先進英語学習のイマ-ジョン教育って?どこで受けられる?
イマージョン教育とは
イマージョン教育とは、英語の「immerse(浸す、漬ける)」が由来の1960年代にカナダで始まった語学学習法です。フランス語が公用語のカナダ・ケベック州でフランス語と英語の両方を深く学べるようにと作られました。外国語を1つの教科として、単語や文法を中心に暗記する学習法とは異なり、算数や理科、体育、音楽などの授業の中で外国語を使い、教科を学んでいきます。外国語を学ぶのではなく、外国語で学ぶという教育法です。現在では、世界各地の学校でイマージョン教育が行われており、日本でも実施している小中学校があります。
イマージョン教育の学校とインターナショナルスクールの違い
インターナショナルスクールは、英語を母国語とする生徒を対象とした学校として発展してきたもので、日本語を母国語とする生徒への配慮が少ない場合もあるでしょう。また、日本の学校教育法とは異なる学校のため、義務教育を受けていない、高校を卒業していないと見なされることもあります。一方で、イマージョン教育の学校は、日本語を母国語とする生徒を対象に外国語を教える学校で、国の認可も得ている一条校(義務教育校)が多いです。
イマージョン教育のメリット
イマージョン教育を行っている学校に通ったときのメリットをご紹介します。
語学学習効果が高い
イマージョン教育を受けると、聞く力や発音能力がネイティブレベルになるといわれています。小学校6年間の授業時間数は約5600時間。 英語を話せるようになるまで、約3000時間もの学習時間が必要とされており、 日本語と英語を半分ずつ使って授業を行う方法でイマージョン教育を受けた場合、2800時間も英語で授業を受けることになるので、英語が話せるレベルに到達するほどの学習効果があるといわれています。ネイティブレベルの英語力を身につけて、世界で活躍してほしいと願っている保護者の方にとってはうれしい学習方法でしょう。
リアルな英語に触れる機会が増える
外国人の先生と触れ合う時間が多くなるイマージョン教育では、自然な会話表現を聞くことができます。例えば、日本人の先生ではあまり見かけない、アメリカンジョークやオーバーリアクション、ストレートな感情表現など、リアルな英語に触れることができるでしょう。
自己主張能力が身につく
イマージョン教育の学校では、 プレゼンやスピーチなどにも力を入れている学校が多くあるため、自分の気持ちを表現する力が身につきます。自分の気持ちや考えを理論立てて伝える経験は、大人になっても必要なスキル。日本語でも難しいプレゼンやスピーチを英語で行うことは、文章を考える力、人前で話す度胸、英語で話す力が鍛えられ、自己主張能力が身につくでしょう。
多様性が育まれる
イマ―ジョン教育を行う学校には、さまざまな国籍の先生が授業を教えてくれるところが多くあります。幼いころから、いろいろな人種の人がいることが当たり前の環境で育つと、人との違いを受け入れられる土台が育まれ、大人になってからも多様性を受け入れることができるでしょう。
イマージョン教育のデメリット
さまざまなメリットがあるイマージョン教育ですが、デメリットもあります。続いて、イマージョン教育のデメリットをご紹介します。
教育費が高額になる
イマージョン教育を実施している学校はほとんど私立学校のため、授業料が高額になる傾向があります。また、英語経験がなくても入学できる学校もあれば、プリスクール(幼児に英語教育を行う施設)を卒業していないと入学できない学校も多いです。その場合、小学生になる前からプリスクールの費用がかかり、入学してからも授業料がかかるため、教育費が高額になることがデメリットと言えます。
ストレスに感じる子どもも
一般的な小学校でも、新1年生は慣れない環境でストレスを感じることがあります。小学校からイマージョン教育を受けた場合は、英語の理解不足ともどかしさから、自分の気持ちや意見を英語で上手く伝えられず、さらなるストレスを感じることがあります。
協調性が身につきにくい
一般的な日本の小学校と比べるとイマージョン教育の学校では、“個”を大切にする傾向があります。日本の学校特有の掃除の時間や給食の配膳が行われない場合、協調性を身につける機会が減ってしまうことに。個を大切にすることと、のびのびとした環境がメリットでもありますが、公立中学校や高校に進学したときや社会に出たときなど、今までの常識が通用せずに苦労する場面もあるでしょう。
日本語が疎かになる
イマージョン教育を受けられる学校では、一般的な学校に比べ日本語に触れる時間が少なくなります。英語についていけるか心配になって、放課後も英語学習ばかりしてしまうと、日本語への理解力が低くなってしまいます。日本語が正しく理解できていないと、せっかく学んでいる英語への理解も浅くなる場合も。家庭では正しい日本語を心がけて会話をしましょう。
イマージョン教育を導入している学校
イマージョン教育を導入している小学校を東北から九州まで6校紹介します。学校ごとに特色が異なるので、ぜひ参考にしてください。
加藤学園暁星初等学校
静岡県沼津市にある加藤学園暁星初等学校は、1992年に日本で最初にイマージョン教育を始めた学校です。理科や算数、生活などを英語で授業を行い、英語に触れる時間は学校で過ごす時間の50%以上。壁のない教室で過ごすところも特徴的な学校です。日本人としての誇りも大切にしており、3・4年生では剣道、茶道、長唄囃子などの7つから授業を選択できます。
LCA国際小学校
神奈川県相模原市にあるLCA国際小学校は、日本の文化を大切にしつつ、世界へ視野を広げ、多様性を育める学校です。日本の歴史はオリジナルの古典教材を使い理解を深め、アフタースクールでは、茶道や生け花、和太鼓も導入。国際感覚の違いが身近に感じられる、日本と世界とのマナー・モラルの違いについても学習します。卒業までに英検2級以上に相当するレベルに到達することを目標とし、英語で学ぶ時間は3年生以下が約80%、4年生以上が約50%です。
ぐんま国際アカデミー初等部
