学力アップに繋がる?自分を客観視する「メタ認知能力」
メタ認知とは
メタ認知とは「自分を客観視する力」のことをいいます。英語で「メタ」は「高次の」という意味があり、高い視点から自分や物事を客観的に認知するということです。これはアメリカのジョン・H・フランベルという心理学者が、1976年に定義した概念であり、本来は認知心理学で使われていました。
メタ認知は親や先生などの言葉や意見を受け入れることで育まれます。日頃から家庭でメタ認知を意識した声掛けを行ったり、子どもと一緒に物事を考えたりすることが大切です。
メタ認知能力にはどのようなメリットがある?
メタ認知能力を育てることでどのようなメリットが得られるのか見てみましょう。
感情のコントロールができるようになる
自分を客観視したり、物事について一歩下がった視点から見ることができるようになったりすれば、怒りや不安などの感情に対して冷静に対処し、自分をコントロールすることができます。これは、子どもが怒っている時に「自分は今怒っている。なぜ怒っているのだろう。どうしたら怒りが収まるのだろう」と客観的に考えることができるからです。
怒りや不安などのマイナスの感情をコントロールするのは、大人でも難しいことなので、最初から完璧にできるわけではありません。ましてや子どもなら、感情にまかせて行動してしまうことも多いでしょう。まずは、自分が怒っていることや不安を感じていることを自覚するのが大切です。自分の状況に気付き、感情を把握することからはじめていきます。徐々に自分を客観視し、感情がコントロールできるようになるでしょう。
問題を解決する能力が培われる
自分を客観視する力が身につくと、失敗や問題への解決策が、よりスムーズに見つけられるでしょう。「自分には無理だ」とか「どうせうまくいかない」などと思い込んで挫折せず、どこでつまずいたのか、なにが悪かったのかを考え、冷静に判断することができます。問題を一人で抱え込んだりせず、誰かに相談したり、協力してもらうなど、柔軟な対応で解決に向かうことができるようになるでしょう。
臨機応変な対応や判断ができるようになる
日常生活で起こるトラブルやさまざまな物事に対して、臨機応変に対応することができるようになります。起きてしまったミスに対しても、ミスの要因や今後同じミスが起きないよう、回避する方法などについて客観的に考えられるので、リスク回避能力の向上にもつながるでしょう。
メタ認知能力が高い子の特徴
メタ認知能力が高い子どもの特徴を見ていきましょう。
目的や目標を考えることができる
メタ認知が高い子どもは、行動を起こす前や勉強を始める際に、目的や目標を具体的に考える傾向があります。なんのために行動するのか、勉強するのかを考えて先を見据えた目的や目標を考えることができるため、結果にたどり着きやすいのです。たとえば「なんのために勉強をするか」を考えたときに「勉強しないと親や先生に怒られる」という感情面があります。それに加え「知識を定着させて成績をよくするため」や「受験対策で内申書の評価をよくするため」など具体的な目的を考え、目的に向かって自ら勉強できるのが特徴です。
目的や目標の達成に向けて具体的な方法を考える
メタ認知が高い子どもは、目的や目標を達成するために、適切な方法で進められているか客観的にチェックすることができます。たとえば前述のように、勉強をはじめる際に「知識を定着させて成績をよくするため」という目的を設定したとします。知識を定着させるためには、教科書を読むだけ、ノートを写すだけではなく、繰り返し問題を解いたりミスした箇所を復習し、理解したりすることが大切です。メタ認知能力が高い子どもは、このように自分で目的や目標に向けて、適切な勉強方法を考えることができます。また、ノートの書き方や内容の覚え方など、どのような方法が自分に合っているかなどを過去の経験から判断することもできるため、全体的な学習能力の向上が期待できるでしょう。
結果が成功しても失敗してもその要因について考える
メタ認知能力が高い子どもはリスク回避能力が高く、目的や目標に向かって適切な方法で進むことができますが、もちろん失敗してしまうこともあるでしょう。しかし、結果が失敗したからと言って悲観的にならず「なぜ失敗したのか」と、その要因について考察することができます。一度失敗しても次は成功するために要因を活かし、また挑戦するというポジティブな思考にもつながるでしょう。このような思考は大人になっても役立つので、メタ認知のメリットともいえますね。また、失敗に限らず成功した場合でも、振り返って「なぜ成功したのか」という要因を考察するので、次回に活かすことができるでしょう。
