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アメリカで注目の「SEL教育(Social Emotional Learning)」とは?特徴や効果などを解説

二村まいこ
2024/04/18 21:04
最近「SEL」という教育が日本でも注目されています。アメリカではメジャーとなりつつある教育、SEL=Social Emotional Learningは一体どのような教育なのでしょうか。今回はSELの基礎知識や効果などを紹介していきます。

SEL(Social Emotional Learning)とは?

Social Emotional Learningを表す写真

Social Emotional Learningとは、日本では「社会性と情動の教育」といわれます。近年では、アメリカを中心にイギリスやカナダなど学校で行われている教育プログラムです。


SELは、自尊感情と対人関係能力を育てる教育ともいわれ、自己理解や社会性、共感力、感情制御力を育てるための学習や体験を行います。脳科学、臨床心理学、発達心理学などの科学的根拠を基にアプローチし、自己肯定感ややり抜く力、問題解決能力などの「非認知能力」をはぐくむことができるといわれる教育です。

生きる力となる非認知能力

子どもの写真

認知能力とはIQなどのようなテストで測れる知能的な能力を指すのに対し、非認知能力は知能的な能力以外の、人生を豊かにするための能力を広く指すといわれます。非認知能力には、ものごとを最後までやり抜く力や、目標や意欲をもって行動する力、自制する力、仲間と協力する協調性やコミュニケーション力などが挙げられます。


今までの社会では、学力や運動能力などの数値化できる認知能力が重視されてきました。しかし、近年では目に見えにくい非認知能力の方が、急速に変化する社会の中で生き抜く力を身につけることができ、将来の成功につながりやすいと考えられるようになってきています。

非認知能力が注目されるきっかけ

1960年代にアメリカで行われた「ペリー就学前計画」が、注目させるきっかけになったといわれています。「ペリー就学前計画」とは、低所得のアフリカ系アメリカ人の幼児を対象に行われ、能力に応じた子どもの自発性を大切にする活動を中心に指導を行い、その子供たちが40歳になるまで調査したプロジェクトです。


このプロジェクトで指導を受けた子どもたちは、受けていない子どもたちより、40歳になったとき収入や持ち家率が高く、犯罪歴や生活保護受給率が低いという結果が出ました。学力に関しては指導を受けた子どもの方が、指導を受けているときはIQが高いのですが、指導が終わり数年たつと低下し、受けていない子どもと差がなくなるという結果が出ているのです。


このプロジェクトからもわかるように、IQのような認知能力よりも、自発性を大切にした活動を行うことで得られる非認知能力の方が、将来の生き方に影響していると考えることができるのではないでしょうか。

SELで身につくスキル

対人関係スキルの写真

非認知能力をはぐくむことができるといわれるSELは、以下のスキルを身につけることが狙いです。これらのスキルを身につけることで、子どもたちの問題行動の減少や学力の向上も期待できるといわれています。

自己認識と自己規律

自己認識と自己規律とは、自分で自分の感情を理解しコントロールし、目標を掲げて達成していく力です。自分のことが好き、自分は自分のままでいい、などと思える自己肯定感にもつながります。自己肯定感が低いと、自信がなくやりたいと思う気持ちをもちにくくなってしまいがちです。また、自分の感情を理解しコントロールすることは、失敗しても気持ちを切り替えて困難を乗り越える力にもつながるでしょう。

他者への気づきと対人関係

他者への気づき、対人関係のスキルとは、自分と他者がお互いに共感したり、理解したりしたことを示すことでよい影響を与え、関係を築き、維持していくことができる力です。他者と協働するときに、思いやりの気持ちをもち、助け合うことができる能力ともいえるでしょう。また、自分の意思を相手に伝える力も必要です。

責任ある意思決定

責任ある意思決定とは、自分自身、もしくは他社との協働の中で責任をもって決定していく力です。自分の意思で行動する力だけでなく、失敗してもあきらめず最後までやり遂げる力にもなってきます。

SELでスキルを身につけた成果

社会性を表す写真

OECD (経済協力開発機構)も、SELのような社会性や情動をはぐくむことに関心を寄せており、研究報告をあげています。その研究報告の中で、社会性と情動を学び、身につけた学生に以下のような成果があったこと示しています。

  • 学力が向上した
  • 収入が高く、よい仕事についた
  • 健康である
  • 幸せを感じている
  • 積極的で行動的
  • 自分の属しているコミュニティに貢献しようとする

前述で紹介している「ペリー就学前計画」と同じような成果が挙げられているといえるでしょう。子どもたちのこれからの未来を考えると、SELを学ぶことのメリットは大きいですね。

