親子のスキンシップは学習意欲にも関係する!子どもとたくさん触れ合おう
スキンシップは日本で生まれた造語!その意味とは?
スキンシップという言葉は、英語圏では使われていない日本特有の造語です。小児科医で児童心理の専門家であった平井信義氏から広まったといわれています。
現在までに明確な定義はなされていませんが、一般的な認識では「肌の触れ合い」はもちろん、「子どもと何かを一緒に行いながら親子間が良好な関係性でつながること」といった広い意味でも使われているそうです。
育児におけるスキンシップは主に乳幼児期をメインに語られることが多いですが、その影響は小さい頃に限定したものではないといいます。
研究(※1)によれば、中学生までの期間に父親や母親とのスキンシップ量が少ない場合、心理的に不安定になる可能性が高まるとの指摘もあるようです。
(※1)参考文献
浜崎 隆司,森野 美央,田口 雅徳(2008)『幼児期における父母のスキンシップと養育態度との関連』広島大学大学院教育学研究科附属幼年教育研究施設(https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/2/25067/20141016150639378707/AREC_30_23.pdf)
スキンシップが子どもにもたらす5つの良い影響とは?
スキンシップに関して、近年注目されているのが「オキシトシン」と呼ばれる物質です。
オキシトシンは主に分娩を促す作用や母乳を出す作用があるといわれてきた物質ですが、最近の研究では「親子の愛着関係を深めるときにも効果を発揮すること」も分かり始めたといいます。
ここからは、そんなスキンシップが子どもにもたらす5つの良い影響について見ていきましょう。
1.自分の行動をコントロールする力が身につく
スキンシップの良い影響のひとつが、子ども自身が自分の行動をコントロールする力が身につくことだといいます。
子どもの自立心にはオキシトシンの量が関係しており、小さな頃からたくさんのスキンシップを受けて育った子どもは、同分泌量が多いことが分かっています。
その後の追跡調査でも、オキシトシンの分泌量が多いほど学歴が高く、幸せな人生を送っていることも分かったそうです。スキンシップをたくさん受けて育った子どもは、将来的にもプラスの影響が生まれやすいといいます。
2.不安などを感じにくく、ストレスに強い子どもに育つ
スキンシップをたくさん受けて育った子どもは、ストレスにも強いといいます。
オキシトシンは、不安などのネガティブな感情を抑制してくれる効果も期待でき、ストレスを感じさせるホルモンを減らす働きもあるためです。
そのため、スキンシップの多い子どもは不安な気持ちを抱え込みにくくなるといえるでしょう。またストレスを感じにくいことで、新しい出来事への参加意欲も高まります。
3.セロトニンやドーパミンなどの脳内ホルモンも出やすくなる
スキンシップをとると「セロトニン」や「ドーパミン」などの脳内ホルモンも出やすくなるといいます。
セロトニンは、心を安定させる作用があるといわれており、ゆっくりと抱きしめるとオキシトシンとともに分泌量が増えます。
一方、ドーパミンは意欲を引き出す作用があり「やったね!よくがんばったね!」などと高揚しながら抱きしめると、オキシトシンとともに増加するそうです。
(関連記事)子どもの上手なほめ方は?やってはいけないNGもご紹介
状況に応じてスキンシップを使い分けると、安心感ややる気などシーンに適した快楽を子どもに与えることができるでしょう。
4.集中力と記憶力が高まり学習意欲も向上しやすくなる
スキンシップをたくさんとると、子どもの記憶力や集中力も高まりやすくなるといいます。スキンシップによってオキシトシンが出やすくなっている子どもは不安を感じにくく、リラックスした心持ちでいられ、目の前のことに集中できるためです。
普段から物事に集中して取り組める結果、記憶力も自然と高まり、学習意欲も向上しやすいでしょう。
5.人の気持ちを考えられるなど社会性が育まれる
スキンシップでオキシトシンが増えると、社会性も育ちやすくなるといいます。オキシトシンが出やすい子どもは、共感力の高さや人の気持ちを考えられるようになるためです。
これからの社会を生きていく上で大切だと考えられている「非認知能力」も、スキンシップから育めることを覚えておくと良いでしょう。
子どもとのスキンシップにはどんなものがある?
母親は身の回りの世話から、父親は遊びを通して子どもとのスキンシップを図る機会が多いといいます。ここでは改めて、実際のスキンシップにはどのようなものがあるのかを見ていきましょう。
寝るときのお話や歌を歌うなどの「静かなスキンシップ」
眠る前にお話しすることや歌を歌うなどの「静かなスキンシップ」は、時間をかけてゆっくりと子どもと関わる姿勢が特徴です。主に母親が行う機会が多いという結果もある、スキンシップの方法だといいます。
このほか「本を読むこと」なども静かなスキンシップ法のひとつです。
たかいたかいやくすぐりっこなどの「活動的なスキンシップ」
たかいたかいをしたり、くすぐりっこをしたりする「活動的なスキンシップ」は、子どもの身体機能を使って交流する姿勢が特徴です。主に父親が行う機会が多いといいます。このほか「おんぶをする」なども活動的なスキンシップ法です。
子どもと一緒に遊ぶなどの「気持ちのスキンシップ」
子どもと一緒にテレビを見たり、遊んだりする「気持ちのスキンシップ」は、場を共有する感覚から生まれることが特徴です。直接的に肌に触れていなかったとしても、気持ちの上でつながっている感覚も、スキンシップのひとつだと考えられています。
子どもとのスキンシップは「夫婦関係」にも影響する!
