Withコロナで「子ども食堂」はどうなっている?
子ども食堂とは?
子ども食堂は「子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂」ですが、公的な定義はありません。
名前も「地域食堂」「みんな食堂」「○○の家」など様々で、子どもだけが参加するところ、親子参加を認めるところ、地域住民も自由に参加できるところなど、様々です。
- こども食堂は、食事を通して子どもたちや地域の人々に居場所を作る社会活動
- 子どもたちの見えにくい問題の発見や居場所づくりとしての役割を担う
- 子だけでなく大人も参加することで地域交流の場にもなる
- こども食堂では食事の提供とともに教育支援も行われるところもある
- ボランティアスタッフや利用者が子どもに勉強を教える
- 勉強や日常的なコミュニケーションを通して子どもの心の拠り所になる
出典:農林水産省「こども食堂と地域が連携して進める食育活動事例集」
現在、一番多いのは誰もが自由に参加できる地域交流拠点としての子ども食堂で、子どもだけではなく、親支援にもなっています。子ども食堂にきて、やっと自由な時間がもてたと感じる母親もいるようです。
子ども食堂は、2012年に東京都大田区で始まったとされ、現在、NPO法人や社会福祉法人など、さまざまな組織が参画しています。
多いところは東京都(488箇所)、大阪府(336)、神奈川県(253)で、少ないところは秋田県(11)、富山県(15)、山梨県(16)です。何だかコロナの発生数と呼応していますね。
小学校区に対する子ども食堂の充足率をみると、沖縄県(60.5%)、滋賀県(52.5%)、鳥取県(35.2%)が上位です。
一方、充足率が低いのは、秋田県(5.5%)、青森県(5.6%)、長崎県(7.0%)です。(参考:「むすびえ」https://musubie.org/news/993/)
子ども食堂はなぜ必要?
NPO法人、全国こども食堂支援センター「むすびえ」の湯浅誠さんは、内閣府参与として、貧困家庭の子どもの学習支援の元となるモデル事業を始め、生活困窮者の自立支援事業を制度化されました。
子ども食堂には貧困家庭以外の子どもたちも自由に参加できるため、貧困家庭の子どもであっても引け目を感じることなく、サービスを受けることができます。
子ども食堂の数は年々増えつづけ、2019年には3700か所(2018年は2286か所)以上になりました。これほど数が増えているということは、それだけニーズがあり、参画する人が増えているということですね。
経済優先の限界、増え続ける災害、出口の見えない新型コロナの蔓延に直面している私たちに今、できることは何なのでしょうか?
コロナの蔓延は、悲しく不幸な出来事ではありますが、価値観の転換という意味で、私たちに多くのことを教えてくれています。
- 人とのつながりの有難さ
- にぎやかさの有難さ
- 地域コミュニティーの有難さ
読者の皆さんは他に、どのような価値観の転換を体験されているでしょうか?
子ども食堂の再開のめどと展望
2020年7月14日の段階で、全国の子ども食堂の4割近くが、緊急事態宣言が解除されたあとも再開のめどが立っていません。
「NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」は、2020年6月25日までの1週間、全国の子ども食堂を運営する団体に、活動状況などについてアンケート調査を行い、37都道府県の238団体から回答を得ました。
新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出され、ほとんどの子ども食堂で子どもを集めた食事の提供ができなくなりましたが、調査の時点で、宣言解除からほぼ1か月がたっていたものの、「すでに再開している」と答えた団体は17%にとどまり、「まだ予定は立っていない」と答えた団体が39%に上りました。
理由としては、会場が狭く感染防止対策が難しいことや、会場として使っていた公民館などの施設が依然として使えないこと、などが挙げられています。
子どもたちがおしゃべりをしながら食事をして交流するという子ども食堂のあるべき姿が実現できないため、再開できない食堂が多い。感染の第2波も懸念される中、孤立する子どもが出ないよう食材の配布を続け、感染防止を行ったうえで、子どもが集まり交流できる形を模索したい。
「むすびえ」は、こども食堂が全国のどこにでもあり、みんなが安心して行ける場所となるよう環境を整えることを目的としていて、将来的には、全小学校区(現在19,892校。文科省「学校基本調査」より)に対して1つ以上のこども食堂がある状態を目指しています。
子ども食堂の最終的なゴールはソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)
子ども食堂のような、多世代交流拠点が社会的に有用なのだという理解を広めて、公的なお金が使えるような流れを作り、世の中のインフラとして制度を整えていきたいと思っています。
子ども食堂というネーミングではありますけど、子ども食堂は子どものためだけではなく、子育て中の親、高齢者、引きこもりの若者などにとっても居場所として価値あるものなのであって、地域共生の本丸ではないかと、私は考えています。
さいごに
食事を通して子どもたちと地域をつなぐための場を提供する子ども食堂は、その地域ごとの様々なニーズに対応し、様々な形の活動が実施されています。
記事でご紹介したように、食事を提供するだけにとどまらない子ども食堂の活動は、地域の子どもの居場所作りに貢献しています。
居場所による支援は、子どもの学習理解度や対人関係、自己効力感などに効果があり、保護者と子どもの関係においても前向きな変化が見られます。
子ども食堂はすでに6小学校に1箇所の割合で存在していることに驚いた読者も多いことでしょう。でも、依然として「貧困家庭の子どもを集めて食事させるところ」との誤解が消えませんよね。
朝日小学生新聞(2018年)や、インテージリサーチ(2019年)の調査では、子ども食堂の認知は約7割ですが、実際に子ども食堂に行ったことのある人は1割以下です。
対策として、東京おもちゃ美術館×むすびえ 「食べる・遊ぶ・笑うこども食堂」という取り組みが、全国47都道府県で始まろうとしています。東京おもちゃ美術館からは地域のおもちゃコンサルタントが子ども食堂に派遣されます。
全国展開に先駆けて、山口県の宇部市の子ども食堂「みんにゃ」では、木育として別記事でもご紹介したことがある体験型ミュージアム「長門おもちゃ美術館」(長門市仙崎)から、おもちゃの専門家「おもちゃコンサルタント」が参加し、子どもたちと昔ながらのおもちゃ遊びを楽しみました。なんと、子どもから高齢者まで439人が集まったそうです。
地域の人とのつながりによって救われるという体験を、是非、読者の皆さんにも味わって欲しいと思います。
「子ども食堂に一度行ってみよう」「子ども食堂の支援をしたい」と思われた読者は、以下のサイトで近隣の子ども食堂を探してみてくださいね。