“意見を言える力”を育む!大切なのは「反対意見への耐性」
今重要視されている「意見を言える力」
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、急速に我々の日常に浸透したのが「非対面型コミュニケーション」です。会議や子どもたちの塾がZOOM等を利用したオンラインになったり、様々な報・連・相は極力チャットツールを使うようになったり。
これらのツールは非常に便利ではありますが、その一方で表情や声色から相手の感情や熱量がなかなか読み取りにくい…という欠点もあります。
その結果、相手の反感を極力買わないために「当たり障りのない意見」を選んでしまう、つまり「誰かの意見と周りの反応を観察してから、もっとも反感が少ないであろう意見に迎合する」人が大人・子どもに関わらず増加しているのが現状です。
もともと日本人は自らの意見を明確に発言するのが苦手な国民性を持っています。しかし、グローバル化がどんどん進んでいく昨今、重要視されるのは自分の意見をきちんと伝えられる力。
こと非対面型コミュニケーションの場においては、自分の意見を言わないということは、=自分の存在をアピールできない、ということ。極端に言うと、全く自分の意見を述べない人は、「場に参加した」とはみなされず、「いない存在」として扱われてもしかたないのです。
そうならないためにも、子どもたちには今から自分の意見を言える「発信力」をしっかりと培っていく必要があります。
大切なのは「反対意見に対する耐性」
なぜ、自分の意見をはっきりと主張できない、議論の場でどっちつかずの曖昧な立ち位置で終始してしまうのか?その理由の一つに「反対意見に対する耐性の無さ」があげられます。
元来議論をするのが苦手な日本人は、人間性と意見の賛否をセットにして考えてしまう傾向にあります。つまり「反対の意見を言う人=敵」という考えが頭にあるので、自分が異なる意見を言うことで、相手に敵だと思われたらどうしようと考えてしまうのです。そのため、自分の意見を進んで述べることに躊躇してしまうのです。
一方積極的に議論を戦わせる欧米では「自分なりに根拠がしっかりあるのなら人と違っても構わない。議論というものは賛成と反対があってしかるべきだ」というスタンスです。そのような考え方を子どものころからしっかりと身に付けているため、反対意見に臆することなく自分の意見を述べることができるのです。
つまり、子どもが議論の場で自分の意見を発言できる「発言力」を養うための第一歩として「反対意見への耐性」を身に付けることが重要になるのです。
クリティカル・シンキングの重要性
子どもたちが反対意見への耐性を持ち、自信をもって自らの意見を発信できるようになるために大切なことが「クリティカル・シンキング」を身に付けることです。
クリティカル・シンキングとは「批判的思考」と訳されることが多いのですが、日本語の意味する「批判的」とは少しニュアンスが異なります。むしろ建設的かつ肯定的な意味あいを含んでおり「他人の主張をうのみにせずに、しっかりと吟味して評価すること」と定義づけられています。
このクリティカル・シンキングは文部科学省もその重要性に言及しており、「社会構造の変化に対応するための初等中等教育システム改革」において「考える力(クリティカル・シンキング)やコミュニケーション能力等の育成、体験的な学びに重点をおいた新学習指導要領等の着実な実施とフォローアップ」が重要である、と述べています。
つまり、子どもたちはクリティカル・シンキングを身に付けることで、反対意見を言うこと、言われることは議論において当たり前であると考えることができるようになるのです。
(参考)
1-1 クリティカル・シンキングとは何か
https://jrecin.jst.go.jp/seek/html/e-learning/900/lesson/lesson1-1.html
資料1-1 社会の期待に応える教育改革の推進(平成24年6月4日 国家戦略会議 平野文部科学大臣提出資料)
クリティカル・シンキングの養い方
