夏休み明けで心配な子どもの視力低下と過密スケジュール
新型コロナウイルスによって変化した子どもの生活実態
子どもたちがダブレットを使ったり、スマホやゲームなど通信機器に接する時間が増え、視力に悪影響を及ぼしているのではないかと心配になりますよね。実は専門家も警鐘を鳴らしています。
近視予防フォーラム事務局が「新型コロナウイルスによって変化した子どもの生活実態」に関する調査を行い、結果を公表しました。(2020年7月29日)
夏休みが短縮され、土曜日授業やオンラインによる学校の授業、塾・習いごとをしている小中学生の子どもを持つ全国の20代〜50代の保護者1,000人(父親・母親 各500人ずつ)を対象に調査したものです。
以下に調査結果を列挙してみます。
- 1年前と比べ、小中学生の86.3%が「自宅で過ごす時間」が増加し、「パソコンやスマートフォンを見る時間」が72.9%増、YouTubeなどの「動画を見る時間」が67.2%増、スマホゲームも含む「ゲームをする時間」が61.2%増えました。
- 一方、1年前は61.1分だった外遊び時間が1日平均35.4分と、40%減りました。小学生と中学生を分けてみると、小学生では66.2分が42.4分(23.8分短縮)、中学生は56.0分が28.5分(27.5分短縮)という結果でした。
- 保護者のうち、60.7%が小中学生の生活スケジュールが「過密化している」と実感し、「土曜日の授業」(71.2%)や「オンラインでの塾・習い事」(66.2%)が始まった小中学生では、スケジュールの過密化の度合いがより高くなっていました。
- 小中学生のPCやスマートフォンなどの視聴時間は1日平均約80分、1年前より20分長くなり、オンラインでの学習や塾などで、小中学生の日常でもパソコン、タブレット、スマートフォンなどの情報機器を見る時間が長くなっている実態がわかりました。
- 特に、外出自粛中は129.7分(71.2分増加)と倍増しました。自粛後も増加が顕著なのは中学生で、1日平均102.4分と、昨年より27分長くなっています。
- 1日1回、外で太陽光を浴びている小学生は60.2%、中学生は42.8%と少なくなり、特に中学生の女子では39.6%しかいません。
子どもの近視予防や健康のために何ができるか?
太陽光を浴びることは、目に良いことは広く知られています。でも、感染を恐れて子どもたちが室内で過ごすことが多くなっています。どう対処すればよいのでしょうか?
窓を開けたり、ベランダに出たりして、意識的に太陽光を浴びるようにしましょう。暑いしエアコンがきいている外光の入る明るい窓辺でもいいのでは?
答えはNOです。窓ガラスはバイオレットライトを遮断してしまうからです。
世界の近視研究においては、外で過ごす時間が減ったことが、近視急増の最大の原因だという研究もあります。
感染を恐れて、外出を避ける傾向にありますが、子どもの近視予防や健康を考えると、早朝や夕方に散歩をしたり、公園で遊んだりする時間はとても大切です。
子どもの過密スケジュール問題
自粛中の遅れを取り戻すために学校の授業や塾などで学習課題が増え、子ども時間の過密化が進んでいます。
上記の調査においても、新しい生活様式で行動変化があった小中学生のうち6割以上が「スケジュール過密化」傾向にありました。
夏休みが短縮され学校が始まり、塾の夏期講習と重なった子どもたちの忙しさは半端ではないようです。早朝から夜遅くまでぎっしり予定がつまっていて、親も子もへとへと状態といいます。
生活の過密化は、子どもの心身に大きな影響をもたらします。子どもの心と身体、生きる力への影響が非常に心配されます。
子どもの過密スケジュールへの対処方法
大切なのは子どもたち自身が自分の時間をコントロールする力を身に着けることです。一日の過ごし方を、子どもが主体となって決めるよう促しましょう。
そして、少しでもストレスのサインに親が気づいたら、スローダウンするようにアドバイスが必要です。学校や塾を休むことも一案です。
