【海外教育】ロシアの子育て・教育事情
ロシア連邦ってどんな国?
ロシア(Russian Federation)は、1991年末のソ連解体によって新たに成立した連邦です。
日本の約60倍という広大な国土に約1億4593人(2020)が暮らしています。
気温の年較差が大きく、冷帯に分類される地域が大半を占め、冬はシベリア付近で放射冷却のために気温が著しく下がり、北半球でもっとも寒い地域です。でも、夏季には最高気温が30°Cを超えることもあります。
ロシアの子育て事情
ロシアの祖父母は、孫の世話を積極的にする「バーブシカ(おばあちゃん)現象」と言われる伝統があります。
ロシアでは有給の産休を最大で3年取ることができますが、多くの女性は、子どもが1歳~1歳半になると職場に復帰し、父親も育児休暇を1年半まで取れますが、実際に利用している父親は多くないようです。
母親手当とは?
2007年、子どもを2人産んだ家族は、平均年収の2倍分という大金がもらえるという「母親資本」(マテリンスキー・カピタル)制度を導入しました。
2020年1月、プーチン大統領は母親手当を拡大し、第一子から支給、第二子分の金額を増やす計画を発表しました。
2020年1月1日以降に誕生または養子にした第一子について、466,617ルーブル(約76万円)、第二子以降は616,617ルーブル(約100万円)支給されます。これは一軒の家が建てられるほどの額だそうです。
母親手当の使い道は、スポーツクラブや語学スクール、バレエスクール、音楽教室、プログラミング教室などの習い事や教育費にはもちろん、住宅の建築や改築などにも利用することができます。
ロシア年金基金によると、母親手当を住居購入に充てている人が多いようですが、日々の生活費に当てるわけにはいきません。
ロシアの教育事情
ロシアの教育制度は4・5・2制で、小学校は4年間、中学校は5年間、高校は2年間です。学年を1~11年生で通して数えます。この記事では就学前と小学校教育に焦点を当てましょう。
就学前
教育機関は国立と私立に分かれ、国立機関での教育は無料です。ロシアの幼稚園は3歳から始まり、朝7時ごろから夜7時くらいまで預けることができます。
また、小学校同様、幼稚園も朝・昼・夕と3食つきなので、働く親にとっては大変有難いですね。
外で新鮮な空気を吸わないといけないという考え方が強くあり、散歩はどんなに寒くても毎日1時間くらいはあります。
また、幼稚園では、しつけ教育が徹底されていて、3歳児でも自分のロッカーがあり、冬用のコートを着たり、ブーツを履いたりなどは自分でしなければなりません。
ロシアの義務教育
ロシアではスタートラインから教育に対する考え方が日本と大きく違っています。
通常は9月1日に6歳6ヶ月以上になった子どもが小学校に入学しますが、子どもの発育や個性に合わせて入学の年齢を決めることができます。
そのため、6歳のための「1年生」、7歳のための「1年生」があり、7歳クラスは、4年生を飛ばして3年生から5年生に上がります。
中には5歳で入学する子どももいたりするため、1時間の「昼寝」タイムもあるようです。
このように、ロシアでは小学校入学の年齢はかなりあいまいで、子どもの状況を見て親が判断するため、早生まれ/遅生まれのもたらす問題はないようです。
11年生までクラス替えはなく、教授言語は基本的にロシア語ですが、民族固有の言語を教授言語に含めている場合もあります。
また、伝統的に教師が同級生の前で成績を公表します。最近ではオンライン評価が導入され、それも緩和されつつあります。
小学2学年から第一外国語の学習を始め、学校によっては5年生から第二外国語を履修させる所もあります。
ファクリタチフと呼ばれる選択科目としての外国語の授業は、成績表に特に残されないことも多く、日本語や中国語を学んでいる子どももいます。
学年度は9月1日~5月末までで、6月~8月の3ヶ月は夏休みです。
ロシアでは、小学校に入ると日本以上に厳しい教育環境や受験環境が待ち受けていて、有名私立小学校や有名公立小学校などは狭き門です。
ロシアの学校の教育方針は詰め込み式が主流とはいうものの、小学校でもIT化が進んでいて、電子黒板や一人に一台のタブレット端末が支給されています。
ユニークなロシアの教育といえば、プーチン大統領が共同執筆者になって教科書の作成に加わっていることがあげられます。
ロシアの小学生は全員、2016年から柔道の教科書「柔道芸術―遊びから技能習得まで」を受け取っています。
柔道は単なるスポーツではない。重道は哲学だ。年長者や対戦相手を敬う。重道は弱者のものではない。すべてに教育的要素がある。
ロシアの小中学生の83%、リモート学習により精神的な問題
最近、ロシア政府はデジタルの使用が子ども達の鬱を引き起こしているという科学的データの下、新型コロナ感染症流行により子どもがパソコンなどを使ってリモート学習をする場合の安全指針をまとめました。
ロシア国立小児健康医療センターの研究データによると、児童の42.2%にうつ状態が、また、41.6%に無力症が見受けられました。
コロナ禍でのリモート教育で、問題を生じることなく過ごすことができた子どもたちはアンケート調査の回答者のわずか13.4%でした。
以上はロシアの79地区の約3万人の児童にアンケート調査を実施した結果です。
「18歳未満の子どもの遠隔学習におけるデジタル環境の安全について」の中から、幼児期に関するものをご紹介します。
- 6歳未満の子どもが家庭での教育目的にコンピュータテクノロジーを使うことは全面的に禁止。
- 6歳から12歳までの子どもは家庭での教育目的にコンピュータテクノロジーの使用を最小限にすることを推奨する。
- 必要な場合は1日最大2時間とする(テレビを含めて)。
- Wi-Fiから作業場所まで5m以上離さなければならない。
- 家庭での遠隔学習にタブレットを使用するのは15歳以上の子どもに許容される。
- 18歳未満の、どの年齢の子どもも教育目的(読書や情報探索)にスマートフォンを使うことは完全にやめること。
- 読書や課題に当たるときは、すべての年齢の子どもは主に紙の本やノートを使うことを推奨する。
さいごに
ロシアでは、外気がマイナス10度でも、家の中に閉じこもるのではなく、すすんで子連れで外出するとは驚きですね。
育児は祖父母だけでなく、育児に積極的に参加する父親も増えていますが、日本同様、待機児童問題を抱えています。
ロシアでは14歳からアルバイトができますが、16歳未満の未成年者は、午後10時から午前6時までの間は一人で外にいることはできず、違反すると親が罰金、約80ドルを科されてしまいます。
デジタルの使用が子ども達の鬱を引き起こしているという科学的データには、筆者も正直ショックを受けました。
読者の皆さんは、ロシアの子育てや教育について、どのような感想を持たれたでしょうか?