【海外教育】台湾(タイワン)の子育て・教育事情を徹底解説
台湾の子育て事情
台湾の労働基準法では、8週間の出産休暇を義務づけていて、その間の賃金は、企業が通常通り支給します。
実は台湾は出生率が世界一低い国なんです。そこで、政府の施策として2009年から最長2年間の育児休暇制度ができ、最大6か月、給与の60%を受給することができるようになりました。
0歳から2歳くらいまでの乳児の預け先は、祖父母や託児所(公立・私立)、保母(ベビーシッター)が一般的で、「保母」は政府が資格を付与された専門家で、地域ごとに登録・管理されています。
また、台湾には、「親子カフェ」と呼ばれる、遊び場がついたカフェが多くあります。砂場など遊び道具があって、ママたちがゆっくりくつろげる場所になっています。
台湾の教育制度
台湾政府は2014年に9年間の義務教育を12年間に延長し、教育に重きを置いた政策立案がなされています。特に、高等教育進学率を上げることに注力していて、台湾の大学進学率は約80%で、日本よりも高等教育を受ける人の数が多いです。
義務教育は6~18歳の12年間で、6・3・3制をとっていて、公立の授業料は無料です。特徴としては、脱・詰め込み教育や先進的な実験学校(後述)などが政府によって推奨されている点です。
次に、就学前教育と小学校教育に焦点を当てて見てみましょう。
就学前教育
台湾では、日本で保育園や幼稚園にあたる就学前教育は義務ではありませんが、約60%の子どもが通園しています。
台湾の就学前教育機関は幼稚園、託児所、短期補習塾、幼児託児保育センターの4つがあります。
台湾の幼稚園(幼兒園)は、3歳~小学校就学前までの子どもが通います。公立の幼稚園は小学校に併設されることが多く、夏休みなどの長期休暇は園も休みになります。しかし、私立の幼稚園(70%)は長期休暇も預けることができますが、多額の費用がかかります。
通常、朝7時から夜19時近くまで預かってくれ、朝ごはん、昼食、おやつと1日3回の給食があります。
台湾の保育園(托兒所)は、生後1歳~小学校就学前まで通うことができます。幼稚園に比べて、保育料が高めです。
短期補習塾は、幼児向けの塾のようなもので、スポーツ・英語・絵画、音楽などの教室があります。
幼児託児保育センターは、安親班と呼ばれ、日本の学童保育と似ています。台湾では共働きの親が多いので、就学前の年齢の子どもや小学生を持つ親のほとんどが安親班を利用しています。
台湾の小学校、「國民小學」
台湾には国立大学付属の国立小学校、県立や市立の公立小学校、そして私立小学校があります。公立学校は住む場所によって通学する小学校が決まっています。
台湾では1学期が8月1日~翌年1月31日、2学期が2月1日~7月31日という2学期制です。
冬休みは1月中旬~2月中旬の4週間、夏休みは7月中旬~8月下旬の7週間です。
台湾にはベジタリアンが多く、給食もベジタリアン用のメニューと、そうでないメニューに分かれています。 また、台湾では親の送迎が一般的で、子どもだけが集団で登校することはありません。
驚くことに、台湾では「お昼寝タイム」が義務化されています。お昼ご飯を食べた後、多くの生徒が机に突っ伏して20分~30分ほど昼寝をするのです。昼寝をしないと先生から注意されるそうです。
これは昼寝をすることで、午後からのパフォーマンスが上がると言われているためですが、小学校だけでなく、幼稚園でも取り入れられ、中学校、高校、大学、社会に出てからと習慣化されています。
このように、一日に2回睡眠をとるという意味の「両倒」は、「子午覚」といって推奨されています。「子」は子の刻(23:00~1:00)、「午」は午の刻(11:00~13:00)のことで、その時間帯はよく眠った状態で過ごすのがいいという意味です。
台湾政府が進めている「実験学校」とは?
近年、台湾では実験教育が政府の後押しと共に進められています。実験教育はオールタナティブスクールと呼ばれていて、独特の理念に基づいて教育が行われています。
オールタナティブスクールは、日本にもありますね。日本では正式の学校とは認められていない場合が多いですが、台湾では政府が実験教育を後押しています。
もともと不登校に悩む親らが1990年代に手探りで始めたものですが、2014年には公立の実験学校を作ることができる法律もでき、年々、その数は急増しています。
2017年に開校した「和平実験小学校」の様子を見てみましょう。
1学年は58人で、29人ずつ2クラスで編成していますが、教室も担任もクラス毎に別けられてはいません。
日本の教室の3倍くらいの広い教室で、授業によって少人数のグループに別けたり、多人数で一つのテーマに取り組んだりしています。
授業の開始や終了時のチャイムはありません。3年生からは必修科目以外に「化学実験」「舞台デザイン」「プログラミング」「フランス文化」など、いろいろな選択科目があり、十数人程度の少人数で学びます。テストはありません。
和平実験小学校の入学はすべて抽選で決まります。開校を前にした2017年の学校説明会には、1学年58人の定員のところに1000人押し寄せたといいます。それは現在でも変わらず、大変人気が高い小学校です。
参考:臺北市和平實驗國民小學(http://www.hpees.tp.edu.tw/)
台湾の学校でのコロナ対策は?
台湾政府は、2020年2月、冬休みを2週間延期し、登校時の除菌の徹底、手の消毒のみならず、靴底のアルコール除菌も行い、登校後は手洗い・うがいを促しました。
各学級で児童の除菌責任者を決め、教室に入る前にクラスメイトの手の除菌を行っています。
他にも、マスクを外さなければならない給食時間には、下の写真のように衝立を立てて、飛沫の広がりを防ぐよう対策が取られています。
このような徹底した対策が功を奏し、コロナの感染拡大を抑え込んでいる数少ない国が台湾です。台湾では、大学の一斉休校も行われませんでした。
さいごに
お昼寝タイムの義務や政府の推し進める実験教育、そして徹底したコロナ対策には脱帽ですね。
実は、台湾のギフテッド教育は、50年近い歴史があるのです。社会に貢献する人材の育成を目的に、1973年から台湾政府主導で進められてきました。
記憶や理解などの「知力」、語学や数学などの「学術的才能」、発明などの「創造的才能」、 計画力や組織力、コミュニケーション力など「リーダーシップの才能」、楽器の演奏、チェスなど「芸術的才能」、運動能力など「その他の分野」の6分野です。
全ての学校にギフテッドクラスがあるわけではありませんが、特徴ある才能を持つ子どもが、その時間になったら特別クラスに行きます。例えば数学・物理・工芸・アート・英語・音楽など、たくさんの科目があります。
話題の唐鳳(オードリータン)大臣も、そのようなギフテッドクラス出身と思いきや、台湾での教育が合わず、14歳でドイツに留学しています。
オードリータンは小学1年生で連立方程式を解き、8歳でコンピュータープログラミングに興味を持ち始め、独学でコンピューターのプログラムを書いていたと言いますから驚きます。