「待つ体験」が子どもの学力に影響する?!待つ力を育てるコツを紹介
そもそも子どもが待てないのはなぜ?
3歳頃までの子どもは基本的に「待つ」ことを理解するには難しい年齢です。その理由は2つあります。
まずは自我の芽生えによるもの。何にでも興味を持ち、自分でやりたい気持ちが強くなります。そのため目の前に使いたいおもちゃがあれば、他の子が使っていてもその状況は目に入りません。そして自分の気持ちが先行してしまうため、結果的に「待てない」のです。
2つ目は先の見通しを立てるのが難しい点が挙げられます。3歳前後の子どもの多くは時間の感覚をまだ掴みきれていません。そのため時間が経つと自分の番がくるということが結び付けられず、「どれだけ待てばよいのか」「自分の番がくるのか」と不安になったり、苛立ったりして待つことが難しいのです。
3歳を過ぎてからは成長とともに、少しずつ待てるようになっていきます。とはいえ「待つ」ようになるためには練習も大切。子どもの気持ちや成長段階を理解しつつ、待つことの必要性を伝えていきましょう。
子どもに待つ体験が必要なワケ
ここで改めて「待つ」ことの必要性を確認しておきましょう。「待てる」ということは、社会のルールを守るはじめの一歩につながります。さらに、「待つ・我慢する・耐える」といった行為は、自制心を高めることになり、将来的に学力の向上につながるのです。その2点について、もう少し詳しく解説していきます。
社会のルールを守る第一歩
待つことは社会のルールを守るための第一歩となります。子どもは、これから大人になっていく過程で、集団生活におけるルールやマナーを身につけていかなければなりません。家庭から社会に出ると「待つ」ことの連続です。例えば、電車を降りるまで携帯電話の通話は我慢する(待つ)ことや、スーパーで欲しい商品を手に取っても、お会計が済むまで待たねばならないなど。
このように、待つという行為は、社会で生活するためのルールやマナーを守る基本になります。また、徐々にそれが自制心につながっていくと、自分とは違う意見を持った人との折り合いをつけていけるようにもなるでしょう。これは集団生活において大切なスキルです。
学習能力を上げる第一歩
自制力を養えると、後々スムーズに勉強習慣を身につけられるため、自ずと学力が上がります。ここでは「ディレイ・グラフィティケーション」という子どもの満足遅延能力を図るためのマシュマロテストを例にしましょう。マシュマロテストとは「今目の前にあるマシュマロを食べずにいられたら、15分後に2個食べられるよ」と子どもに伝え、実際に待てるかをテストするものです。そして、食べた子と食べなかった子を追跡調査し、比較をおこなうとマシュマロを食べなかった子どもの方が学力テストの点数が高いという結果でした。これは、目先の報酬に抵抗する力が、長期的な目標の達成を促しているという結果をもたらしています。
待つことができる子どもは、その先に得られるより大きな満足を想像できます。よって勉強しなければならない場面で、遊びたい気持ちを自制できるようになるのです。
マシュマロテスト
アメリカのCBSテレビ公式チャンネルで、マシュマロテストをした実際の映像が見られます。
スタンフォード大学で行ったマシュマロテストの後続研究では、最後までマシュマロを食べずに我慢できた子どもたちは「成績良好」。加えて、「学校でのトラブルが少なく、人間関係も良好」と発表しています。未来に得られる満足を想像し、自制できる力は、大人になって大きな差になるといえるでしょう。
先を見越す想像力が鍵!待てる子どもを育てるコツ
「待つ」ことは、子どもの学力・能力の向上につながることがわかりました。ここからは日常の中でできる「待てる子どもに育てるコツ」を紹介します。
大切なのは「我慢させる」ことよりも、「先を見越せる想像力」を養うこと。先のことを想像できると自制する力が高まり、人生のあらゆるシーンで賢く「待つ」判断ができるようになるのです。
待つ時間を具体的に伝える
具体的な時間がわかると先を見越すことができます。数字や時計がわかる子どもには「5分待って」「長い針が8になるまで待って」などと伝えます。または「洗い物が終わったらね」「洗濯を干し終わったらね」と行動で伝えるのも、子どもにとってわかりやすいでしょう。子どもの年齢に合わせて1、2分から徐々に時間を伸ばしていくと、待つことへのハードルが下がります。
待つべき理由を具体的に伝える
待つことが自分のためになると理解するのも大切です。例えば順番を守って遊ばなければならない場面では「順番に遊ぶと〇〇ちゃんともっと楽しく遊べるよね」など順番が待てると楽しさにつながることを伝えましょう。
他にも、公共の場で走り回ってしまうような場面では「他の人にぶつかると、〇〇ちゃんも痛いよね」と、我慢が自分のためになるというニュアンスで注意を促すとより効果的です。
子どもの気持ちにも共感し、満たしていく