子どもとのスキンシップが夫婦関係にどのような影響を与えるのかについて実験研究したデータによると、親子のスキンシップが良好な夫婦ほど、夫婦の関係性も良いことが分かったといいます。ここでは同研究なども参考に、子どもとのスキンシップと夫婦関係について見ていきましょう。
オキシトシンの効果は男性にも!父親の積極性が育児のカギ
総務省が平成28年に行った社会生活基本調査によると、末子が6歳以下である家族の父親が1日に子どもと関わる平均時間は49分であるといいます。
しかし、育児をより前向きにとらえていくためには、父親が積極的に子どもと関わることが大切だといわれています。男性が積極的に育児参加している家庭では、子どもにも良い影響があるだけでなく、母親のモチベーションも保たれます。
(関連記事)ワンオペ育児とは?非協力的なパパへはどうアプローチしたらいい?
また、近年の研究では、育児経験を通して父親からもオキシトシンが出ることが分かり始めました。親子のスキンシップは、父親自身のストレスも軽減するメリットもあるといえるでしょう。
スキンシップの目的は父親と母親で違うこともある!
子どものスキンシップと夫婦関係について研究したチームによると、見た目が同じスキンシップでも、父親と母親では目的が違っていることが明らかになりました。
たとえば「子どもと一緒にお風呂に入ること」を、父親は「世話」だととらえ、母親は「子どもとのゆっくりとした交流」だと考えていることが多いといいます。
また「抱き上げる」ことを、父親は「遊ぶため」ととらえ、母親は「世話をするため」だと考えることが多いそうです。
それぞれの視点の違いをあらかじめ知っておくと、育児での誤解や不満も生まれにくくなるかもしれません。
親子でスキンシップを増やす方法と4つのポイント
実際のスキンシップの場面では、子どもに合わせた柔軟な触れ合いが大切だといいます。ここからは、親子でスキンシップを増やす方法と4つのポイントについて見ていきましょう。
楽しみながら行なう遊びの中でのスキンシップ
遊びの中で子どもとスキンシップをとることは、気軽に行いやすい方法のひとつです。
こちょこちょとくすぐったり、「ぐーちょきぱー」などの手遊び歌で遊んだりするやり方が考えられるでしょう。
ポイントは、楽しく笑い合ってスキンシップすることだといいます。お互いに楽しむことで、たくさんのオキシトシンが分泌されやすいでしょう。
子どもが求めてきたときに行うスキンシップ
効果的なスキンシップにはタイミングも大切です。子どもがほかのことに夢中になっているときや、求めていないときに無理にスキンシップする必要はないと専門家はいいます。
「抱っこ」と言われたり、からだをぴたりと寄せてきたりしたときなどにやさしく触れてあげると良いでしょう。お互いにやさしい気持ちでスキンシップできることが大切です。
膝に乗せるなど日常の中で無理のないスキンシップ
スキンシップは子どもの成長に大切ですが、「もっとたくさん触れなければ」と義務のようにとらえることはかえって両親側のストレスになりかねません。
添い寝をしながら背中をさすってあげたり、一緒にテレビを見ているときに膝の上にのせたりなど、お互いに無理のない形で取り入れることも大切です。
おじいちゃんやおばあちゃんなど両親以外とのスキンシップ
スキンシップのポイントは、子どもが触れ合いを求めたタイミングに誰かが行うことです。父親や母親以外にも、タイミングに応じて祖父母や親族、各園の先生などとのスキンシップも大切な時間だといえます。
スキンシップのすべてを両親が行えなくても、周りのサポートを得ることで、子どもにとって良い環境を与えることができるでしょう。
まとめ
スキンシップは、子どもが小さいときにこそ大切だと思いがちですが、乳幼児以降の成長にも大きく関わることが分かりました。また、親子のスキンシップが夫婦の育児へのモチベーションにもつながっていることは、興味深いことではないでしょうか。無理せず、日常の中でのスキンシップを大切にすることは、子どもにとっても親にとっても良い影響となりそうですね。
参考文献
浜崎隆司,森野美央,田口 雅徳『幼児期における父母のスキンシップと養育態度との関連』(https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00025067)
京都大学『授乳によるオキシトシンホルモンは母親の表情の感じ方と関連することを解明 -オキシトシンの変動には大きな個人差がある-』(https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2020-06-04-0)
総務省『平成 28 年社会生活基本調査 生活時間に関する結果』(https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/pdf/youyaku2.pdf)