ohda.shimane.jp/124.html ) - 有明みんなクリニック 有明ガーデン院|赤ちゃんの免疫力について(https://ariake.child-clinic.or.jp/%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B0/blog-20240826/ )
- 国立市|子どもがかかりやすい感染症一覧(https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/material/files/group/41/kansennshou2.pdf )
- 目黒区|消毒液(塩素系漂白剤)の作り方(https://www.city.meguro.tokyo.jp/seikatsueisei/kenkoufukushi/eisei/shodokueki.html )
- 厚生労働省|予防接種情報|よくある質問 Q2受けた方がよいのはどのワクチン?(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kihonteki_keikaku/index_00001.html )
- キッズドクターマガジン|風邪をひいた子どもを看病するときのポイント10選(https://kids-doctor.jp/magazine/orswevxbc5w )
- 子どもの救急(https://kodomo-qq.jp/index.php?pname=butsubutsu )
- 厚生労働省|こども医療でんわ相談#8000(https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html )