子どもの気持ちに寄り添うことも重要です。「まだ?」の言葉に込められた気持ちに共感し、待てたことを褒めることで子どもの自信につながります。例えば公園で順番待ちをするような場面での「まだ?」には「早く遊びたい」「待ちくたびれた」などの気持ちがあるでしょう。順番が来ない状況を説明するよりも、「早くやりたいよね。あと〇番だね。」と共感したうえで具体的な見通しも伝えます。そして待てたあとは「順番守れたね」とぜひ褒めてあげてください。
待つ体験ができる遊びの工夫
子どもと楽しく遊びながらでも「待つ」体験を積み重ねられます。遊びの中で意識するだけで、ストレスなく練習ができるのでぜひ取り入れてみてください。
リズム遊び
リズムに合わせて手拍子をしたり、踊ったりする遊びは、音のタイミングを待って自分の動きをコントロールする必要があります。そのため、待つ体験につながるのです。好きな歌を歌うのも、音楽に合わせるという行動になるので取り入れやすいですよ。
ボール遊び
ボール遊びは、相手とのボールのやり取りが必要になるため、必然的にボールを「待つ」動作が生まれます。年齢の低い子どもでもボールを転がしたり、蹴ってみたりしてやり取りしてみましょう。風船のような柔らかいものを使用するのもおすすめです。
カウントダウン遊び
3,2,1……とカウントダウンし、ゼロのタイミングでジャンプしたり走り出して追いかけっこをしたりします。相手とのタイミングを合わせるルールを守ることが「待つ」体験につながります。少しずつ待つ時間を延ばしてみるのもよいでしょう。
マネっこ遊び
こちらの動画では、心理学の先生推奨のもと、自制心を育てるには「簡単なルールの中での遊びを繰り返すこと」が有効だと述べています。このことを踏まえたおすすめの遊び方を2つ紹介しています。親の真似をして、手拍子をしたり、動物になりきってみたりして、「縛りのある中での遊び方」を具体的に見られますよ。低年齢のうちから取り入れやすい遊び方なので参考にしてみてください。
待てる子どもに成長中?4歳児ママの体験談
4歳になる男の子のママです。3歳半頃にはお友達と遊ぶ際、スムーズに順番を待てるようになってきました。そんな息子もイヤイヤ期は当然あって「待つ」のは難しい時期でした。
子どもへの対応で特に意識していたのは、先の見通しを伝えることと、待ったあとには良いことや、ご褒美がある体験をさせることです。例えば、数がわかるようになった頃に「長い針が3になったら交代して、次は〇〇して遊ぼう」や「あと5回やったら帰っておやつにしよう」などの声掛けをしています。また日常生活でもなるべく具体的に待つ目途を示し、待ってもらったら「待ってくれてありがとう。ママはとても助かったよ」とお礼をする。そして抱っこする・ハグする・一緒に遊ぶ時間をつくるなど気をつけています。
また遊びに関しては、小さい頃はボール遊びをよく取り入れていました。3歳過ぎからはトランプを用いて7並べやババ抜きを楽しんでいます。「自分が先にやりたい!」という言葉は出てきますが、繰り返し遊んでいるうちに、当たり前のように順番を待って遊べるようになりました。
さいごに
子どもの学力を伸ばしていくには、大人の言うことを聞く、待てる子どもになってもらうのではなく、「先を見越して自制できることが子ども」に育てることが大切です。意識的に「待つ」体験ができる遊びを取り入れたり、「待つことでより良いメリットを得られる」体験をさせたりすることで、子どもたちは未来を見越せるようになっていきます。まずは楽しみながらできる遊びの工夫からはじめてみてはいかがでしょうか。
参考サイト
- ウィズ・ユー|我慢ができない子どもは発達障害?「待てる子」に育てる効果的な対応方法を解説(https://www.with-ac.com/column/patience-child-developmental-disorder/)
- Ryoko Nagata Chernomaz, LCSW|「待つ能力」を高めることの大切さ(https://ryokonagata.com/2021/09/01/waiting/)
- 日医on-line|あなたは我慢できますか? ―マシュマロテスト―(https://www.med.or.jp/nichiionline/article/004962.html)
- アトミ経済研究所|マシュマロ実験(https://ch.static.atomy.com/2018/02/23/e9f13d0613df4a7eb06ccf725cdb8d06.pdf)
- 朝日新聞GLOBE+|賢く我慢を学んだ子は将来伸びる 「マシュマロ・テスト」を知っていますか(https://globe.asahi.com/article/13739074)
- パステル総研|待てない子どもに試したい!順番待ちの体験が自信になる会話術(https://desc-lab.com/159825/)
- 楽しい療育の三輪堂|遊びながらできる「待つ」練習 (https://sanrindou-members.com/230126-matu/)