実際に学校で行われているSELの活動

学校の写真

アメリカには、SELを積極的に取り入れて、子どもたちの学びに活用している学校があります。SELで有名な学校ではどのような活動をしているのかご紹介します。

「わたしのこと」ポスターの作成

10歳から12歳の子どもたちが行った活動です。まずは、参加する全員の顔が見えるよう輪になり、お互いを知るための質問に全員が答えていきます。質問には正直に答える、お互いを尊重するなど、あらかじめルールを決めておくことも大切なポイントです。その後、自分の名前や家族、好きなこと、将来の自分などの項目のあるポスターを、文や絵で各自入していきます。ポスターが完成したら、全員が発表していくという活動です。


この活動は、SELのスキルである「自己認識」と「他者への気づき」を高めることが目的となっています。一見、話し合いをしてポスターを作成するだけなんて簡単なような気がします。しかし、自分が好きなことって何だろう、将来の自分はどうなっていたいのかなど、自分自身に問いかけ、言葉にして他者に伝えるということは、シンプルですが意外と難しいことなのではないでしょうか。そして、全員が発表することで、他の人のことをもっと知る機会にもなるでしょう。

学校のカリキュラムに取り入れて実践

上記のように、ポスターの作成を授業として行うだけでなく、カリキュラムの中に取り入れて実践している例も多くあります。例えば、行事などでダンスをするときに何を目的として、どのような期待をしながら行うか全員で話し合うことで共感する力をはぐくんだり、授業や活動について振り返りフィードバックを行う、学んだ内容をスピーチにするなど、SELのスキルが身につくような活動が取り入れられているのです。

このほかにも、SELの授業では、日記を書くことやロールプレイング、グループプロジェクトなどの活動をしたり、ストレスマネジメントや目標設定、価値観の掘り下げなどテーマに沿った知識やスキルが学んだりしています。

非認知能力を伸ばすために家庭でできること

家の写真

前項は、アメリカの学校で取り入れられている活動について紹介しました。SELは学校に入学してから行うもののように感じている方もいるかもしれませんが、非認知能力を伸ばすことは就学前からでも可能です。「ペリー就学前計画」のように、幼児期の環境や教育が将来にも影響してくると考えられています。非認知能力を伸ばすために、家庭でどのように子どもと接するとよいかご紹介します。

子どもの安心できる環境を整える

子どもはコミュニケーションやスキンシップを通して、安心し、自分は自分のままでいいと感じることができるといわれます。自分を認めてくれる味方となる存在がいることで、さまざまなことに挑戦でき、自信をつけることができるのです。ありのままの自分を受け入れてもらえることで、自己肯定感を高めることができます。自己肯定感は非認知能力の土台になるともいわれる要素です。

子どものやりたい気持ちを見守る

子どもが興味をもって、やってみたいという意欲が見られたら、その思いを受け止めてあげましょう。それがたとえ難しそうだったり、あまりしてほしくないことだったりすることもあるでしょうが、命の危険がない限り、応援し見守ることが大切です。子どもは興味のあることはどんどん吸収していき、驚くような集中力や想像力など発揮することもあります。難しそうだと、つい先回りして手助けしたり、否定したくなったりすることもありますが、そこはぐっとこらえて見守りましょう。やりたいことを応援されることで自己肯定感をもつことができ、自発的に考え行動することができるようになります。

しっかり遊んでお手伝いをたくさんしてもらう

子どもにはしっかり遊んでもらいましょう。家のおもちゃで遊んだり、工作をしたりすることも、外に出て身体を動かしたり、自然に触れたり、公園で遊んだりすることも、子どもにとってはすべての遊びが学びにつながります。そして、何をして遊ぶのか、どのように遊ぶのかは子どもに決めさせるとさらにいいですね。友達と一緒に遊ぶことは、協調性やコミュニケーションを身につけることができます。遊びとは少し違いますが、催しや行事に参加することでも、多くの人と行動することや共感することを学ぶことができるでしょう。また、お手伝いもおすすめです。簡単な作業だとしても、ほめて感謝することで、人の役に立つ喜びを感じることができます。

さいごに

アメリカで注目されているSELは、近年日本でも注目されつつある教育です。自尊感情と対人関係能力を育てるSELは、生きる力となる非認知能力を高めることができ、これからの社会では身につけておくべき能力だといえます。SELを学びスキルを身につけた子どもたちは、将来を自分の力で切り開き、よりよい未来を期待できそうですね。幼児期からの関わり方でも能力を伸ばすことはできるので、家庭でも意識して接してみましょう。

参考サイト

    この記事の著者
    二村まいこ(peekaboo)
    ライター
    5歳の息子と3歳の娘をもつ30代の主婦。大学では教育学を専攻し、卒業後は教育業界へ。結婚を機に転職、妊娠し退職。趣味は約8年続けていたフラダンスだったが、現在お休み中。新しい趣味や習い事に挑戦したいと思っている。
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