祖父母と育児の仕方が違う時どうする?子育ての迷信・勘違い10選
スポック博士の育児法
一昔前、『スポック博士の育児法』が大変話題になった時期があります。インターネットがまだ普及していない頃、どの家にも出産祝いで頂いた『スポック博士の育児法』があったものです。今ではあまり聞きませんね。
ベンジャミン・スポック(1903~1998)は、アメリカの小児科医で、彼が書いた『スポック博士の育児書』(原題 The Common Sense Book of Baby and Child Care)の初版は1946年です。
この本は、世界中42か国語に翻訳され、5000万冊も売れるほど人気がありました。昭和55年には日本の母子健康手帳がこの育児書を参考にしてつくられました。
昭和45年~昭和55年に母親になった女性、すなわち、現在60~80歳のなかには、この育児書を参考に子育てをした人も多いです。
『スポック博士の育児書』に基づく育児法では、例えば次のようなことが主張されました。
- 赤ちゃんが泣いても、抱いてはいけない
- 決まった時間以外の授乳はしない
- 添い寝は自立心を損なう
- 寝る時間が来たら無理にでも寝かせる
- 赤ちゃんが泣いても放っておいて良い
- おんぶは良くない
- 母乳より人工ミルクの方がよい
- 母乳で育てるとおっぱいの形が悪くなる
- 日本人の座る生活は身体に悪い
- 反抗期になったら放っておけば良い
今では、スポック博士の言う抱き癖、添い寝否定、定時授乳は科学的に否定されています。その後、発達心理学の研究が進み、ローレンツ博士の「刷り込み理論」やボウルビイ博士の「愛着理論」などによって、スポックの育児法の間違いが明らかになったのです。
「愛着理論」に関しては別記事「アタッチメントと子育ての大切な関係」や、「発達障害は親のしつけが悪いからではない!!対処方法、アタッチメント障害との違いも解説」をご参照ください。
その他にも、子育てに関して、勘違いや迷信がたくさんあります。昭和の子育てと、現代の子育てでは「育児の常識」が真逆となっていることも多々あります。
実際、現在子育てをしているママやパパが、祖父母などに「抱いてばかりいると抱き癖がつくよ」と言われたことがあるのではありませんか?
NHK のすくすく子育て「みんなのつぶやき」に次のような相談が寄せられているので、引用してみます。
同居を始めた直後の自粛生活。
祖父母は、間近で見る私の育児に不満があるのでしょう。泣き叫ぶ子どもを落ち着かせようとした途端に、激怒されました。
子育ての迷信・勘違い10選
次に、親世代とぶつかってしまいがちな、子育てに関する迷信や勘違いについてお伝えしましょう。
1.泣くたびに抱っこしてはダメなの?
昔は赤ちゃんが泣くたびに抱っこすると抱き癖がつくとよく言われました。しかし、今は、泣いたらすぐに抱いて安心させてあげる方がいいとされています。オキシトシンという愛情や信頼を育むホルモンが、スキンシップによって分泌されることもわかっています。
2.大人が噛み砕いたものを食べさせてもいいの?
昔は、大人が噛み砕いたご飯を離乳食としてあげていたという人も多かったようですが、これは赤ちゃんの虫歯の原因になってしまいます。
3.赤ちゃんが裸足は良くないの?
床暖房や空調が整い、昔よりもずっと暖かくなった室内では赤ちゃんに靴下を履かせる必要はありません。フローリングでは靴下を履いていると滑って危ないことがあります。
4.お風呂上がりはベビーパウダー?
昔はベビーパウダーがあせも予防になるとして推奨されていました。でも、エアコンで温度調節がしやすくなった現代では、必ずしもベビーパウダーをはたく必要は無くなりました。ベビーパウダーのつけすぎで毛穴が詰まってしまうことがあるので注意が必要です。
5.1歳までに断乳?
昔は母子健康手帳に1歳までに断乳するようにと書かれていました。離乳食に早く慣れ、虫歯にもなりにくいと考えられていたようです。現代でも親の都合で早くから断乳が必要な場合もありますが、全員が1歳までに断乳させた方がいいというのは間違いです。
6.砂糖よりもはちみつがヘルシーなの?
はちみつは1歳未満の赤ちゃんには絶対に与えないように指導されている食品です。はちみつを赤ちゃんに与えてしまうと、はちみつに含まれる「ボツリヌス菌」が赤ちゃんの体内に入り、「乳児ボツリヌス症」という中毒症状を引き起こす場合があるためです。ボツリヌス菌は加熱でも死なないので、料理の味付けに使うのも危険です。
7.歩行器を使うと早く歩くようになる?
昔は歩行器を使うのは良い歩行訓練だとされていましたが、現代ではハイハイが赤ちゃんの成長に重要な役割を持つことがわかっています。
全身の筋肉を使うハイハイは、全身をバランスよく発達させるために必要なので、広いところでたくさんハイハイをさせましょう。体だけでなく、脳の発達にとっても大変重要です。
8.おむつは1歳前後でとるべき?
昔は、おむつは1歳前後で取れるようにするのが常識でしたが、今は子どもの成長に合わせてゆっくり進めるようになっています。
9.3歳まではママは家にいた方がいい?
子どもは3歳までは母親の手で育てないと、子どものその後の成長に悪影響を及ぼす、という「3歳児神話」ですね。これに関して、厚生労働省は「少なくとも合理的な根拠は認められない」という見解を出しています。
10.うつぶせ寝をさせると頭の形が良くなる?
うつぶせ寝は頭の形が良くなる、顔の彫りが深くなるなどと言われていましたが、今では、うつぶせ寝は歯並びやかみ合わせへの影響が大きく、将来、歯科矯正などが必要になる場合もあったり、乳幼児突然死症候群を起こす危険性があると言われています。
さいごに
記事でお伝えしたように、子育ては勘違いや迷信など科学的根拠の薄い情報が多くあります。
時代とともに、子育ての環境(気候や住環境)や社会も変化し、30年前に大丈夫、安全だったという事実は現代の子育てには当てはまらないことも多々あるということを、親も祖父母世代も知って、助け合いながら子育てができると良いですね。
子育てだけでなく、世代間の価値観の違いを乗り越えるには、かなりの努力や忍耐が必要になってきます。同居となると、なかなか難しいかもしれませんが、親世代との違いを認めて全面否定しないほうがいいかなと思います。互いへの敬意を忘れず、「違いはあるけど尊重しよう」という気持ちが大切ではないでしょうか。