子どもに絶対音感が身につく!時期やトレーニング法、音感の違いまで解説
「絶対音感」と「相対音感」2種類の音感の違い
まず音感とは、音の高低を認識できる感覚のことです。
その音感には、音の高さの認識の仕方により「絶対音感」と「相対音感」の2種類に分けられます。それぞれの音感について説明するので、違いを見ていきましょう。
「絶対音感」とは?
「絶対音感」は、ある音を聞いたときにその音の絶対的な高さがわかる能力です。たとえば、絶対音感を持つ人は、ピアノの鍵盤を見ず音を聞くだけで、ドレミファソラシドのどの音が演奏されたのかがわかります。
さらに絶対音感があれば、風の音や雨の音などの自然の音を音階で表現できたり、耳で聞いただけの音楽を再現して演奏できたりします。
厳密に絶対音感と呼べるのは、ピアノの黒鍵を含めた鍵盤88個の音すべてを言い当てられる音感です。#(シャープ)や♭(フラット)のつかない白鍵の音だけ言い当てられる場合は、絶対音感には該当しません。
「相対音感」とは?
「相対音感」は、音と音とがどれくらい離れているのか音程を認識することができる能力です。相対音感を持つ人はひとつの音を聞いただけでは、音階の判断はできません。しかし、たとえば基準となる音「ド」の音を聞いたあと「ソ」の音を聞くと、「ソ」の音が「ド」の音とどれぐらい離れているかが認識できるのです。
音感を身につけることで得られる3つのメリット
ここでは、音感を身につけることで得られる3つのメリットを解説します。絶対音感を持っていることによってメリットがあることはもちろんですが、相対音感しかないとしても音楽的な才能が劣っているわけではありません。
脳の発育によい影響を与える
幼少期に絶対音感を養うことは、音楽以外にもよい影響をもたらします。
統計的なデータによると、絶対音感を持つ子どもは、絶対音感を持たない子どもと比べて、10ポイント以上もIQが高いそうです。またドイツのハインリッヒ・ハイネ大学による研究結果では、絶対音感を持つ人の左脳の側頭平面(数学的能力や言語の理解に深く関係していると考えられている所)が、右脳の側頭平面に比べ、2倍近いサイズに発達していることがわかっています。
楽器演奏の習得に役立つ
楽器演奏の習得にも大いに役立ちます。
まず絶対音感を身につけると、楽譜を読むだけでなく、耳から音を認識できるので、指導を受ける際にもより早く内容を理解できます。聞くことへの集中力も高まり、微細な音色の違いにも気づくことができるでしょう。特にピアノの習得に有利です。一方で相対音感は、自分で音程を探る必要がある弦楽器や声楽の習得に活かせます。
もちろん弦楽器や声楽を学ぶ場合も、絶対音感があることで音の正確性が増すでしょう。また、絶対音感があっても相対音感がない場合、音の高さがいつもと違うとうまく弾くことができない問題が起きてしまうことも。両方の音感を持っていることが楽器習得には有利です。
音楽を職業にするうえで役立つ
子どもにより専門的に音楽を学ばせて、音楽活動を仕事にする将来の可能性を広げてあげたいと考えているなら、両方の音感を身につけるとよいでしょう。
演奏家として活動する場合も作曲家でも、心地よいとされる音の組み合わせを作るのに相対音感は欠かすことができません。また歌手を目指す場合も、正確な音程で歌える絶対音感は役立つでしょう。
「絶対音感」と「相対音感」が身につく時期や方法
絶対音感や相対音感は持って生まれた才能として思われがちですが、音感は子どものうちから鍛えることができます。
「絶対音感」と「相対音感」それぞれの音感を身につけるための時期や方法について解説します。
「絶対音感」が身につく時期や方法
絶対音感は、聴力が発達していく幼少期にしか身につけることが難しいと言われています。幼少期は、子どもの音楽的才能を効率的に伸ばすには欠かせない時期なのです。
聴力が発達する2歳頃から最適な4~5歳まで、遅くとも聴覚が完成する8歳までがよいでしょう。
この時期に音を聞き分けるトレーニングを繰り返しすることで、絶対的な音程がわかる能力が身につきやすいとされます。
