語彙力がぐんぐん育つ!“辞書引き学習”のススメ
辞書引き学習とは?
辞書といえば、分からない言葉があった時だけに使うもの。そう決めつけていませんか?
一般的に子ども向け国語辞典の収録語数は15,000~30,000語。これだけの言葉がつまった辞書は言葉の宝箱ともいえる貴重な存在です。辞書引き学習とは、この辞書を使って、子どもの語彙力を伸ばす学習方法を指します。
辞書引き学習は、中部大学の深谷圭助教授が1990年代から開発・提唱してきた学習方法です。深谷教授自身が、実際に公立小中学校に勤務していた頃から、現場で実践してきました。
現在の学習指導要領上では、小学校の授業で辞書の指導を行うのは小学3年生からですが、辞書引き学習では、言葉に興味を持つ小学1年生頃が最適な時期とされています。
辞書引き学習の方法
では、実際にどう進めていくのか、具体的な方法を紹介しましょう。
準備をする
辞書引き学習に必要なものを準備します。まず1つめが紙の辞書。
一般向けではなく、小学生用の国語辞典を購入しましょう。なぜなら、小学生用の国語辞典には「ふりがながふってある」「文字が大きい」「図や写真が豊富」など、子供が使いやすい工夫がされているからです。
ぜひ子どもと一緒に書店に足を運び、子ども本人に一番気に入った辞書を選んでもらいましょう。
語彙数が多い一般向けの辞書は、長く使うことができるため、一見コストパフォーマンスが良いように思えます。しかし、全くの初心者の子どもにとっては、使いこなすのは至難の業。辞書に対して「よく分からない難しいもの」というネガティブな印象を子供に与えかねません。
そうなると、語彙を伸ばす以前に、辞書に触ることも嫌がるようになってしまいます。子供には年齢に応じて、適切な辞書を用意しましょう。
ケースは外して、手にとりやすい場所に!
そして、辞書を購入したら、ケースは外して、すぐに手にとりやすい場所に置きます。ケースに入っていると、わずらわしさを感じ、手に取る機会は減ってしまいます。
見た目のきれいさよりも、子どもが「使いたい!」と思った時に、すぐに使える状態にすることが大切です。
ポイントは”付箋”
2つめが付箋です。
辞書引き学習では見つけた言葉のページに付箋を貼っていきます。辞書引き学習専用の付箋が市販されているので、それを使用してもいいですし、一般的な付箋を使用してもどちらでもかまいません。
両者の違いは、専用付箋は辞書に貼りやすいサイズと空欄が考慮されたデザインになっていることと、通し番号のつけ忘れを防ぐために「番」という文字があらかじめ印字されていることの2点です。
市販の付箋でも専用付箋のサイズ(65mm×25mm)とほぼ同じくらいのサイズであれば、遜色ありません。
我が家ではどちらの付箋も使用しましたが、私も子どもも使い勝手に際立った違いは感じませんでした。
いよいよ辞書を引こう!
子どもに知っている言葉や好きな言葉、聞いたことがある言葉を探してもらいます。
辞書の引き方を教える必要はありませんし、言葉の意味を読む必要もありません。辞書引きに慣れてきて、子どもの中に「知りたい」という興味が湧けば、自然と読むようになっていきます。大切なことは「子どもが」「自由に」探すことです。
言葉を見つけたら、そのページの上に付箋を貼ります。付箋には、通し番号と見つけた言葉の2つを書いておきます。通し番号を毎回書くのが面倒であれば、その日の辞書引き学習を始める前に、あらかじめ通し番号だけさっと書いてしまうのもおすすめです。こうしておけば「えーっと、次は何番だっけ?」と考えたり、そもそも番号を書き忘れるということがありません。
付箋を貼ることで、自分が調べた言葉の数が目に見えて知ることができ、子どもは「これだけできた!」という達成感を感じることができます。
子どもが言葉を見つけたら、褒める声かけをしましょう。
「こんな言葉を知っているの?すごいね!」
「教えてくれる?」
など、子どもがもっとやりたいと思えるような、ポジティブな声かけであればなんでもOK。
1日に決めた数を貼り終えたら終了です。
子どもがもっとやりたいと言えば、さらに追加してもいいですし、疲れた様子であれば早めに切り上げても大丈夫。子供の様子を見ながら臨機応変に対応しましょう。
目安は1日10分、付箋10枚。辞書引き学習では、子どもの自主性に基づいた遊び感覚の調べ学習が目的なので、無理強いや強制は厳禁です。
辞書引き学習の4つの効果とは?
