紫外線対策先進国に学ぶ!紫外線が子どもに与える影響と対策
紫外線って何?
紫外線とは、太陽から地球に届く光の中でも、目に見えない太陽光線のことです。紫外線の種類は、波長の長さによってUV-A波・UV-B波・UV-C波の3つに分けられます。そのうちUV-C波は、大気圏(オゾン層)に吸収されるため地表へは届きません。
地球に届く紫外線の9割を占めるのがUV-A波です。UV-A波は雲やガラスを透過し、肌の奥の真皮にまで到達します。シミやしわ、たるみの原因になると考えられています。
そして、紫外線量は全体の1割程度ですが、最も肌への影響が大きいのがUV-B波です。表皮細胞を傷つけるため、皮膚がんとの関連も指摘されています。
紫外線は時刻や季節、天候、オゾン量によっても変わりますが、同じ気象条件では、太陽が頭上にくるほど強くなります。日本では6~8月、1日のうち正午ごろが最も強いでしょう。また、雪や砂は紫外線の反射率が高いため、スキーや海水浴、標高が高い場所ではより強い紫外線を浴びてしまいます。そのため、サングラスや上着の着用を徹底するなどの対策が必要です。
紫外線が子どもに与える影響
悪い影響ばかりが注目されている紫外線ですが、実は身体に欠かせないビタミンDを生成したり、細菌やウイルスを殺菌したりするうれしい作用も。ここからは、紫外線の及ぼす影響と注意点をチェックしていきましょう。
【悪い影響】皮膚や目へのダメージ
まず、紫外線による人体への悪影響として、日焼け・シミ・しわ・皮膚がん・白内障・免疫機能の低下が挙げられます。紫外線は皮膚細胞の中の遺伝子を傷つけることが分かっており、日焼けして肌へのダメージを繰り返すと、修復が間に合わなくなり細胞が突然変異を起こすのです。これが皮膚がんの原因と考えられています。子どもの肌は大人に比べ、細胞分裂の回数が早くて多いため遺伝情報のミスが発生しやすかったり、皮膚が薄くデリケートなため紫外線の影響を受けやすかったりします。だからこそ、子どもの頃からの紫外線対策が重要なのです。
また、強い紫外線は角膜に炎症を起こし、痛みや充血の症状が出るなど目にも影響を及ぼします。紫外線によるダメージを受け続けると、白内障や翼状片などの病気の原因になります。私たちは、一生の半分の紫外線量を18歳までに浴びることが分かっているため、子どもの頃に浴びた紫外線量が多いほど将来の健康被害も大きくなると言えるでしょう。
【良い影響】ビタミンDの生成
一方で、紫外線は私たちの身体に不可欠なビタミンDを生成する役割があります。ビタミンDには血液に含まれるカルシウム濃度を高めて骨量を増やしたり、免疫作用を高めたりする効果があります。そのため、ビタミンD不足になると、カルシウムが不足してしまうことも。ビタミンDは、きのこ類や脂身の魚類にも含まれますが、必要量を食事だけで摂取するのは難しく、紫外線が不可欠です。
では、積極的に日光を浴びればいいかというと、そうではありません。ビタミンDを生成する紫外線UV-B波は、日焼けをする紫外線と同じ波長なのです。仮に紫外線対策のため、UV-B波の防御効果があるSPF30の日焼け止めを使用した場合、皮下でのビタミンD生成は5%以下になってしまい、思うような効果は得られません。紫外線の浴びすぎは良くないけれど、適度に浴びなければビタミンD不足に陥る。私たちはこのジレンマを抱えながら、紫外線と上手に付き合っていかなくてはならないのです。
最近の赤ちゃんはビタミンDが不足しがち
近年、乳幼児のビタミンD欠乏症の増加が問題になっています。これは、日焼けを嫌う若い女性が増えたことにより、ビタミンD欠乏状態の妊婦も増えてしまったためです。2003~2004年にかけて行われた、国立環境研究所における12~18歳の中高生を対象にした調査によると、47.7%の女子がビタミンD欠乏状態にあるという結果も出ています。
赤ちゃんがビタミンD欠乏症になると、カルシウム不足からけいれんを起こしたり、ひどいO脚になってしまったりすることがあります。妊婦や授乳中のママは、食事内容の見直しや適度に日差しを浴びる生活を心がけ、必要に応じてビタミンDサプリメントを取り入れてみるのも効果的です。また、赤ちゃんに日光浴や外気浴をするときは、日差しの強い時間帯(9~15時頃)を避け、直射日光が当たらないよう気をつけましょう。
オーストラリアの紫外線対策
オーストラリアは紫外線対策先進国と言われています。なぜなら、オーストラリア大陸の上空では、紫外線を吸収してくれるはずのオゾン層が薄く、紫外線による健康被害も深刻なためです。世界的にみても皮膚がんの罹患率が高いオーストラリア。ただし、適切な紫外線対策を行えば皮膚がんを予防できると言われているため、子どもへの紫外線予防の指導には特に力を入れています。ここからは、オーストラリアの紫外線の強さや予防対策についてご紹介します。
オーストラリアの紫外線レベル