それには、幼少期から音楽や楽器に触れる機会が多いことで、絶対音感は自然に身につきます。特に幼少期にピアノを学ぶことで自然と絶対音感を身につけることができる可能性が高まります。ピアノはダイレクトに絶対音に触れられる楽器だからです。
それ以外にも、絶対音感を養う専門トレーニングを受けるのもよいでしょう。音の聞き取り練習(単音・和音)や歌唱練習など絶対音感の習得のため開発されたプログラムを、音楽教室や自宅などで利用して毎日トレーニングを行なうのがおすすめです。習得の早い人であれば、1年足らずで絶対音感は身につくといわれています。
しかし一度絶対音感を身につけたあとでも、絶対音感を維持する努力が必要です。楽器練習などを継続する努力なしでは、せっかく習得したにも関わらず絶対音感は失われてしまいます。
「相対音感」が身につく時期や方法
相対音感は、4~5歳の幼少期を過ぎた大人でも鍛えることが可能です。相対音感は誰しもある程度備わっていると言われていますが、しっかりと鍛えることで音程をとる精度を高められます。
子どもも大人も、楽器に触れる時間を日常的にとることで、スムーズに音程を把握できるようになります。つまり相対音感も絶対音感も鍛えるためには、なるべく毎日楽器を練習することが効果的なのです。
大切なのは、正確に音程の差を把握するため、調律が整っている正しい音で響く楽器を使用することです。楽器は、定期的に調律しましょう。
絶対音感と同じく、相対音感を養う専用トレーニングも開発されているので利用するのもおすすめです。
実践しよう!音感を育てるためのトレーニング法
音感の習得は、言語の習得と似ており、訓練によって伸ばせるといわれています。
音感トレーニングとは、その音の音階が分かる感覚や音の高低を聞き分ける能力を育ててあげることです。
ここからは家庭でもできる、音感を育てるトレーニングを3ステップの段階をふまえて説明します。準備に必要なものは、音が正確に出るピアノやエレクトーンなどの楽器だけです。1~3歳くらいまで音感トレーニングを行い音楽に親しんでから楽器を習う道などに進むとよいでしょう。
STEP1.正しい音を覚えよう
子どもの隣でピアノなどの楽器を弾き、「これが<ド>の音で、これが<レ>の音」とドレミファソラシドの各音を教えてあげてください。子どもが理解しやすいようゆっくりと、1音ずつ時間をかけることがポイントです。1日で覚える必要はなく、1日1音ずつ増やしていくのもよいでしょう。
STEP 2.「ドレミ……」で歌を歌おう
歌を歌うことも、子どもの音感を育てる効果があります。大切なことは曲を「ドレミ」の音階で歌うこと。正しい音を伝えるために、できるだけ音程を正確に歌いましょう。歌う曲は『きらきら星』や『かえるのうた』など簡単な童謡でOKです。
STEP 3.最後は子どもと一緒に楽しんで歌おう
一緒に歌うときは、ゆっくりとひとつひとつの音を確実に「狙いに行く」ことを意識してみましょう。なによりも大切なのは、一緒に楽しむことです。子どもの頃に芽生えた「歌うこと、音楽って楽しい!」気持ちは、大人になっても覚えています。子どもと一緒に歌うことを、心からともに楽しんでくださいね。
歌に自信のない両親や、楽器が家にない家庭では、あらかじめ歌の入ったCDや、YouTubeを流すのもおすすめです。
さいごに
持って生まれた才能だと思われがちですが、音感は育てることができます。それぞれの音感の違いを理解して、トレーニングしていくのがよいでしょう。
最適な時期は、聴覚の発達していく2~5歳の幼少期がベスト。まずは、音楽って楽しい!と思えることを大切にすると、音感トレーニングの効果が発揮され、音楽の可能性がさらに広がっていくでしょう。ぜひ子どもと一緒に始めてみてくださいね。
参考サイト
- スガナミ楽器|子どもの音感を良くするための方法とは? (https://www.suganami.com/shop/sound/column/so0030 )
- 一般社団法人 日本こども音楽教育協会|プログラムについて (https://nko-kyoiku.jp/program )