もしかして感覚過敏かも?気になる子どもの特性やかかわり方を知ろう
子どもからのSOS?感覚過敏の特徴とは
私たちは聴覚・視覚・味覚・嗅覚・触覚といった五感を持っています。感覚過敏とは、その五感の刺激を過剰に受け取ってしまう状態のこと。病名ではなく、その人の持つ特性や状態を指します。たいていの人が気にしない状況や刺激にも過剰に反応してしまうため、日常生活や社会生活において困難を感じる場面が多くなります。また、五感以外にも平衡感覚や温度感覚が敏感な人も。感覚過敏は、刺激の受け取り方に個人差が大きく、外見から判断できないため、周りに理解されにくい側面も持っています。
なぜ感覚過敏になるの?
ではいったい何が感覚過敏を引き起こすのでしょうか?原因を見ていきましょう。
身体的な疾患や脳の機能によるもの
まず直接的な原因として、目・耳・鼻など感覚器官の損傷や病気があります。何らかの疾患によって感覚に問題が発生しているのかもしれません。さらに、てんかんや片頭痛によって脳の機能が過敏になることも。また、メニエール病や突発性難聴などの病気は、聴覚の過敏を引き起こすケースがあります。
不安やストレス
子どもの体調やメンタルの状況が、感覚過敏と関係している場合があります。子どもへのストレスは、脳に影響を及ぼす場合があるため、精神的に大きな影響を受けたことをきっかけに感覚過敏があらわれることも。強いストレスや精神的不安を感じていたり、体調を崩したりするときは、注意が必要です。
発達障害との関連は?
感覚過敏のある子どもは発達障害と位置づけされやすいですが、必ずしもそうではありません。たしかに、一般的に自閉症スペクトラム(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)といった発達障害を持つ子どもは、五感に困難を抱えている場合が多いとされています。しかし、前述したとおり感覚過敏はさまざまな疾患や環境が関係していると考えられています。よって、発達障害と感覚過敏はイコールではありません。
感覚過敏にはどんな種類と症状がある?
刺激の受け取り方が人それぞれ違うように、感覚過敏の症状もさまざまです。感覚ごとの特性をまとめたので、「うちの子感覚過敏かも」と感じたら、次に挙げる項目でチェックしてみましょう。
聴覚過敏
聴覚過敏とは、突然の音や騒音に対して過度に驚いたり、不快感を抱いたりすることです。感覚過敏のなかでも予測・回避することが難しいため、特に日常生活に影響が大きいといわれています。
- ドライヤーや掃除機の音が苦手
- 赤ちゃんの泣き声や犬の鳴き声が苦手
- 特定の音や声が聞こえると耳をふさぐ
- 救急車やサイレンの音にいち早く気づいたり怖がったりする
- 時計やエアコンなどの小さな生活音まで気になってしまい、集中できない など
視覚過敏
光や色、物の動きなどに敏感になることを視覚過敏といいます。視覚過敏はほかの感覚過敏に比べ周囲に気づかれにくいです。なぜなら、刺激のある状況下に一定時間居続けることで反応を示すケースが多いからです。例えば、明るい照明のもとにいると徐々にまぶしく感じたり、カラフルなポスターが並んでいて視界に入り続けると目がチカチカしてきたりします。
- 太陽の光や照明に対して下を向く、目を細める
- 真っ白の紙をまぶしく感じる
- たくさんの物や色が視界に入ると混乱する
- 人込みに入れない、ひどく疲れる
- テレビや読書など、集中して目をつかうと頭痛や吐き気を覚える など
味覚過敏
好き嫌いが激しい、特定の物しか食べない、という子どもは味覚過敏があるかもしれません。また、味だけでなく特定の食感を嫌がる子どもも味覚過敏といえます。
- 食事中よく嘔吐反射を起こす
- 味や食感が混ざった食べ物が苦手
- 苦い・酸っぱい・辛いなど、普通なら気にならない程度の刺激のある味が苦手
- 好き嫌いが極端に多く、特定の物しか食べられない など
嗅覚過敏
嗅覚過敏の子どもは、一般的にいいにおいとされている花や石鹸のにおいが苦手です。服を着たがらない子どもが、触覚過敏ではなく嗅覚過敏だったケースも。嫌いなにおいばかりでなく、好きなにおいにも敏感です。
- 石鹸や柔軟剤のにおいを嫌がる
- バスなど乗り物のにおいを嫌がる
- 食品売り場や動物園など、苦手なにおいのする場所にいられない
- 何でもにおいをかいで確認しようとする など
触覚過敏
特定の感触が苦手だったり、人に触れる、触れられることを極端に嫌がったりして、生活に困難が生じている場合は、触覚過敏かもしれません。食感や温度など、食べ物に対する触覚過敏もあります。