オーストラリアの紫外線量は、日本と比べると5~6倍とも言われますが、季節や都市によっても大きく異なります。紫外線の強さを表す「UVインデックス指数」で東京とシドニーを比較してみると、どちらも最高指数が10、最低指数は2、と実はほとんど違いがありません。ただし、オーストラリア大陸のなかでもシドニーは南西に位置します。もっと北側、赤道に近い都市になると、最高UVインデックス指数は13、最低指数は8、年間平均で10.75とかなり差が生じます。
また、オーストラリアの夏にあたる11~2月は紫外線のピーク。オーストラリアは日本と季節が真逆なため、もし日本から夏の時期のオーストラリアに行くと紫外線の強さは5~6倍の差になります。
サンスマートプログラムでは子どもへの紫外線対策を呼びかけ!
「サンスマートプログラム」とは、1980年代にオーストラリアで導入された紫外線による健康被害予防のための取り組みです。スローガンは、「スリップ・スロップ・スラップ・ラップ(lip・Slop・Slap・Wrap)」。紫外線予防のためにとるべき行動を示す言葉で、以下のような意味があります。
- 長そでのシャツを着よう!(Slip on a long sleeved shirt!)
- 日焼け止めを塗ろう!(Slop on some sunblock!)
- 帽子をかぶろう!(Slap on a hat that will shade your neck!)
- サングラスをかけよう!(Wrap on some sunglasses!)
オーストラリアでは、サングラス着用が義務だったり、サングラス購入に対して補助が出たりする学校もあります。また、帽子をかぶらない子どもは校庭で遊べない、日光の当たる身体部分はすべて日焼け止めを塗ることを義務づけるなど、子どもの頃からの紫外線対策を徹底しています。日本では、夏の熱中症対策はよく呼びかけられていますが、紫外線対策ではオーストラリアを見習いたい点がたくさんありそうですね。
子どもの肌を守ろう!おすすめの紫外線対策グッズ4選
毎日の子どもの紫外線対策、どれくらいできていますか?大人はしっかり対策しているのに、子どもは日焼け止めだけ、という家庭も多いのではないでしょうか?サンスマートプログラムに則って、日本で購入できる紫外線対策グッズをチェックしてみましょう。
UPF50+の「ラッシュガード」
衣服が紫外線を遮断する効果を数値化したものが、紫外線保護指数UPF(Ultraviolet Protection Factor)基準です。サンスマートプログラムでは、UPF15以上を推奨しており、水着ではUPF50+がおすすめ。こちらのラッシュガードは、UPF50+なうえ、首や手首までしっかり覆って、紫外線から肌を守ります。冷感素材&水陸両用なので、夏の外遊びにはぴったりです。
紫外線カット率99%以上の「サングラス」
オーストラリア国内で売られているサングラスは規定が厳しく、紫外線を95%以上ブロックするものでなくてはなりません。日本では、子どもがサングラスをしている光景はあまり見かけませんが、レジャーやスポーツで長時間外に出るときにはぜひ子ども用のサングラスを用意してあげましょう。このサングラスは、3歳から使用でき、99%以上紫外線をカットしてくれます。
つばが長い「帽子」
サンスマートプログラムで推奨している帽子のつばは、大人が8~10cm、子どもは6cmです。目的は、顔・首・鼻・耳・頭皮を紫外線から守ること。こちらの帽子は、10.5cmの幅広つばに、大きなネックカバーが付いていて、頭上からの紫外線対策はばっちり!吸湿性・通気性にも優れています。ただし、帽子では反射による紫外線を防げないため、サングラスや日焼け止めとの併用がおすすめです。
Cancer Council(キャンサー・カウンシル)SPF50+の「日焼け止め」
キャンサー・カウンシル・オーストラリア(オーストラリア癌評議会)で販売している日焼け止めです。日焼け止めのSPF値は、紫外線(UV-B波)の防御効果度を表しています。SPFの最高値は50。この日焼け止めを皮膚に薄い膜ができる程度にたっぷりと塗ることで紫外線対策ができます。汗や摩擦で落ちやすいため、2時間ごとに塗り直すことも推奨されています。日本でも同じように、毎日こまめに日焼け止めを塗る習慣を身につけたいですね。
さいごに
日本では美容のために取り入れることの多い紫外線対策ですが、オーストラリアでは健康被害を防ぐために国を挙げて取り組んでいることが分かりました。紫外線は、ビタミンDの生成をしてくれる、私たちになくてはならないものであるとともに、浴びすぎると健康に害を及ぼすものです。皮膚が薄くデリケートな幼少期から紫外線と上手に付き合うことで、年齢を重ねたときの悪影響も少なく済むでしょう。今回の記事を参考に、子どもたちの将来を考え、できることから紫外線対策を始めてみましょう。
参考サイト
- Dr.ウィラード・ウォーター|〔子どもの紫外線対策〕紫外線が肌にもたらす影響・肌を守るポイントをご紹介 - 敏感肌コンシェルジュ(https://www.willard.co.jp/wblog/index.php/2022/03/15/kodomo_shigaisen_hiyake/ )
- ウェザーニュース|そもそも紫外線とは?UV-AやUV-B、メリットやデメリットについて(https://weathernews.jp/s/topics/202101/170125/ )
