授業もテストも教師もなし！サドベリー・スクール（デモクラティック・スクール）って？

ライター　村田美子

2021/05/19 01:05

それって、学校？という読者の声が聞こえてきます。私たちが持つ「学校」という概念を根底から揺さぶるサドベリー・スクールは、幼年期から子どもたちに自由と信頼と責任を与え、教育の多様性や豊かさを重んじる学校です。

大人によって強制されたり、服従させられたり、競わされるのではなく、子どもが自分から学びたいと思うことを学び、やってみたいと思うことを探して見つける経験を通して自分らしさを作る学校です。

将来、国際化社会で活躍できる子どもを育てたい、また、個性を伸ばす教育に興味のある方、今の、日本の教育体制に疑問を感じている読者の方、必読の記事です。

サドベリー・スクールの教育理念
サドベリー・スクールが生まれた背景
サドベリー・スクールの特徴
サドベリー・スクールのメリット
サドベリー教育のデメリット
日本でサドベリー教育を受けられるところはあるの？
さいごに

サドベリー・スクールの教育理念

サドベリー・スクールは、「生き物すべて、生きていくうえで必要なすべを自ら身につけていく」というシンプルな事実をベースにしています。そのために、サドベリーは子どもたちに場所を提供し、子ども自身が自分の優れたところを発見していきます。

始まりは1968年、アメリカのマサチューセッツ州フレイミングハムで、コロンビア大学、物理学教授のダニエル・グリーンバーグ氏が地域の住民と協力して学校運営が始まりました。

創設当時から「子どもの成長のため、個人の自由を尊重すること」そして「関係者全員が平等に運営に関わること」という2つの学校理念を掲げています。

子ども一人ひとりが学校を運営し、個人の自由を最大限に尊重したコミュニティを親と教師のグループ創設して以来、自由と責任がサドベリー・スクールのトレードマークになりました。

サドベリー・スクールはデモクラティックスクールとも呼ばれていることから分かるように、本当の意味での「民主的な学校」です。

その理念に共感を得て、現在では日本のみならず世界の各地に存在しています。

サドベリー・スクールが生まれた背景

1960年代、アメリカでは学校内で秩序が乱れ、校内暴力が蔓延して大きな問題となっていました。

その問題の裏には、当時の学校が強制的に子どもたちを行動させたり、服従させたり、やみくもに競争させるなどして生徒を尊重しなかったことがあります。

1990年代、筆者がアメリカに留学中、物理学の教授夫妻は子どもたちを学校に通わせず、家庭で教育をしていました。公教育への不信感があった模様です。

このように、サドベリー・スクールは、学校の教育から脱して市民が教育の主導権を取り戻す流れからうまれたオールタナティブ・スクールの一つです。

サドベリー・スクールの特徴

サドベリー・スクールでは時間割がなく、細切れに時間が区切られることがありません。また、年齢別のクラス分けもありません。テストもありません。友達と競うこともありません。

全て生徒自らの自治と自律によって進められています。そのため、子どもの自主性・自治の精神が伸びることが特徴です。

サドベリー・スクールに教員はいません。大人は「スタッフ・メンバー」と呼ばれ、学習支援をしたり、ディスカッションをしたり、学校運営のために必要な活動を行います。

スタッフ・メンバーは、１年間毎の有期契約で、生徒とスタッフ・メンバーが参加するスクール・ミーティングの場で、選挙によって採用・非採用が決まります。

選挙で選ばれた「スタッフ・メンバー」が、スクール・ミーティングを通じて、子どもたちと一緒に自治の精神を育みます。

サドベリー・スクールでは、大人であるスタッフメンバーと生徒は対等な立場だと考えられているので、学校内のルールは民主的に全員で話し合いの場で決めます。学校の運営や予算、新入生の入学許可に至るまでスクール・ミーティングで決定するのです。

