ウィズコロナで変わった子どもたちの食生活
増加した「自宅での食事」
電通「食生活ラボ」の調査によると、緊急事態宣言後、「自宅での食事」(59.7%増)や「家族と一緒に食事をする機会」(41%増)、「自分で料理をする機会」(31%増)が増えました。
ビフォアーコロナの問題点だった「孤食」
家族の食事の時間は、子どもとコミュニケーションをとる貴重な時間です。しかし、新型コロナが蔓延する以前は、親は仕事、子どもは習い事などで忙しく、毎回食事を一緒に摂ることはできにくい状態でした。
厚生労働省による全国家庭児童調査(平成21年)では、1週間のうち家族そろって一緒に夕食を食べる日数は2~3日(36.2%)で、朝食はほとんど一緒に食べない(32.0%)が最多でした。
その背景としては、共働き家庭や核家族の増加があげられ、一つ屋根の下に住んではいるものの、家族のスケジュールがバラバラの家庭も多かったのではないでしょうか。
孤食(本当は家族と一緒に食事をしたいのにできない状態)が、ビフォアーコロナでは問題視されていました。
孤食の弊害として、家族間のコミュニケーションが減るばかりではなく、好きなものばかり食べて栄養が偏ったり、肥満の原因になったり、情緒不安定になり、心の病気を誘発しやすいことが指摘されていました。
ニューノーマル社会で増えた「共食」
2020年3月を境に、私たちの生活は大きく変わりました。新型コロナと共存していかざるを得ない現在、私たちの関心や配慮は、安心・安全意識と健康へと大きくかじを取りました。
新しい生活で健康管理・体力づくりや、家族との時間の確保を重要視する人が約4割いるというデータもあります。
食事を一緒に摂る共食は健康的で規則正しい食生活を育み、正しい生活リズムをつくるために、とても大切です。
子どもの孤食は体調不良になりやすい?
奈良女子大学共生科学研究センターの佐々尚美教授の研究によると、子どもだけの食事をしている子どもは、大人と一緒の食事をしている子どもよりも体調不良を訴える割合が高かったことが報告されています。
また、大人と一緒に食事をする子どもは、食事中の会話量が多く、食事を「楽しい」「とても満足」「待ち遠しい」と感じる割合が高く、手伝いが好きな子どもが多く、「朝しっかり食べる」「野菜をたくさん食べる」「好き嫌いをしない」などを心がけていました。
さらに、お茶の水女子大学生活科学部の松島悦子先生は、「大事なのは、共食の頻度よりも中身が大切だ」といいます。
たとえ、家族全員がそろって食事をしたとしても、テレビを観ながら食事をしたり、誰かがスマホを見たりしたりしていませんか?少し耳が痛いorioriユーザーも多いのではないでしょうか。
ニューノーマルでは黙って食事をするような政府からのアドバイス(?)も見かけましたが。会話がなければ楽しい食卓とは言えませんよね。
とはいっても、親の職業にはさまざまなものがあります。医療従事者など就業時間が不規則で、夜間に働いている場合は、いつも一緒に食事ができるとは限りません。できる範囲で、一緒に食事をする時間を充実させていきたいものです。
みんな、自宅では何を食べている?
新型コロナ禍のなか、おうち時間で、どんなものを各家庭で食べていたのだろう?と関心はありませんか?小麦粉などが店頭から消えた時期もありましたね?
以下のグラフを見てみましょう。
これは、株式会社リンクアンドコミュニケーションが行った、「新型コロナウイルス流行下での生活習慣の変化」に関する調査で、主食のメニューについて分析したものです。分析期間は、2020年1月19日(日)~2020年4月18日(土)です。
2020年1月に比べて4月に10%以上増加したメニューは、炊き込みごはん(39%増)、焼きそば(36%増)、ピザ(25%増)、チャーハン(18%増)、お好み焼き・たこ焼き(17%増)の5メニューでした。
増加したメニューは、一度にたくさん作れて、取り分けて食べることができ、子どもが好きで、家族一緒に食べられ、短時間で作ることができるという共通点があります。
朝からお好み焼き、たこ焼き??と笑ってしまいましたが、きっとホットプレートが大活躍して子どもたちが手伝って楽しくたべたのでは?と、微笑ましい気持ちにもなりました。しかし、炭水化物が多いのは気になります。
一方、一人で食べられる、おにぎり(20%減)やお寿司(28%減)は、大幅に減っています。
この状況を専門家はどう見ているのでしょうか?
女子栄養大学の武見ゆかり教授は、次のようにコメントしています。
摂取割合が増えた主食のトップ5、すなわち、炊き込みごはん、焼きそば、ピザ、チャーハン、お好み焼き・たこ焼きは、いずれも複合的な料理(穀類の主食に、肉や卵など主菜の材料と、野菜などが一緒に入った料理)で、とくに朝食と昼食で増えています。
一方、白米と食パンの摂取状況は、ほとんど変化が見られません。白米や食パンは、主菜や副菜などのおかずの料理と一緒に、組み合せて食べる主食です。
今回の分析は、主食のみに限定しているので、それ以外の料理との組み合わせはわかりませんが、上記の複合的な主食の食事では、他のおかずがなく、それだけで食事を済ませている場合があると推察されます。
その場合、十分な野菜やたんぱく質源の食品がとれているのか、気になります。また、これらの複合的な主食が、家庭で作ったものか、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で買った中食なのかは不明ですが、買った中食の場合は、食塩摂取量の問題も懸念されます。
中食を利用する際は、カロリー表示と共に、食塩相当量の表示を見る癖をつけましょう。1日の食塩相当量の目標量(上限)は、男性7.5g、女性6.5gです。中食でやや食塩相当量の多い食事を食べたら、次の食事では減塩を心がける等、1日の中でバランスをとるようにしていただきたいと思います。
さいごに
以上、ウィズコロナで変わった子どもたちの食生活状況をお伝えしてきました。読者の皆さんのご家庭でも、同じようなことが展開されたのではないでしょうか?
食生活以外でもウィズコロナの生活では、「今まで当たり前だったことに対してより感謝するようになった」と70%以上の人が答えています。
そして、「困難を抱えている人を助けるのは国民全員の義務だ」と思う人も60%を超えています。新型コロナは私たちのSTGs意識を一歩前進させてくれたようです。(参考:『コロナ禍』における生活者意識調査~ACR/exパネル調査)
家族で食卓を囲んでコミュニケーションを図ることは、親の仕事やお互いの考えを知る絶好の機会ですね。学校が再開され、日常が戻りつつありますが、新型コロナがもたらした良い遺産は続けていきたいと思います。
参考
参考:『コロナ禍』における生活者意識調査~ACR/exパネル調査より~
https://www.videor.co.jp/files/pdf/200618release_acr.pdf
「新型コロナウイルス流行下での生活習慣の変化」リンクアンドコミュニケーション
https://www.linkncom.co.jp/news/press/310/