辞書引き学習にはどのような効果があるのでしょうか?ここでは4つご紹介します。
語彙力が上がる
辞書引き学習をする度に言葉を調べるので、当然、知っている言葉の数が増えていきます。さらに、開いたページを眺めていると「あ!これも知ってる」「こんな言葉あるんだ」と、調べた言葉だけではなく、その周辺の言葉も知ることができます。
調べることを面倒だと思わなくなる
辞書引き学習を続けると、調べることに対してのハードルが下がります。大人でも知らないことを調べるのは億劫に感じることがありますよね。しかし、辞書を引くことが習慣化して早くなってくると「分からな言葉がある」→「辞書で調べる」という作業は当たり前のこととして、サッとできるようになります。
分からないことをそのままにせず、その都度調べる癖をつけると、今後の人生において重要な武器になります。
「知りたい!」という気持ちが育つ
辞書引き学習を通して、子供は知らないことを知った時の喜びを実感します。
それがさらに「これって何?知りたい!」という好奇心を掻き立てます。この経験を積み重ねることで、どんどん自分から新しいことを吸収しようという姿勢が身についていきます。
言葉を通じたコミュニケーションが増える
辞書引き学習をするときは、可能な限り、隣で見守ることをおすすめします。
褒めるだけではなく「どんな言葉を調べたのか」「どこで知ったのか」など、言葉を通じて子どもの話に耳を傾け、辞書を引くことの楽しさを子どもと一緒にシェアしましょう。
そうすることで、子どもとのコミュニケーションが増え、辞書引き学習が親子の楽しい時間になります。
【実例】我が家の辞書引き学習
我が家の例を紹介しましょう。私が子ども達と辞書引き学習を始めたのは、長男が小1、長女が年長の頃です。同じ辞書を1人1冊買い与え、私も一般向けの辞書を自分に1冊購入しました。
毎日、勉強の時間になると3人で机に並んで辞書引き学習を開始。お互いに調べた言葉や意味を報告しあい、わきあいあいとした雰囲気で進めました。できるだけ子ども達が楽しめるように、私はあえて「カレーライス」「カブトムシ」など子どもが好きそうな言葉を選択。1日10分程度ですが、子ども達と笑い合った楽しい時間でした。さらに、かわいい物好きな長女のために、付箋はたくさんの色を用意。「今日は緑にしようかな」「このページはピンク!」などと、楽しそうに付箋を貼っていました。
辞書を使ったゲームで盛り上がる
ここで1つ、我が家の子ども達が好きな、辞書を使ったゲームを紹介します。1人がある言葉の意味を読み、それが何の言葉なのかを他の人が当てるのです。
例えば、問題が「砂漠の多い地方に住む動物で、毛は薄茶色、背中にこぶがある」であれば、答えは「らくだ」。これを早押しクイズにして出していきます。
できるだけ簡単で子ども達の身近にある言葉を選ぶと、とっても盛り上がって楽しいですよ。
読み書きができたら年中でもOK
その後、年中になった次男にも辞書を用意。その頃には、長男長女は辞書引き学習は卒業していたので、次男と私の2人で辞書引き学習を始めました。年中で始めた理由は、すでにひらがな・カタカナの読み書きができていたから。
辞書引き学習は一般的には小学1年生頃開始とされていますが、私の経験上、ひらがな・カタカナの読み書きができていれば、未就学児でも十分可能だと思います。
現在、3人の子ども達の辞書には、たくさん付箋がついています。さすがに1000枚貼ることはできませんでしたが、分からないことがあると辞書を引くという習慣がつき、漢字辞典や類語辞典も抵抗なく使うことができているので、辞書引き学習を取り入れて良かったと思っています。
さいごに
辞書引き学習のポイントは、本来であれば、知らない言葉を調べるために使う辞書を、知っている言葉を探すために使っている点です。新しい発想でおもしろいと思いませんか?私は子ども達に辞書を手渡す時に「辞書はすごく物知りなんだよ。友達だと思って大事にしてね。」と言いました。辞書が友達になると、嬉しいことがいっぱい。興味を持ったら、ぜひ辞書引き学習を始めてみませんか?