子どもにたくさん「アハ!体験」を!
アハ!体験とは?
アハ体験(Aha-Erlebnis)とは、知らないことにたいして、「そうだったのか!わかった!」と、瞬間的に「ひらめく」という意味の心理学用語です。
木からリンゴが落ちるのを見たニュートンが、万有引力をひらめかせたという逸話が有名ですね。
もともとドイツ語ですが、英語の“a-ha“という表現がよく使われ、”Aha! Moment”とか、”Aha! Experience“と呼ばれます。
日本では、脳科学者の茂木健一郎氏がアハ体験を広めたことをご存じの読者も多いでしょう。
アハ体験の特徴
1907年、ドイツの心理学者、カール・ビューラーが提唱したアハ体験には、以下のような特徴があります。
- アハ体験は、突然起こること
- アハ体験によって、知覚した問題はすぐに解決されること
- アハ体験の後は、ポジティブな、肯定的感情に包まれること
- アハ体験したことを、強く信じること
茂木健一郎氏によれば、アハ体験によって脳の神経細胞が活性化し、「一発学習」が行われ、頭の回転が良くなり、まるで世界が変わったようになる、とのこと。
アハ体験は、日常で意識的に経験することは難しいのですが、だまし絵や間違い探しで2枚の絵の違いを発見したり、なぞなぞなどでアハ体験をすることができます。
興味がある方は、別記事「幼児におすすめのクイズ・なぞなぞ20選!子どもへの効果は?」をお読みください。自分で質問を思いつかない時に役立つ本を何冊かご紹介しましょう。
大変面白いなぞなぞが掲載されていて、まさにアハ体験できます。最近、TVゲームばかり子どもがしていて、イライラしているママも多いことでしょう。
このなぞなぞブックは家族と家で過ごしたり、旅行の時に持っていくといいですよ。
コメントにあったアハ体験をご紹介します。
問題を見て「なんだこれ?」と思い、答えを見ると「あーなるほどね!」と感動しました。
290のなぞなぞが、ひらがなで書いてあるので、文字が読めるようになった子どもは、自分でも楽しめますよ。
本嫌いの子どもが、とっぷりはまってしまったとか。進級祝いや、自宅で過ごす時間が多い今、最適ですね。
少し難しいものもありますが、2000もあるので、たっぷり遊べます。
「アハ体験」がもたらす効果
脳科学的には、アハ体験によって脳細胞が活発に働くようになり、日常のものごとに対して鋭い感覚や、豊かな感受性を持てるようになります。いわゆる「脳トレ」ですね。
「わかった!!」と、アハ体験によってひらめいた瞬間、心が緊張から解放され、とてもうれしい気分になります。精神浄化作用があって、気分がスッとします。
どうすれば「アハ体験」を得やすくなるの?
①つながりを見つける
ひらめきには、一見何の関係もなさそうなもの同士が、突然頭の中で結びついて生まれることがあります。異なるものの共通点を探したり、関係ないものをつなげて考えたりする習慣を付けるのです。
②必要性を求められる環境を用意する
例えば、小さいころの公園を想像してください。よくある公園は大した遊具もなく、すぐに飽きてしまいます。しかしながら子ども達は、「どうにか面白いことができないか?」ということを考え、大人が考えてもみないようなユニークな遊びを思いつきます。これが「必要性を求められる」ということです。
③リラックスをする
もし一生懸命考えても全くひらめかない時には潔く諦めて、脳と頭を和らげてリラックスしていきましょう。
アハ体験に必要な4つのステップ
次に、アハ体験を引き起こすための4つのステップをお伝えしましょう。それは、準備期、温め期、ひらめき期、検証期です。
一つずつ、見ていきましょう。
1.準備期
この時期は、解決するべき問題に焦点を合わせて、あれやこれや試行錯誤を繰り返していく段階です。洞察学習(後述)ともいわれ、問題に対して真摯に向き合えるかが試されます。一番重要な時間です。
2.温め期
準備期の次に現れるのが、温め期です。ここでは、準備期に蓄えた経験などを温め、ひらめきへと導くことが目的になります。
1つ前の準備期で得られた情報を見直し、整理、統合、観察することで、脳内から新たな創造や発見を引き出します。
そしてここで生きてくるのが、準備期に蓄えておいた「良い失敗」です。問題について日ごろから常に考え続けることが大切です。
3.ひらめき期
準備期、温め期を経て、ついにひらめきが訪れる嬉しいゴールのステップです。
4.検証期
この最後のステップは、ひらめいたアイデアを検証し、実践に移す時期です。アイデアは、実際に試さなければ本当に役に立つのかわかりません。
繰り返しますが、ご紹介した4つのステップの中で一番大切なのは、準備期と温め期です。それを、教育では洞察学習と呼んでいます。
洞察学習って?
洞察学習と聞いて、すぐ思い出すのが、有名なケーラーの「チンパンジーとバナナ」の研究です。
簡単にご説明しましょう。チンパンジーを檻の中に入れ、檻の外の手の届かない場所にチンパンジーの好物のバナナを置き、チンパンジーの手の届く範囲に短い棒を置きました。
そして、檻の反対側の外に、長い棒を置きました。
何匹かのチンパンジーは短い棒を使って、届かない場所にあるバナナを引き寄せようとしましたが、失敗!(これが良い失敗と呼ばれるものです)そして、イラつき、乱暴な行動をしました。
しかし、チンパンジーはしばらく、檻の中を歩き回ったり、周囲を見回したりしているうちに、突然短い棒を使い、檻の外の反対側にある長い棒を手繰り寄せ、そして、その長い棒を使って目的のバナナを手に入れることに成功したのです。
ケーラーはこのチンパンジーの行動は、考え抜いた結果、すなわち、洞察した結果であると考えました。
まさに、アハ体験の準備期、温め期の重要性を証明していますね。
この洞察学習は「解決行動が突然現れる」ことが特徴で、アハ体験と共通しています。また、同じ状況に立った時にも解決策は繰り返され、消えにくい傾向にあることが研究によって示されています。
さいごに
いかがでしたか?アハ!、そうなんだ!と納得していただけましたか?思えば、人間は大昔から道具を作り出し、火を発見し、いろいろな発明をしてきました。
まさに、洞察学習を繰り返してきたのですね。