子どもの社会性を育てるには?幼児期の発達過程と親の見守り方
遊びが子どもにもたらすものと着目すべき点
子どもにとっての遊びは、心の成長や他者との関わりにも影響してきます。また、遊びにも段階があり、段階を経て感情と共に社会性も少しずつ育まれていくのです。 子どもの遊んでいる場面を見た時に、今はどのような発達段階なのか、遊びを通してどんな能力を育もうとしているのか、何を感じているのかに注目するとよいでしょう。
急かすことなく、1人ひとり自分のペースが大事
子どもは、階段を上るように1歩ずつ成長していきます。いきなり集団の中に入って他の子と遊びだす、なんてことはありません。他の子は友達と一緒に遊んだり話したりしているのに、うちの子はずっと一人で遊んでいる……とう場面もあるでしょう。不安になることもありますが、子どもの成長は個人差がとても大きいものです。早い子もいればゆっくりな子もいますので、他の子と比べずに見守りましょう。
幼児期の遊びを通してみられる具体的な成長過程
幼児期の遊びはどのように変化していくのでしょうか。ここでは、興味があるものだけに反応していた0~3か月頃のねんね期を過ぎてからの一般的な成長過程について、順を追ってみていきましょう。
赤ちゃんの頃からずっと付き合っていく「一人遊び」
一人遊びは、0~3歳頃にみられる遊ぶことの楽しさに気づく初期段階の遊びです。他の子どもと一緒に遊ぶわけではなく、 文字通り一人で黙々と自分の世界に没頭して遊びます。日々の生活の中で、見たもの、聞こえたもの、体験したことなどをマネしてみしたり、こうかな?こうしてみよう!と実験したり、自分なりに様々な工夫を凝らすのです。社会性を育むために必要な「他者」という感覚がまだあまりない時期であれば、他の子におもちゃを取られた時に、「誰かにとられた!」という悲しみではなく、「おもちゃが急になくなった!」という驚きで泣いてしまいます。
なお、この一人遊びは成長と共に減っていくわけではなく、その後もみられる遊びです。他の子と遊ぶより一人で遊ぶことの方が好きなのであれば、その個性を大事にしてあげましょう。
具体的に想像力を膨らませて遊ぶ「傍観遊び」
傍観遊びは、一人遊びと同じくらいのタイミングで出てくる遊びです。他の子への関心や、興味が湧く時期でもあります。他の子と一緒に遊ぶわけではありませんが、相手の遊びをじっと見ていたり、時に口をはさんだりします。一見ただ眺めているだけのようにもみえますが、子どもからすると他の子が遊ぶ様子を見てイメージしながら自分も一緒に遊んでいるのです。
この傍観遊びの一つで、行ったことがない所に「行ったことがある」と子どもが話すことがあります。これは、他の子の体験を聞いた時にその様子をイメージすることで、自分もその場所に行ったような感覚になるためです。本人からすれば、決して嘘をついているつもりはありません。具体的に想像し、自分自身も楽しんだのかもしれませんね。他者の存在を認識し、興味を持ち始めているとも言えるでしょう。
同じ空間に一緒にいることを楽しむ「平行遊び」
平行遊びは、「並行遊び」とも言われる2~4歳頃に見られる遊びです。まだ他の子との交流はせず、他の子のマネをしたり比べたりしながら同じ遊びを自分一人でします。ただ、側にいる安心感や互いに影響し合っているためか、一緒に遊んでいるという感覚はあるようです。周りにも同じように遊ぶ子がいるため、大人からすると一緒に遊んでいるようにも見えるのですが、おもちゃを貸し借りしたり、協力したりすることはありません。この遊びを通して、個々のやり取りが少しずつ出来るようになっていきます。
「公園へ遊びに行ったけれど、他の子とは遊ばず結局一人で遊んでいた」なんてことも、よくあります。しかし、同じくらいの子がその場で遊んでいただけで、子どもにとっては大きな影響があり、遊び方が変化していくきっかけにもなるのです。保育施設以外であれば、公園は身近で行きやすい絶好の環境ともいえるでしょう。
大人との繋がりから子ども同士を紡ぐ「連合遊び」
連合遊びは、3~4歳頃にみられる平行遊びの次の段階で、集団で遊ぶことの始まりの時期です。個々の遊びをしつつ、おもちゃの貸し借りといった交流がみられるようになります。例えば、同じブロックを使って遊んでいても、一方は「家を作り」、一方は「とにかく積み上げる」という形です。その過程で必要なブロックをやり取りしていきます。一緒の場所で同じように遊んでいても、あくまで目的やイメージは異なるのです。
また子どもは、子ども同士の関係よりもまず大人との繋がりを求めます。はじめは保育者と1対1の関係を求める子どもが、同じような目的で集まった他の子どもたちと徐々に連帯し、一緒に遊びだすのです。
公園などの外にいる際は、保育者の立場が身近な大人になります。パパママから「一緒に遊んでみたらどう?」とサポートしていくと、徐々に他の子とも遊ぶようになっていくのです。
友達と一緒に社会的スキルを育める「協同遊び」
