日本の教育の世界の評価は?海外と異なる日本式教育の特徴
日本の教育に対する世界の評価
日本の教育は、世界的にどのような評価を得ているのでしょうか?国際的な学習調達度調査「PISA」の結果をもとに解説します。
PISAとは?
PISAとは、OECD(経済協力開発機構) によって3年ごとに行われる、15歳の子どもと対象とした国際的な学習調達度調査です。(参考:PISAとは?)
OECDにはイギリスやドイツなど36ヶ国が加盟しており、PISAには世界72ヶ国、およそ54万人の子どもが参加しています。PISAでは「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3つの分野に関するテストが行われていますが、日本の順位はどうなっているのでしょうか?
PISAショック
日本でPISAの結果が大きく注目されたのは、2003年のことでした。2000年に実施された調査での日本の成績は、読解力が8位、数学的リテラシーが1位、科学的リテラシーが2位と高いレベルだったのに対し、2003年には科学的リテラシーは2位と変わりませんでしたが、読解力は14位、数学的リテラシーは6位と急落してしまったのです。(参考:PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査 )
これはPISAショックと呼ばれ、当時行われていたゆとり教育への疑念を招くことになり、脱ゆとり教育への方向転換につながったといいます。
近年の日本の順位
近年の日本のPISAの順位はどの程度なのでしょうか?
★2015年
読解力 8位
数学的リテラシー 5位
科学的リテラシー 2位
★2018年
読解力 15位
数学的リテラシー 6位
科学的リテラシー 5位
世界的に見ると日本の順位は高いレベルのあるといえますが、2018年の読解力においては、PISAショックのころよりも順位が下がってしまっています。こうした順位の低下には、日本の英語教育やICT機器活用の遅れが影響しているという指摘もあります。
読解力のテストには英語の出題もありますが、日本の英語教育の水準は世界的に低いとされています。また2015年よりPISAの試験はコンピューターを通して実施されるようになりましたが、日本でのICT機器の利用率はOECD加盟国の中でも最下層となっており、生徒が解答の仕組みを理解できていなかった場合も考えられるといいます。
新学習指導要領の影響
日本では2020年より学習指導要領が改訂されました。新学習指導要領の影響は2021年のPISAによって問われる予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で2021年の調査は1年延期となってしまいました。
新しい学習指導要領は、日本の教育にどのような影響を与えているのか、今後の結果が気になりますね。
日本式教育の特徴
日本人にとっては当たり前に感じられる日本の教育ですが、海外とはどのような点が異なるのでしょうか?日本式教育の特徴をご紹介します。
学校活動
日本式教育として注目されることが多いのは、学級会や運動会などといった学校活動が盛んに行われている点です。集団行動を通して協調性を学ぶカリキュラムは、実は海外では珍しいのだといいます。
またクラスや教室などに生徒が所属する点も、日本の教育の特徴の一つといえるでしょう。クラス単位でともに時間を過ごす中で、仲間意識を育んでいけるのかもしれません。海外では個人の能力にあわせた教育が主流なので、日本とは違い義務教育期間中でも飛び級や留年することも少なくないといいます。
また海外では学校の掃除は業者に依頼することが多いですが、日本では子どもたち自身が掃除を行いますよね。そうして子どもたち自身に学校をきれいに保たせることで、責任感や美化意識を培っていけることでしょう。
教育の機会が均等
近年日本でも教育格差が問題視されていますが、学習指導要領によりどの地域でも一定水準の教育を受けることが可能です。しかし新興国など貧富の差が大きい地域では、経済的な事情で教育を受けられない子どもも多いといいます。
「読み書きそろばん」教育
「読み書きそろばん」とは、その名の通り国語と算数の基礎のことを指し、日本ではこうした言語能力や計算能力を培う教育が重視されています。そろばんは現代日本ではあまり授業で触れる機会は少なくなりましたが、海外では「世界最良の算数道具」として注目を集めているのだとか。
シンガポールやベトナムなど、世界108もの国や地域でそろばんが活用されているといいます。
才能よりも努力を重視
アメリカなどの海外では努力よりも才能を重視する傾向があり、テストの結果が悪かったときにも「才能がない」のだと判断してしまうことが多いといいます。一方日本では、才能よりも努力のほうが重要だと考えられることが多いため、成績が振るわなかった場合、努力をすることへ意識を向けやすいのかもしれません。
日本式教育の海外展開
2016年度から始まった「EDU-Portニッポン」は、文部科学省や経済産業省、外務省、国際協力機構(JICA)や国内教育機関、民間企業、NPOなどが連携し、日本式教育を海外へ広める事業です。
自分で考えて学び続けられる力を育む学習指導案や教材の作成、教員への授業ノウハウの伝授、タイやインドネシアなど36の国や地域でのパイロット授業の実施などが行われています。
またエジプトでは大幅な人口増加に伴い、情勢が不安定になっていることから、規律や道徳心・協調性を重んじる日本式教育を取り入れる試みが行われています。日本ならではの学級会や日直などの特別活動も取り入れられているのだそうです。
さいごに
日本国内では日本の教育制度に対して批判的な意見が多く見られますが、海外での評価はまだ高いレベルに位置しているといえるかもしれません。日本式教育が海外でも通用するのか不安に感じるママ・パパも少なくありませんが、日本の教育も時代にあわせて変化しているもの。
そうした変化を見守りつつ、学校教育だけで不安な分野は習い事や通信教育などを活用してフォローしてあげてもいいかもしれません。
参考サイト
- 国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research(https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/)
- 文部科学省(https://www.mext.go.jp/)
- OECD(https://www.oecd.org/)