欧米で浸透しているギフテッド教育(GATE)、STEM教育、 STEAM教育について
ギフテッドとは?
ギフテッドとは、同世代の子供と比較して、並外れた成果を出せる程、突出した才能を持つ子供のことである。
ギフテッド教育とは?
アメリカでGATE(Gifted and Talented Education) と呼ばれているギフテッド教育は、日本でみるような、教育熱心な親が子どもを幼児教室に通わせたりする早期教育のことではありません。
GATEプログラムは州や学区によっても違ってきますが、大体、次のように分類できます。
① 成績上位の生徒のクラスが通常の学校内に作られたもの
② 優秀生徒を選抜した特殊学校
「マグネットスクール」と呼ばれます。
マグネットスクールとは、教育方針や教える内容に特色があり、広範囲の学区の子どもたちが入学できる学校のことをいいます。
公立校ですが、試験・面接・課外活動などの実績をもとに選考されます。 理数系・芸術系・国際バカロレア系‘などのコースがあり、小学校から高校まで設置されている学校もあります。
マグネットスクールは、1970年代にはじまり、魅力的な教育プログラムによって生徒や保護者を引き付け、(マグネット(磁石)が鉄を引き付けるように)その結果として特定の人種に偏らない学校作りをすることが目的でした。
残念ながら、今ではエリートスクールになってしまいました。
③ 大学や民間のプログラム
大学や民間教育機関に併設されていて、子どもたちは週末や夏休みに参加します。
全米各地にさまざまなプログラムがあります。 文系(読解、エッセイ)、理系、IT系(プログラミング・ロボット)、サイエンス系(物理・化学)、社会系(歴史、政治)などから選択できます。
アメリカのギフテッドスクールでは、公立、私立とも、「STEM教育」や「STEAM教育」を取り入れている学校が増えているので、次に詳細をご説明しましょう。
日本でも学会が設立され、今後の浸透が予想されます。
STEM教育とは?
STEM教育とは理数系教育のことで、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)教育に力を入れます。
日本STEM教育学会の定義は以下のようになっています。
STEM教育とは、「理数系分野を中核とした学際的・教科横断的な学び」「知識を統合的に活用しながら実社会の問題解決をめざす学び」「知識・技能だけでなく関心・意欲・態度も高まる学び」という3要素を満たす学びのことです。
実は、1990年代からアメリカでSTEMが始まった背景には中国への脅威がありました。
新設された化学工場数を比較しただけでも、中国はアメリカの何十倍もあったことなどがあり、国家戦略としての科学技術革新、STEM領域の人材確保が重要な課題でした。
2006年にブッシュ大統領の一般教書演説中の米国競争イニシアティブで施策とゴールが設定され、オバマ~トランプ政権下でも取り組みが継続しています。
施策とゴールの例として、2020年までに初等・中等教育でSTEM分野の教師を10万人養成・高校卒業までにSTEM教育を経験する生徒数を50%増加・STEM分野への女性・マイノリティの進出を10年間で拡大 などが挙げられています。
(参考:FEDERAL SCIENCE, TECHNOLOGY, ENGINEERING, AND MATHEMATICS (STEM) EDUCATION 5-YEAR STR ATEGIC PLAN. 2013 )
イギリスの取り組み例
イギリスで行われているSTEM教育一つに「Design and Technology」という科目があるのでご紹介しましょう。
そこでは、子どもたちがどのような過程で物をデザインしたのかを評価できるように、ポートフォリオ形式を採用しています。
ポートフォリオとは結果だけではなく、過程を重視する評価方法です。
こちらの詳細を知りたい場合には、「ニュージーランドの幼児教育カリキュラム「テファリキ」に世界が注目!」をご覧ください。
STEAM教育とは?
最近、多くの学校が、これまでのSTEM教育にART(アート)を加えたSTEAM教育へシフトしています。
理数系と芸術の融合ですが、2008年、John Maeda学長(ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン美術大学)が、理系のSTEM教育を受けた生徒達がよりよい成果を出すには、クリエイティビティ(創造性)が必要であると提唱したのが始まりで、科学的根拠も示されました。
アメリカのSTAEM教育におけるArt(芸術)には、視覚的芸術(絵画・写真・彫刻・メディアアート・デザイン)、舞台芸術(ダンス・音楽・演劇)、詩作や工芸、グラフィックアートなどと多岐にわたります。
文部科学省のSTEAM教育に対する方針
日本でも「日本STEM教育学会」「STEAM教育協会」が設立され、注目を集めています。
文部科学省は、これからの日本の学校現場における教育方針についての報告書「Society5.0に向けた人材育成 ~社会が変わる、学びが変わる~」を2018年6月に公開しました。
資料には、STEAM教育に対する考え方と、その導入方針が記載されています。
同省は、これからの社会において、以下の三つの力が必要だと考えています。
文部科学省は高等学校からSTEAM教育を導入していく方針で、高等学校を学生が社会の変化に対応できる能力を身につける場にしようと考えています。
さらに、大学においてもSTEAM教育の導入を試みています。
さいごに
この記事では、ギフテッド教育について、そしてSTEM教育やSTEAM教育についてお伝えしました。
ギフテッド教育はアメリカで始まり、日本でも取り組みが始まりましたが、日本の受験システムは、テストの結果だけが高く評価され、欧米社会の様な本人の持って生まれた高い知性、想像力、独創性、洞察力、芸術性などの才能や資質能力を伸ばすという認識が薄かったように思います。
その根底には、生まれつき持っている能力よりも、人間が生まれて教育を受け、育つ過程を大切にするという平等観があります。
能力別クラスと言わず、習熟度別クラスと呼ぶあたりにも、それがうかがえます。
AIの進歩などで、いやが上でも変わらざるを得ない日本の教育においても、少しずつですがギフテッドを社会全体で育て、その還元を皆が受けるという認知が進んでいく兆しが見られます。
日本の多くの学校でプログラミング教育を始めていますが、その本質を学べるようなカリキュラムを実践している学校は少ないといいます。
そのためには、プログラミング教育を含め、指導ができる人材養成や確保が課題になります。
今後の進展を見守りたいと思います。
最後に、お勧めの本を紹介して、記事を終えることにします。 『アメリカギフテッド教育最先端に学ぶ 才能の見つけ方天才の育て方』石角友愛 著 自分の子どもの才能を摘まないためにどのようなことができるのかのヒントが描かれていますので、興味がある方は是非、お読みください。