乳幼児の感染対策!新型コロナ以外にも怖い、乳幼児のウイルス・細菌感染症
ウイルス性と細菌性の感染症の違い
子どもの感染症では細菌感染は比較的少なく、ウイルス感染の方が多いようです。
一般的にはウイルス感染のほうが軽症で済むことが多く、細菌感染は、高熱が続き、ぐったりするなどの症状が見られることもあり、入院が必要なケースも少なくありません。
ウイルス感染はインフルエンザなどを除き、ほとんど特効薬がなく、症状を和らげる対症療法が中心になります。
ウイルス感染が長引くと、細菌感染も併発するなど、混合感染を引き起こすこともあり、とくに乳幼児は注意が必要です。
ロタウイルス胃腸炎とは?
ロタウイルス胃腸炎の潜伏期間は1~2日で、下痢、嘔吐、発熱、腹痛などの重い症状が出ます。
脱水症にもなりやすく、熱性けいれん、胃腸炎関連けいれん、意識障害、重い脳炎など合併症を起こします。
下痢は水のような状態で回数が多く、白っぽい便が出ることもあります。(乳幼児に下痢止めは投与すべきではないとされています。)
また、ロタウイルス胃腸炎は、38%の割合で後遺症もあったという報告があります。
子どもがロタウイルスに襲われた時の恐怖を次のように語る体験者がいます。「39℃の高熱が一週間続き、ぐったりして、手や腕が硬直し、うわ言まで言い出した…」「脱す症状でお腹がぺたんこになった」このように、ロタウイルス胃腸炎は体験談を聞いただけで震え上がるほど怖いウイルスです。
ロタウイルスによる胃腸炎は非常に感染力が強く、世界中の全ての子どもが一度はかかる感染症といわれています。特徴は、初めてかかった場合に重症化しやすいことです。
途上国では、5歳以下の子どもの主要な死亡原因のひとつで、年間に約20万人もの乳幼児が、ロタウイルス胃腸炎で死亡しているという報告もあります。
ロタウイルス胃腸炎の発症のピークは、生後6か月~2歳です。ほぼ全ての乳幼児が3~5歳までに感染し、発症するとされています。
症状が回復しても、1週間は便にウイルスが排泄されます。オムツはしっかり密封して捨て、石けんでの手洗いを励行し、タオルの共有を避けてください。
便や嘔吐が付着したものの消毒には、加熱するか、ハイターなど次亜塩素酸ナトリウムで処理しましょう。
消毒に関しては下記記事をお読みください。
受診のときに医者に伝えること
医療機関を受信するときは、以下の項目をメモにして、医師に見せましょう。
- 熱の経過(朝・昼・夕・寝る前にチェック)
- 呼吸の音や状態・咳の様子やひどくなる時間帯・嘔吐や下痢の状態(便の状態・回数)・尿の有無・どこか痛がるか・けいれんの有無や意識の状態
- 前の日に食べた物は何か
- 園・近所・家庭での感染症の流行状況
- これまでに受けた予防接種の種類と回数(母子健康手帳を持参するといいですね)
ロタウイルスワクチンは朗報
2011年からは、日本でも任意接種となっていたロタウイルスワクチンが、2020年10月から定期接種化されます。
これまで高額だった(2回接種で)3万円ぐらい)だったロタワクチンが無料となることは朗報ですね。
このワクチンを接種しても、感染そのものを100%防ぐことはできませんが、症状が重症化することの予防が期待できます。
接種スケジュールは、生後2か月(8週)からで、定期接種の対象は20年8月以降生まれです。20年7月までに生まれた赤ちゃんは、残念ですが従来どおり有料です。
予防接種を受けるにあたって、注意しなければならないのは、初回ワクチン接種が生後15週以降になると、「腸重積(ちょうじゅうせき)」を引き起こす場合があります。
腸重積とは腸の中に腸がもぐり込んで重なってしまう病気で、一般的に生後3か月~1歳で発症します。
もぐり込んだ腸が締め付けられるため、血液が十分に行かなくなったり、血便が出たりすることもあり、もぐり込んだ時間が24時間を超えると、開腹手術が必要になる可能性が高くなることも覚えておきましょう。
以下のような腸重積を疑う症状が見られたら、迷わず医療機関を受診しましょう。
- 顔色が悪い
- ぐったりしている
- 15~30分おきに不機嫌な様子を繰り返す
- 何度も嘔吐を繰り返す
- 血便が出る
インフルエンザ、コロナ、風邪の見分けは?
インフルエンザ、コロナ、風邪は似たような症状があるため、見分けるポイントがあると、親としては助かりますね。しかし、見分けることは医者でもなかなか難しいようです。
黒澤照喜小児科医師(帝京大学医学部附属溝口病院)は、次のように新型コロナウイルス感染症、インフルエンザ、風邪にみられる小児の典型例を紹介していらっしゃいます。
新型コロナウイルス感染症の場合
一緒に住むパパが新型コロナウイルスに感染。子どもは元気で、発熱、せきはほとんどなし。しかしPCR検査を受けたところ陽性と判明。
インフルエンザの場合
保育園でインフルエンザが流行。39~40℃の発熱が続き、翌日、病院で検査を受けてインフルエンザと判明。抗インフルエンザ薬を飲んで、翌日には解熱。しかし解熱と同時にせきや鼻水が出始め、完全に治るまでに2週間ほどかかった。
風邪の場合
3歳の上の子にせき、鼻水の症状がみられ、しばらくして下の子も39℃の発熱とせき、鼻水が出始める。夜になると熱が上がり、朝は37℃台まで下がる。3日目ぐらいに平熱に戻るが、せき、鼻水が1週間以上続く。
さいごに
この記事では、ロタウイルス感染症について詳しくお伝えしました。ロタウイルス感染症は、1回かかったからといって一生続く免疫を得ることができませんが、何度もかかると次第に症状は軽くなっていきます。そのため、ワクチンで重篤化が防げるというわけです。
新型コロナウイルスの感染を心配して、インフルエンザの予防接種を受けに行くのが不安なママやパパも多いのではないでしょうか。予防接種専用の時間帯や別室を設けている小児科もあるようなので、探してみましょう。
また予防接種を受けに行くときは、つきそいはできるだけ大人1人にし、マスクを着用し、待合室でも人との距離を保ち、大声で話さないようにするといった予防策をとることが大切です。
参考:日本小児科学会:日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール「ロタウイルスワクチンの初回接種時期について」(第2版)