親自身が苦しくて、子どもの負担が見えにくい状態になっています。子どもと日常的に接していても、子どものストレスに親でも見落としがちになった結果、子どもの不眠をスマホ依存だと思ってしまったりします。
新型コロナウイルスが、子どもたちの心に与えている影響を調べるため、国立成育医療研究センターが、子どもと保護者6800人にアンケートを行ったところ、約7割の子どもにストレス反応が出ていたことがわかりました。
子どもの7割がストレスを感じているにもかかわらず、子どものストレスに気づいている親は2割だけといいます。
アンケートには下記のような子どもたちからの声が寄せられていました。
コロナのことを考えると寝ながら少し泣いてしまう
先生が怖い。友だちと遊ぶと怒られる
人とすれちがうだけで怖くなる
勉強ばかりで思い出がまったくない
テレビで『子どもが家にいるのがストレス』と言っている親の人がいたけど、それは子どもも同じ。自分の存在を否定されることを言われるとつらい
飲み屋で大人が騒いでいるのを見ると、私たちがふだん学校でしている対策はなんなのだろうと思う
新型コロナウイルス(コロナ)に関する知識
小学校低学年で、「マスクをつけていても、コロナにかかることはある」「熱も咳もなく元気でも、コロナにかかっていることがある」ことを知っていたのは8割弱でした。
意識(スティグマ)
「もし自分や家族がコロナになったら、そのことは秘密にしたい」と回答したのは、こどもの32%、保護者の29%でした。
また、「コロナになった人とは、コロナが治っても付き合うのをためらう(あまり一緒には遊びたくない)」と回答したのは、こどもの22%、保護者の7%でした。
こどもの意見は反映されているか?
こどものことを決めるとき、おとなたちはこどもの気持ちや考えをよく聞いていると思いますか?」という問いに対して、小学校低学年の15%、小学校高学年の25%、中高生の42%が、「あまりそう思わない」または「全くそう思わない」と回答しました。
引用:https://www.ncchd.go.jp/center/activity/covid19_kodomo/report/report_02.html
同アンケートでは保護者に対しても心の健康度をチェックしました。調査結果によると、深刻なこころの状態のおそれがあると判断された保護者が2割、心に何らかの負担がある親が6割を占めていました。
親が精神的に苦しければ、子どもの苦しさも見えづらくなり、感情的に叱ってしまうことが増えてしまいますよね。
さいごに
コロナ禍で生活リズムが乱れ、朝スッキリ起きられない、集中力がない、イライラ、グズグズが増えた、夜なかなか寝つけないなどの症状がある子どもが増加しています。子どもだけでなく、長引く新型コロナの影響で、親もくたくたになっているのが実態です。
夏休み明け、急に生活リズムが変わって内臓の働きや自律神経が乱れ、身体にさまざまな不調があらわれています。
この記事では、少しでも悪影響を回避するための方法をお伝えしました。さいごに、発刊されたばかりの良書を紹介しましょう。コロナ休校・休園で乱れた子どもの生活習慣を改善する62の方法を掲載した「子どもにいいこと大全」です。
「子どもにいいこと大全」では、基本の生活習慣、睡眠、食、運動などのカテゴリー別に、自律神経にいい習慣を紹介しています。
たとえば、基本の習慣では「起床後は、窓を開けて朝日を浴びる」、食の習慣では「朝起きたら、まず白湯を飲もう」、体を動かす習慣では「朝5分のストレッチで血流アップ」などです。
是非、手に取って参考にして欲しいと願っています。
参考:「太陽光と小中学生の近視の関係」
慶應義塾大学医学部眼科学教室 教授・坪田一男
Marco Pellegrini, et al. “May home confinement during the COVID-19 outbreak worsen the global burden of myopia? “ Graefe's Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology, 2020 May 4;1-2