オランダに学ぶ育児ストレス解消法!“何もしない”リラックス法「ニクセン」とは?
オランダのワークライフバランスは世界一!
上のグラフはOECDが発表したBetter Life Indexで、OECD諸国のワークライフバランスを測る指標になっています。
(10が最高値) 対象は40カ国ですが、それによると、オランダはトップの座を占め、1週間あたり50時間以上働く人の割合はわずか0.4%です。OECD諸国の平均は13%なので、オランダは非常に低いですね。オランダ人は一日16時間を食事や睡眠、余暇に充てています。
ちなみに、Better Life Indexが低かったのは、オーストラリア(31位)、南アフリカ(32位)、アイスランド(33位)、チリ(34位)、イスラエル(35位)、日本(36位)、韓国(37位)、トルコ(38位)、メキシコ(39位)、コロンビア(40位)で、日本は残念な結果になっています。
しかし、オランダ人も働く時は働き、経済活動は活発です。国民1人当たりのGDPを見ると、2018年の時点で5.3万ドル(562万円)、日本はというと3.9万ドル(413万円)で、オランダが大きく上回っています。
そしてオランダは、1980年代は35%だった女性の就業率が今日では70%近いのです。おそらく仕事とオフのメリハリがあり、リラックスした生活も楽しんでいることと大きな関係があるのではないでしょうか?
さらに、オランダでは若者の失業率が低く、高い識字率、子どもの貧困率が低いことでも知られています。実は、11歳から15歳のオランダの子どもたちの93%が幸福感をもっているのです。
オランダでは、困ったとき助けを求めることができる友人や家族がいると答える人が90%にも上っています。そして、80%以上という高い投票率からも分かるように政治に強い関心を示す人が多いです。 オランダの生活様式をそのままアジアに持ってくることは無理があるかもしれませんが、その精神には学ぶことが多くありそうです。
オランダ人の「ニクセン(何もしない時間)」の過ごし方
欧米で注目を集めているオランダ発のリラックス法、「ニクセン」について詳しくご説明しましょう。
オランダ人の間でもバーンアウト(燃え尽き症候群)が増えてきたため、その対処療法として「ニクセン」がセラピーなどでも使われていてきています。 まずは予定を調整してスケジュール帳に空白の時間を作ることから始めます。その時間は自分をhave to(~しなければならない)から解放します。 毎日数分間から始めて、それを数回繰り返して、1日に10分ぐらいまでゆっくり伸ばします。
このくらいなら、私たちも無理なく実行できそうです。 目的もなく窓の外をボーッと眺めたり、ゆっくり音楽を聴いたり、陽だまりの中に腰を下ろしてリラックスするのもいいですね。
何かをしながらでもニクセンできます。散歩をしたり、皿洗いをしたり、編み物をしたり、筆者は庭の草取りやガーデニングが毎日のニクセンになっています。 大切なのは、仕事や予定を脇において、短時間でも意識してニクセンしてみると、空の色や雲の形がどうだったか、鳥のさえずりや植物、水の音など、今まであまり見ていなかったことに気付かされます。 公衆衛生学が専門のRita Watson氏(エズラ・スタイルズ大学)が『Psychology Today』に「Niksen(何もしない)」アイデアを示してくれていますので、ご紹介します。
ニクセンのアイデアリスト
他にもきっと自分だけの「ニクセン」があると思いますので、見つけてみてくださいね。
コロナ禍で、気持ちが塞ぎがちになり、ギスギスした親子関係、家族関係から抜け出す一歩になるかもしれません。
幸福のための社会環境を研究しているエラスムス大学のルート・フェーンホーフェン教授によると、ニクセンは忙しい人ほど効果を表すと言います。
「ニクセン」のメカニズムは?
ニクセンをすると呼吸や心拍数が整うのは、脳内に「セロトニン」という神経伝達物質が分泌されるためで、セロトニンは自律神経を整え、心を落ち着かせてポジティブな気持ちにさせます。
つまり、副交感神経を高め、自律神経を整えることが大事なのですね。自立神経を整えるメリットは、内臓の動きや呼吸など、私たちの無意識の活動を司り、血流にも大きな影響を与えます。 血流が良くなれば、体や脳にエネルギーや酸素がよく行きわたるほか、病原菌やウイルスと戦う免疫細胞も運ばれ、疲れた体や脳が活性化されたり、免疫力が高まったりするのです。
さいごに
いかがでしたか?
記事でご紹介したルート・フェーンホーフェン教授の研究では「幸福」と「活動」は正比例の関係にあることが明らかになっていて、ヒマな人よりも忙しい人の方が幸福感が大きいと言います。
でも、全く休まずに活動だけをしていると、疲れやストレスが溜まってしまい、周りに当たり散らすようなことになってはいけません。特にテレワークで自宅勤務をしている人が多い今、ニクセンで効果的に休むことが幸せのカギです。
オランダでは男女共に快適に働くことが目指され、日本のような長時間労働、男性に偏った就業率の高さ、正社員とパートタイム労働者の間の格差などは見られません。むしろ、オランダでパートタイム労働は一般的な働き方であり、長時間労働を解消し快適で柔軟な労働を実現する要因ともなっており、また女性も長年に渡り仕事を続けることができます。
オランダはパートタイム労働とフレキシブル・ワークを大胆に取り入れた労働条件に加え、育児や出産へのサポート体制の整備によって、男女共に快適な労働を実現しやすくなっています。オランダの取組は私たちにも参考になる点が多いのではないでしょうか。
別記事、「ぼーっとすることが知育に必要な理由。得た知識を整理するDMNとは?」も、是非お読みください。 コロナ禍によって不安な日々をおくる子どもたちにとって、親がまず、穏やかに日々を過ごすことがとても重要になってきます。記事が参考になれば幸いです。