こうした経験を通じて、子ども達は社会で通用するコミュニケーションスキルを日頃から鍛え、身に着けていきます。

また、子ども同士のトラブルは司法委員会があって、何が嫌だったのか、相手はどう思ったのかなどをよく話し合い、理解することで、問題解決をはかります。

クラス編成がないので、4～19歳という幅広い年代の生徒が学校で一緒に過ごし、行動することになります。さまざまな年齢の相手と接する機会があるのは、社会に出たときの強みになりますね。

サドベリー・スクールのメリット

好奇心・自主性が育まれ、責任感が生まれます。縦長クラスによって、社会性やコミュニケーション力がつきます。

サドベリー・スクールを卒業した生徒の8割が大学へ進学し、社会的な成功を収めているといいます。そして、人生に対する満足度、幸福度が高くなるといわれます。

サドベリー教育のデメリット

サドベリー教育では、子どもと大人の権利が平等で、4歳から19歳までの縦長グループで学ぶため、年齢に関係なく、誰とでも対等だという感覚で成長していきます。

和を尊ぶ、年上の人を敬うといった日本的な価値観は付きにくいと言えるでしょう。

また、「やりたくないこと」にぶつかった経験をしていないことや、本当に自分がライフワークとしたいことが見つけられるか否かが疑問視されることもあります。

日本でサドベリー教育を受けられるところはあるの？

サドベリー・スクールは、アメリカ・ヨーロッパ・日本にも広がり、現在は世界に約40校あります。

日本では1997年に「まっくろくろすけ」2009年に「東京サドベリー・スクール」が開校されました。

登校拒否を経験した子もいないわけではありませんが、学校に通っていてより自分に合った場所がいいと感じた子や、帰国子女など、入る動機は様々あるようです。近所の子よりも電車で通っている子が多いです。

出典：東京サドベリー・スクールHP

しかし、いわゆる、学校教育法上の1条校ではありません。学校教育法の第1条では「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」を学校とし、オールタナティブスクールである、サドベリー・スクールなどは一条校には入っていません。

オールタナティブスクールとは、公教育などの伝統的な教育とは異なる「もう一つの教育」として注目されていますので、別記事で日本での取り扱いについて詳しくお伝えしましょう。

日本にあるサドベリー・スクール

北海道：札幌サドベリー・スクール

東京：東京サドベリー・スクール、TAMAサドベリー・スクール　さくらんぼ学園

神奈川：湘南サドベリー・スクール

山梨：八ヶ岳サドベリー・スクール

静岡：デモクラティックスクール　びーだ

愛知：三河サドベリースクール・シードーム

兵庫：デモクラティックスクールまっくろくろすけ、西宮サドベリー・スクール

鳥取：新田サドベリー・スクール

沖縄：沖縄サドベリー・スクール

さいごに

「自分が何をしたいのか、どうしてそれをしたいのか、どうすればそれを成し遂げられるのか」を、子ども自らが追及でき、学ぶことができるような教育環境を提供するのが、サドベリー・スクールの教育哲学です。

人は本当にやりたい、必要だと感じた時に一番よく学ぶという考えを重んじ、子ども主体の活動を行っている点が高く評価できます。

今後、国際化社会で活躍する子どもたちを育てるすばらしい教育スタイルと言え、個性を伸ばす教育に興味のある方は是非、以下のホームページやユーチューブをご覧ください。

Sudbury Valley School　ホームページ

一般財団法人　東京サドベリースクール　ホームページ

この記事の著者

【ライター・コラムニスト】神戸市外国語大学を卒業後、京都府立高校で英語教師として勤務。その後、40歳で米国ジュニアタ大学に留学し、平和学を専攻。続いてオハイオ州立大学　教育学部　修士取得、博士課程、単位取得。帰国後、関西外国語大学にて教授。時事、カルチャー、政治経済、幼児教育～社会人教育まで多岐にわたる分野で記事執筆。20年間インドのアウトカーストの子どもたちの教育支援を行っている。 2018年、インド支援の一環として出版社、Murata Publisherを立ち上げる。著書に東洋経済新報社より「クリティカルシンキング　基礎編」「クリティカルシンキング　実践編」「誰も知らなかったインド人の秘密」、Murata Publisherより電子本39冊出版。

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