子どもが反対意見に耐性をつけるためには、日常生活の親子の会話の中でクリティカル・シンキングにつなげていくことが大切です。ここでは、家庭でできる「クリティカル・シンキングへのつなげかた」をご紹介します。
「なんで?」「どうして?」で子どもに意見を述べさせる
まずは、親子間であれこれ言い合える空気を作っていくことから始めましょう。
- (子どもがスーパーでお菓子を選んだら)「なんでそのお菓子を選んだの?」
- 「今日の晩御飯は何にしたらいいと思う?」
- 「昨日はパズルをしていたのに、今日はなんでお絵描きをしたいと思ったの?」
など、YESやNOなど、選択肢の中から子どもに答えさせるのではなく、子どもが考えないと答えが出せない質問を、会話の中でどんどん投げかけてあげましょう。
リアクションで子どもに自信を持たせてあげる
子どもが意見を言うのに躊躇したり、相手の反応をうかがうようなそぶりを見せたりすることがあるなら、まずは自信を持たせてあげましょう。
子どもの回答に「面白いな」「すごいな」と思うところがあれば、大げさなくらいに感心したり、驚いたりしてあげましょう。
「なるほど!それはとっても面白いね!」「それはすごい考え方だね!」と受け入れてあげることで、子どもは「正解はないから、気軽に自分の意見を言ってもいいんだ」と思えるようになり、自分の考えを発言することに抵抗がなくなるでしょう。
明るく反対意見を述べる
もし、子どもの意見に疑問を感じた時は、そのままにせずにきちんと反対意見を述べましょう。このときに「え、でもそれって違うよね?」「え~そうかなぁ?」などと否定的な言葉を使用するのはNGです。
まずは子どもの意見を「なるほど!そう思うんだね」と受け止め、そのあとに「は~い!お母さんの(お父さんの)別意見を言います!」と前置きしてから、「どうして意見が違うのか」を子どもがわかるように説明します。
「なぜ意見が異なるのか」をしっかり伝えることで、相手を否定することなく反対意見を述べる方法が定着していきます。
「6つの帽子思考法」を試してみよう
家の中である程度意見を言い合うことに慣れてきたら「6つの帽子思考法」にトライしてみましょう。
6つの帽子思考法とは?
6つの帽子思考法とは、それぞれ異なる視点を持つ6つの色の帽子をかぶって、テーマについて考える発想法です。
- 青い帽子:交通整理。何を考えるか決める司会者の役割。次に何をすべきかの確認や結論を出す。
- 白い帽子:客観的事実のみを述べる。自分の意見や判断に関する発言はしない
- 赤い帽子:テーマに対する感情的な意見を述べる。「うれしい」「悲しい」「怖い」など
- 黄色い帽子:ポジティブな意見を述べる。テーマの良いところのみにフォーカスする
- 黒い帽子:ネガティブな意見を述べる。不安材料やリスクを探す
- 緑色の帽子:事実やデータにとらわれず、自由なアイデアを出す
このように、色ごとに役割があり、その帽子をかぶった人は役割に沿って意見を述べていきます。
家庭での実践法
本来はひとり一色の帽子をかぶり、話を進めるのですが、家族で行う場合は色を一つ取り上げ、話す内容に縛りを設けるとよいでしょう。
まずはテーマを決めて、親は子どもたちに「今から『白』で話すよ」と伝え、みんなで事実のみを話します。続いて「じゃあ次は『黄色』で話そう。このテーマのいいところをみんなで話そう」と親が伝え、ポジティブな意見を出し合います。
このように縛りを設けることで、一つの内容をじっくりと掘り下げて話すことができ、テーマとは全く異なる話に飛んでしまうことを防ぎます。
6つの帽子思考法を実践することで、子どもたちは本来の自分の見方とは違う視点で物事を考えることができ、より柔軟な思考が身に付いていくのです。
まとめ
反対意見を述べること、述べられることに不安や反発を覚えてしまうと、子どもたちは自信をもって自分の意見を言えなくなってしまいます。
将来グローバルな世界に羽ばたくための「発言力」を身に付けるためにも、まずは「反対意見への耐性」を養ってあげることが大切です。
普段の親子の会話で、少しずつ身に付けてあげることで、子どもたちは自分の発言に自信が持てるようになり、最終的に周りに流されない「ぶれない自分」を確立できるのです。