子どものメタ認知能力を育むための声掛け
前述した通り、メタ認知を培うには外部からの声掛けが効果的です。子どものメタ認知能力を育むために、パパやママがしてあげられることを紹介します。
学習計画表を作成し、記録する
子どもの学習計画表を作成することで、いつ、どこで、なにを、どのくらい学習するのかが明確になります。先を見据えた計画を用意することで、子どもが客観的に自分と向き合うきっかけにもなるでしょう。はじめて計画表を作成した場合は、計画通りに進められず失敗してしまうこともあります。しかし、計画を作成して実行し、失敗しても修正することを繰り返していけば、その子にあった学習量や学習方法を定めることが期待できるでしょう。
努力や成長を具体的に評価して褒める
子どもを褒める際に努力した過程に注目しましょう。ただ「すごいね!」など漠然と褒めるのではなく、どのような努力をしたから成功につながったのか、という具体的な評価を改めて確認することが大切です。子ども自身もなぜ成功につながったのか、メタ認知を働かせることができて、成功した経験を積み重ねることができます。
失敗の要因を子どもと一緒に考える
メタ認知を育むためには、子どもの失敗をただ叱るのではなく、なぜ失敗したのかを子どもと一緒に考えてあげることが大切です。まず、子どもがなにに対してどのように取り組んだのかを一緒に確認しましょう。そのなかから、取り組み方で失敗につながった要因を分析し、同じ失敗を繰り返さないためにはどうすればいいのか話し合うのが効果的です。経験の浅い子どもは、再びリスクの高い方法を提案する場合もあります。それが危険ではない場合や、その手段で試す時間がある場合には付き合ってあげて、再度検討するのもよいでしょう。
人の意見を聞く姿勢を養う
自分だけの考えから一歩下がって物事を見たり判断したりするためには、人の意見を聞くことも大事です。自分以外の視点や考え方を知ることによって、自分の考え方や特性、物事の捉え方の傾向などに気付き、より深く理解することができるようになるでしょう。その人や周りの意見が正しいかどうかを判断するのではなく、自分の考え以外にどのような考え方があるのかに重点を置いて、人の意見を聞けるようになることが重要です。そのためにもパパやママは、子どもの話を最後まで聞いてあげましょう。途中で間違っているなと感じても、話をさえぎって否定するのではなく、子どもが話し終えてからどうしてその考えにいたったのか、子ども自身の考え方を引き出してみましょう。逆に子どもから質問された際でも、可能な限り説明してあげることが大切です。理由を説明できない場合や、自身も答えが曖昧な場合は子どもと一緒に調べてみたり、話し合ったりするのがよいでしょう。
1日の学習を振り返る
学校で習ったことや宿題の内容など、その日の学習を振り返ることで子どものメタ認知を育むことが可能です。たとえば「今日はどんな勉強をしたの?苦手なことはあった?」などの声掛けによって、子ども自身が1日の学習を振り返り、把握することができます。また、子どもの成果に対して褒めたりポジティブな声掛けをしたりすることで、子どもの勉強へのモチベーションの向上が図れるでしょう。
さいごに
自分を客観視する「メタ認知」を培うことで、学習だけではなく人生のさまざまなシーンでメリットが得られます。メタ認知は親の声掛けで育むことができ、意識的に声掛けを続ければ、自ら考えて行動できるようになることが期待できます。日常生活に簡単に取り入れることが可能なので、子どものメタ認知能力を伸ばしてあげましょう。
参考サイト
- A.I.I.V.│「メタ認知」
〜基本概念〜 | A.I.I.V.(https://www.aiiv.jp/what-is-meta-cognition/) - 子供の成長を見守る教育サイト ココロコミュ│子どものメタ認知とは?~客観的に見る力を身につけよう!(https://cocorocom.com/column/detail/13/#content2)
- 東洋経済│5歳から育つ「メタ認知」が生きやすさを左右する | 子育て | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース(https://toyokeizai.net/articles/-/427991)