ヘリコプターペアレントの7つの問題点!ならないためにはどうすればいい?
ヘリコプターペアレントとは
ヘリコプターペアレントとは、そもそもどんな親のことを指す言葉なのでしょうか?
「過保護かつ過干渉な親」のこと
「ヘリコプターペアレント」はアメリカで生まれた言葉で、空中で停止飛行するヘリコプターのように子どもに付きまとって観察する過保護で過干渉な親のことをいいます。もともとは高校生や大学生の子どもを過度に管理しようとする親を示す言葉でしたが、現在は年齢を問わず使われています。
一部ではありますが、具体的に下記のような行動がヘリコプターペアレントにあたるといわれています。
- 子どもが失敗するかもしれないと心配で、子どもの挑戦を見守れずに手や口を出す
- 常の子どものそばにいて、子どもがひとりになれる時間を作らない
- 子どもの友人関係に口を出し、喧嘩することがあればすぐに干渉する
- 子どもができない宿題を代わりにやってあげる
- 子どもの面接やデートについていく
ヘリコプターペアレントの特徴
ヘリコプターペアレントは、子どもへの愛情ゆえ「子どもを傷つけたくない」という思いから、失敗や困難などをできる限り取り除こうとする特徴があるといいます。そのため、子どものことを真剣に考える親は誰しも、ヘリコプターペアレントになる可能性があるのだそうです。
以前は子どもへの愛情があれば、多少過保護でも問題はないと考えられていました。しかし近年の研究によると、愛情がない場合と比べると軽減されるものの、愛情があっても過保護が子どもの自己否定感を強めたり、問題行動を引き起こしたりする可能性が懸念されるといいます。
どんな行動が「過保護」に当たるのか線引きが難しいところではありますが、下記のチェックポイントに心当たりがある場合は、過保護になっている可能性があるので注意しましょう。
- 子どもが下すべき決断を親が行っている
- 子どもが自分で解決するべき問題を親が解決している
- 子どもが困っていると助けを求められていないのに手助けしている
ただし過保護に当たるかどうかは程度によっても異なるので、あまり神経質になりすぎなくてもいいかもしれません。
子どもに悪影響を及ぼす○○ペアレントはほかにも!
「ヘリコプターペアレント」のように、子どもに悪影響を及ぼす可能性がある「○○ペアレント」はほかにも多数あります。例えば、デンマークで生まれた「カーリングペアレント」はカーリングという氷の上で行うスポーツになぞらえた言葉で、ヘリコプターペアレントと同じ過保護で過干渉な親のことを示します。
また日本で耳にすることが多い「モンスターペアレント」は、実は日本で生まれた言葉なのだとか。日本では学校よりも保護者の立場が強いケースが多いこともあり、学校などに対して非常識で身勝手な要求をする親が多い傾向があるといいます。
またイギリスで生まれた「トキシックペアレント」は直訳すると「毒になる親」となり、日本でいう「毒親」のことを指します。暴力や暴言、過干渉などによって子どもを親の意のままに支配しようとし、親の価値観から外れた言動を子どもがとると育児放棄をしてしまうケースも珍しくないといいます。
そんな毒親の根本には、子どもへの愛情ではなく親の自己愛があるとされている点が、ヘリコプターペアレントとの大きな違いといえるでしょう。
ヘリコプターペアレントの7つの問題点
ヘリコプターペアレントは子どもに悪影響を与える可能性があるといわれていますが、具体的にどのような問題が考えられるのでしょうか?
問題点1:子どもの成長の機会を奪う
失敗から学べることは多いといいますが、ヘリコプターペアレントは子どもが失敗することを嫌い、失敗しないように手助けしてしまいます。そのため失敗の経験を積めず、いざ親の手助けできない場面で問題に直面したときに対処できなくなるケースも。
自分の行動がどのような結果につながるのか知ることは、子どもの成長にとって大切なもの。ヘリコプターペアレントは、そんな重要な経験を奪ってしまいかねないといいます。
問題点2:不満への耐性が培われない
ヘリコプターペアレントは、子どもが嫌な思いをしないように先回りして対処してしまうため、不満への耐性が培われないかもしれません。社会に出てからもすべての問題や困難を親が前もって取り除くことは難しいので、いざつらい思いをしたときに精神的な負担が大きくなってしまうことも。
問題点3:コミュニケーション能力が育たない
対人関係においてママやパパが手や口を出し続けていると、子どものコミュニケーション能力が育まれないかもしれません。そのため社会に出たとき、学校や職場でトラブルが起こっても、どう対処すればいいのかわからなくなる可能性があります。
問題点4:社会に適応できない
社会において、評価を受けるには質の高い仕事をする必要がありますよね。しかし難しい問題を常に親がサポートしている状態だと、子どもは自分の力だけで努力して物事に取り組むことができないかもしれません。
そのため、職場で割り当てられた仕事も自力でこなせず「ママやパパがやってくれたように誰かがやってくれるだろう」と考えてしまう可能性も。また今まで失敗した経験がないことで、社会で上手くいかないことがあったときに大きな挫折を感じてしまうケースもあるといいます。
問題点5:自分で考えて行動できない
「子どもが間違えないように」と子どもがすべき決断を親が奪い続けると、子どもが自分のことを何も決められない指示待ち人間になってしまうかもしれません。食事や睡眠といった基本的な生活に必要な決断すら、自分で下せなくなってしまう人もいるといいます。
問題点6:自信が育まれない
「自信」は新しいことに挑戦したり、失敗しながらも試行錯誤して達成したりする中で育まれていくといいます。しかしそんな挑戦や失敗の機会が奪われてしまうと、子どもの自信や自尊心を養うことができない可能性があります。
また失敗を経験しないことで、何事も完璧にできる自分以外は受け入れられなくなることも。さらに興味があることを「危ないから」「失敗するから」と頭ごなしに否定され続けることで、子どもの自主性を奪ってしまう可能性も懸念されます。
問題点7:精神的に不安定になりやすい
大学生を対象に行われた調査(by HH Schiffrin · 2014『Helping or Hovering? The Effects of Helicopter Parenting on College Students’ Well-Being』)によると、ヘリコプターペアレントに育てられた子どもはそうでない子どもに比べて鬱傾向が強くなるといいます。子どもを守っているつもりが、精神的に追い詰めてしまっているかもしれないというのは本末転倒ですね。
ヘリコプターペアレントになりやすい人の特徴
ヘリコプターペアレントになりやすいのは、どのような人なのでしょうか?