- 環境省|紫外線環境保健マニュアル2020(https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf )
- 国立環境研究所|日光紫外線の人体への影響|環境儀 No.79(https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/79/column3.html )
- 国立環境研究所|最近の日本人のビタミンD欠乏|環境儀 No.79
(https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/79/column2.html) - 近畿大学 メディカルサポートセンター|紫外線から体を守りましょう_病気について
(https://www.kindai.ac.jp/health/about/ultraviolet-rays/ ) - FNNプライムオンライン|児童もプールで日焼け止めクリームを!子どもは紫外線ダメージを蓄積しやすい…学校生活での紫外線対策を専門家に聞いた
(https://www.fnn.jp/articles/-/546263) - 紫外線.com|子供ほど紫外線の影響をたくさん受けている (https://shigaisen.com/%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%BB%E3%81%A9%E7%B4%AB%E5%A4%96%E7%B7%9A%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E3%82%92%E3%81%9F%E3%81%8F%E3%81%95%E3%82%93%E5%8F%97%E3%81%91%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B/)
- Science Portal Oceania|紫外線と健康に関する論文数、世界4位―オーストラリアの科学技術シリーズ①_大洋州コラム&リポート_Science Portal Oceania 大洋州(オーストラリア、ニュージーランド等)の科学技術の今を伝える
(https://spap.jst.go.jp/oceania/experience/2023/topic_eo_01.html) - 株式会社マイビス化粧品|光老化講座
( https://www.manavis-cosme.co.jp/web/contents/library/pdf/asing-course/catalogue_hikari_05.pdf ) - BfS|世界中の紫外線指数 - 世界中の紫外線指数
(https://www-bfs-de.translate.goog/EN/topics/opt/uv/index/worldwide/worldwide.html?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc ) - 在日オーストラリア大使館|サンスマートプログラム
(https://japan.embassy.gov.au/tkyojapanese/aust_sunsmart.html#:~:text=%E9%A1%94%E3%80%81%E9%A6%96%E3%80%81%E9%BC%BB%E3%80%81%E8%80%B3,%E6%AD%A2%E3%82%81%E3%82%82%E5%BF%85%E3%81%9A%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%80%82 ) - 日本ワーキングホリデー協会|渡航者必見!オーストラリアの紫外線対策 _ ワーホリ情報局(https://www.jawhm.or.jp/blog/workingholiday-infocenter/2022/05/18/australia-uv/#:~:text=%E4%B8%80%E8%88%AC%E7%9A%84%E3%81%AB%E3%80%81%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB,%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%AD%E3 )
- DESCENTE LTD.|紫外線遮蔽率、UPFの数値の意味を教えてください。
(https://www.descente.co.jp/jp/contact/post-36707/ ) - Cancer Council Shop |Ultra Sunscreen SPF50+ 500ml
(https://www.cancercouncilshop.org.au/collections/ultra-sunscreen/products/ultra-sunscreen-spf50-500ml )