群馬県太田市に位置するぐんま国際アカデミーは、小中高一貫校で12年間イマージョン教育を受けられる学校です。イマージョン教育だけでなく、チャイムを鳴らさず自立を促す教育やクラス半分の人数で授業する丁寧なサポート、国語と図工の相互授業などさまざまな教育法も魅力的。初等部では、主に国語、社会、家庭科以外の時間で英語を使用します。これは、授業時間の約70%にあたります。英語の先生は、母国で教育免許を持つ経験豊富なネイティブスタッフが多く在籍しリアルな英語に触れられる一方、読書感想文や日記を書かせることで日本語の指導にも力を入れています。
ホライゾン学園仙台小学校
宮城県仙台市にあるホライゾン学園仙台小学校は、東北地方で初めて一条校としてイマージョン教育を導入しました。日本人と母国での教員免許を持つ外国人の先生で1学級2人担任制をとっており、教科の5~6割で英語を使って学習。自分の考えを英語と日本語を使って、全校生徒の前で発表するなど英語だけでなく、日本語の学習にも力を入れています。探究型学習として、生徒たちが主体的に調べたり考えたりしたものをプレゼンテーションなどで発表する活動も行っています。
京都聖母学院小学校
京都府京都市にある京都聖母学院小学校の国際コースは、算数、生活、体育、図工などで英語を使った授業が受けられます。算数は週1回程度日本語で授業するので、英語がわからず、授業の理解度が下がるのではないかと不安な子どもも安心できる学校です。3、4年生では国内で英語合宿を行い、日常生活で英語を使う練習をすることで生きた英語を習得。高学年になると、その後の進路も考え日本語で行う授業数を増やすカリキュラムをとっています。
リンデンホールスクール小学部
福岡県太宰府市にあるリンデンホールスクール小学部は、小学生6年間で3,882時間もの時間を英語に触れられるカリキュラムとなっています。聞く・話す力を低学年のうちに育て、理解度が深まってきたら、多くの英語の本に触れ、振り返りを書くことで、英語力がバランスよく育ちます。3・6年生時には、オンラインで姉妹校と交流を行い、希望者には、アフタースクールで留学生との国際交流が取り入れられています。また、校内にある田んぼで米作りを行うだけでなく、稲藁を用いて釉薬を作り、陶芸を行い、自分で作った茶碗で茶道を行ったり、お正月に飾るしめ縄も自分たちで刈り取った稲藁で作るなど、古き良き日本の文化や循環型の生活を実体験で学べる魅力的な取り組みがあります。
さいごに
イマージョン教育はたくさんの時間英語に触れ、実際に話す場面も多くあるので高い学習効果が見込めます。国際社会で活躍してほしい子どもにとってはぴったりな教育方法です。 その半面、費用が高額になる、子どもに負担がかかるなどのデメリットも。メリット・デメリットを知った上でお子さんに合う学校を探してみてくださいね。
参考サイト
- オンラインインターナショナルスクール|イマージョン教育とはなにか?メリットや歴史、日本での導入事例などについて解説します(https://flynexia.com/2022/03/30/immersion_education/ )
- GLOBAL CROWN|双方向イマージョン教育とは?得られるメリットやデメリットなど詳しく解説(https://www.global-crown.com/blog/english-teaching/two-way-immersion )
- CGKインターナショナルスクール|幼児英語教育の6つのメリットと知っておきたいデメリット(2023年版)(https://cgkis.com/school-news/column-ja/english-learning-for-kids/ )
- オウサムアルスアカデミア|イマージョン教育とは?メリット・デメリットを丁寧に解説!(https://awesome-ars-academia.net/immersion-education/ )
- 文部科学省|学習指導要領「生きる力」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/ )
- キティインターナショナルスクール・プリスクール|インターナショナルスクールとは? 学費・費用・入学条件は?(https://www.inter-preschool.com/policy/intl-school.html )
- 加藤学園暁星初等学校|イマージョン・プログラム(http://www.katoh-net.ac.jp/Elementary/09-2.php#A1 )
- 加藤学園暁星初等学校|教育理念(http://www.katoh-net.ac.jp/Elementary/01.php#A1 )
- LCA国際小学校|国際人を育てる(https://elementary.lca.ed.jp/international )
- ぐんま国際アカデミー初等部|カリキュラムの特色(https://www.gka.ed.jp/elementary/curriculum/ )
- 学校法人ホライゾン学園 仙台校|小学校について(https://sendai.horizon.ac.jp/primary.html )
- 学校法人ホライゾン学園 仙台校|教育構想(https://sendai.horizon.ac.jp/primary2.html )
- 京都聖母学院小学校|国際コース(https://www.seibo.ed.jp/kyoto-es/frontier-course/international-course )
- リンデンホールスクール|英語イマージョン教育(https://lindenhall.ed.jp/elementary/education/immersion/ )
- リンデンホールスクール|国際交流(https://lindenhall.ed.jp/elementary/education/international/ )
- リンデンホールスクール|日本文化(道徳)(https://lindenhall.ed.jp/elementary/education/culture/ )