完璧主義
完璧主義の人は、自分の子どもにも完璧を求めてしまう傾向があるといいます。自分の理想の子ども像を求める中で、子どもに過度な干渉をしてしまう可能性があります。
気が利く
気が利いて察しが良い人も、ヘリコプターペアレントになってしまいやすいといいます。子どもが言葉にしなくても先回りして手助けしてしまうことで、子どもが自主的に行動する機会を損なってしまうかもしれません。
せっかち
何事も無駄なく効率的にこなしたいと考えるせっかちな人も、ヘリコプターペアレントになりやすいといいます。子どもにスムーズに行動させるため、何事にもつい指示を出してしまいがちなのだとか。一見無駄がなくなっていいように感じられますが、子どもが自分で考える時間を奪ってしまいかねないため注意が必要です。
子どもと自分の境界線があいまいな人
いくら親でも、子どもと親は違う人間です。しかし子どもをまるで自分の一部のように認識いている人も少なくありません。子どもを自分の延長のように感じているため、子どもが自分の意思と異なる行動をしたときに過干渉になってしまいがちなのだとか。
事なかれ主義
トラブルが苦手な事なかれ主義の人の場合、子どもが泣いたり揉め事に巻き込まれたりしないよう、先回りして行動してしまう傾向があるといいます。
ヘリコプターペアレントにならないためのポイント
子どもを思うあまり、誰もがなってしまう可能性があるヘリコプターペアレント。そうならないためには、どのような点に注意したほうがいいのでしょう?
ネガティブな感情を恐れない
かわいい子どもには、なるべくポジティブな感情を抱いてもらいたいですよね。しかしネガティブな感情は子どもの成長につながるため、悔しさや悲しさといった感情に触れる機会も大切にしてあげましょう。
適切な距離感を意識する
子どもと適切な距離をとることを意識するのも、ヘリコプターペアレントにならないための重要なポイントのひとつです。適切な距離感の判断は難しく感じられるかもしれませんが、子どもが自然ととる距離がちょうどいいといいます。
例えば、公園で楽しく遊んでいるときは親と離れていても平気だけど、転んで悲しくなったら親のそばにいたがるというように、子どもの状況や気持ちによって適切な距離感は変わるもの。あまり気構えずに、子どもの望む距離を尊重してあげるといいですね。
子どもの自主的な行動を促す
子どもが行うべき判断を親にゆだねることが多く感じられる場合は、子どもが自主的な行動を取れるように促してあげることも必要かもしれません。親の意見を伝えるのではなく、子ども自身はどうしたいのか、どう思っているのか問いかけてあげましょう。
ママやパパにとって納得できない答えであっても否定せず、可能な限り子どもの意見を尊重してあげてくださいね。
親が趣味を見つける
育児中はつい子どものことばかり考えてしまうかもしれませんが、ママやパパが育児以外のことに意識的に目を向けるようにしてもいいでしょう。趣味を見つけ、自分の時間を大切にしていく中で、自然と子どもと適切な距離で接することができるようになるかもしれません。
子どもと離れる時間を少しずつ作る
子どもに対して過保護・過干渉になっている自覚がある場合は、子どもと離れる時間を作ってみてはいかがでしょうか?子どもの安全を確保したうえで、徐々に子どもと距離をとる時間を作ることで、少しずつ過保護・過干渉を減らせそうですね。
子どもの失敗を恐れない
子どもが失敗する姿はなるべく見たくないものですが、命にかかわるような危険がなければ、先回りして防ぐことは控えましょう。例えば、子どもがお茶碗をきちんと持っていないとき「落とすからちゃんと持ちなさい」と注意されるよりも、実際に落としてしまった方が「きちんと持っていないと落とすから次は気を付けよう」と学びやすいといいます。
また子どもが困っているからと、親が察して声をかけるのではなく、子ども自身に助けを求めさせることも大切です。社会にでると、困ったことがあっても常に誰かが気づいて助けてくれるわけではありません。自分で助けを求める力は、社会で生き抜くために重要な能力のひとつといえるでしょう。
子どもに助けを求められた場合は、答えを教えるのではなく、答えを自分で考えるための手助けをしてあげてくださいね。自身で試行錯誤しながら問題を解決していく経験は、子どもの成長につながるはずです。
まとめ
子どもへの愛情ゆえに子どもに過度な干渉をしてしまうヘリコプターペアレントは、日本人の中にも多いといわれています。筆者もつい子どもが失敗する前に手や口を出してしまうことがあるので、ヘリコプターペアレント予備軍の一人なのかもしれません。
目先の失敗を恐れるのではなく、長い目で見てどう接するのが子どもの将来に良いのか考えることを大切にしたいと思います。