協同遊びは、「共同遊び」「集団遊び」ともいわれる4歳頃からみられる遊びです。子どもの社会性を育める遊びとしても、最終段階の時期となります。個々の遊びから、子ども同士で一緒に山や川を作るといった同じ目的をもって、コミュニケーションを取りながら一緒に遊びだすのです。まさに「友達」の感覚ですね。友達同士で遊ぶことが楽しいので、少しずつ大人の介入が邪魔になることもでてきます。
また、役割分担やルールを取り入れ、話し合うことも出来るようになり、リーダー的な存在が出てきます。リーダーになる理由は、優しさや発想の面白さ、体の大きさや力の強さなど様々です。こうしよう!と先導するタイプやじゃんけんで決めようとするタイプ、みんなの意見を聞こうとするタイプなど、個性も出てくるでしょう。このように、いろいろな子との交流をしながら、徐々に社会生活に欠かせない人間関係を学んでいくのです。
どうすればいい?悩みの尽きない親の見守り方
子どもを見守ることが大事とはよく聞きますが、心配なことや手が出そうになることもたくさんあります。ここでは、親はどのように見守っていけばよいのかをみていきましょう。
声かけでサポート!側で見守る大人の役割
成長過程があるとはいっても、必ずしも子どもたちが一人で自然と学んでいくわけではありません。側で見守っている大人の役割が、重要な意味をもってきます。子どもの成長段階に合わせた、コミュニケーションの見本が必要なのです。例えば、朝昼晩の基本的な挨拶や、他の子へ「こうやって声をかけてみよう」という声かけのサポートを大人がすることによって、見て、マネて、自信をつけながら少しずつ行動に移していけるようになります。
育児中のあるあるトラブルも成長するチャンス
言葉の未熟な0~3歳頃の子どもは、自分の気持ちをまだ上手く表現できません。他の子のおもちゃをいきなり取ってしまったり、手が出たり、思わず噛んでしまったりもあるでしょう。こういった状況は、譲り合う気持ちや待つ行動、謝り方を学ぶチャンスです。まずは「こうしたかったんだね」「これが欲しかったんだね」と子どもの気持ちを代弁してあげましょう。気持ちを受け入れてあげると、感情も落ち着きやすくなります。そして「貸してって言ってみようか」「ごめんねって一緒に言ってみよう」と、どうすれば良かったのか提案してみましょう。
トラブルは、相手に気持ちを伝えることの大切さや、言葉にすれば分かってもらえるという成功体験も、経験値として積むことができます。もちろん、なかなか上手くいかないこともたくさんあるでしょう。それでも「こうすればいい」と大人がすぐ口を出したり、大人だけで解決したりせず、子どもに経験させることが、社会性の育みに不可欠なのです。
心の成長には精神的回復力の育みがとても重要
言葉を覚えてくると、子ども同士で遊ぶことも増えれば、けんかに発展することもあります。「仲良くけんかせずに遊んで欲しい」と思われる方もいるかもしれませんが、幼児期にけんかやいざこざを経験することで、社会性は身についていきます。怒りや悲しみといったマイナスな感情から、嬉しい、楽しいというプラスの感情になる精神的な回復は、今後も起こるであろう挫折や葛藤を乗り越えていくために必要なものです。
「けんかして嫌なことがあっても、仲直りしたら楽しかった」というような経験と感情の反復が、自身の糧となり自立するための土台となっていきます。この時親は、ケガや危険がないように配慮だけして、気持ちの整理や代弁、援助に留めておきしょう。
さいごに
幼児期の遊びの発達過程について、育まれる社会性を交えご紹介いたしました。わが子の遊び方が他の子と違うと心配になることもありますが、1人ひとり成長のスピードは異なります。その子なりのペースで個性を伸ばし、社会性を身につけている真っ最中かもしれません。声をかけたり、促したりしたくなりますがぐっと堪え、親はなるべくじっくり見守ってあげられるとよいですね。
参考サイト
- 訪問看護ブログ|PARC(パルク)|遊びの発達段階ってどんなもの?一人遊びからお友達と遊ぶまで(https://parc.medi-care.co.jp/blog/120)
- 学校法人愛隣幼稚園|【子どもの遊びにも成長の過程がある?】(https://www.airin.ednet.jp/diary/20180925/82664/)
- 株式会社いろや|『集団遊び』で育まれる力・おもちゃの役割は?たくさんのお友達と考えて遊ぶ(https://iroya.online/column0003/?p=792)
- Psycho Psycho|協同遊びとは?その特徴や連合遊びとの違いを具体例でわかりやすく解説(https://psycho-psycho.com/cooperative-play/ )
- パンパース|並行遊びとは:並行遊びはどうして大切なの?(https://www.jp.pampers.com/toddler/activities/article/parallel-play-in-toddlers)