- 物や人に触れる、触れられることを嫌がる
- 特定の衣類の肌触りを嫌がる、もしくは好んで触る
- 身体や服が汚れることを極端に嫌がる
- 扇風機の風やシャワーを痛いと感じる
- 粘土や砂場などの触感を嫌がり遊べない など
五感以外の感覚過敏
五感以外にも、平衡感覚などバランスに関する過敏や、温度・痛覚に対する過敏を持つ子どももいます。
- すぐに乗り物酔いを起こす
- ブランコや高い高いなどの遊びが苦手
- 温度に敏感で暑がったり寒がったりが激しい
- 予防接種や歯の治療など、痛いことを過剰に嫌がる など
感覚過敏の対処法を知って上手にかかわろう
感覚過敏のあらわれ方、対処法は子どもによって違います。そのときの体調や気分で出やすくなることも。また、楽しいことに集中したり、安心できる人がそばにいたりする場面では症状があらわれないこともあります。
対処の基本は、苦手に対して無理強いしないことです。それぞれに合った工夫をし、あらかじめ心の準備や理解ができるよう、大人が環境を整えてあげましょう。ここからは、それぞれの感覚過敏に対するかかわり方を解説していきます。
聴覚過敏のかかわり方
耳に伝わる全体の音量を減らすには、イヤーマフや耳栓が有効です。刺激になる音を減らしたい場合は、ノイズキャンセリングイヤホンを使うこともおすすめ。家庭では、イスの脚にクッションを貼ったり、ドアの開閉音を軽減するためのスポンジをつけたりして、気になる生活音を減らしてあげましょう。学校や園では、運動会のピストルを笛や旗に変えてもらうなど、先生たちとの協力が必要な場面もあります。また、日常的に好きな音楽をかけて、苦手な音を紛らわすこともできます。
視覚過敏のかかわり方
外出時、光を眩しく感じるときは、サングラスや帽子が効果的です。家庭では遮光カーテンや間接照明にする、インテリアの色を統一するなどして刺激を減らしてあげましょう。また、刺激があることを予測できるときは、あらかじめ子どもに伝えてあげると心の準備ができ、安心感が増します。人込みに入るときは、安心できる人と一緒だとパニックを起こしにくいです。
味覚過敏のかかわり方
味覚過敏のある子どもに無理に食べさせようとすると、かえって偏食が強くなることも。まずは一緒に料理をし、どんな食材を使って調理されているかを見せることで食べ物に興味を持ってもらいましょう。また、食べるときには味が混ざらないよう、料理ごとにお皿を分ける、といった工夫も心がけてみてください。
嗅覚過敏のかかわり方
苦手なにおいのする場所へはなるべく近寄らないことです。外出するときは、マスクをつけて不快なにおいの刺激を減らしましょう。触覚過敏があってマスクがつけられないのであれば、お気に入りのタオルなどで鼻を覆うことも効果的です。また、好きなアロマを染み込ませたハンカチを持ち歩くなど、落ち着くにおいを常に身につけておくことで安心感が得られます。
触覚過敏のかかわり方
人に触られるのが苦手な子どもは、歯みがき・爪切り・洗髪など、早くから自分でできるよう促していきましょう。服を買うときは事前に試着し、服のタグは切るなどの対策ができます。肌着や靴下には縫い目のないシームレスのものがおすすめです。また、やわらかい布やタオルなど、好きな触り心地のアイテムを持ち歩いたり、お友達に急に触らないようあらかじめ知らせておいたり、といった環境づくりも大切です。
五感以外の感覚過敏のかかわり方
ブランコの揺れが苦手な子どもも、自分でブランコをこいで刺激をコントロールすることで受け入れやすくなります。乗り物酔いしそうなときは、ぎゅっと取っ手を握る、ガムをかむ、などほかの感覚刺激で気持ちを紛らわせると揺れる感覚を軽減できることも。また、温度に敏感な子どもには冷暖房を積極的に使い、なるべく不快を取り除いてあげましょう。
【体験談】感覚過敏の子どもとどう向き合う?
感覚過敏を持つ子どものママたちは、日々どのように接しているのでしょうか?体験談をご紹介します。
大きな音が苦手な娘(2児のママ)
4歳の娘が、いきなり出る大きな音に敏感なタイプです。コーヒーメーカーなど、私が何か大きな音を出すときは、事前に「コーヒーの音が鳴るよ~」と声かけしてから作動するようにしています。ただ、予測のできない外部要因のときは困りものです。例えば、病院の受付でいきなりなるシュレッダーの音や、道路でいきなりクラクションが鳴ると、「わー!」と言いながら慌てて耳を塞ぐ姿を目にします。なので、いきなり動いて危険な場合もあるので、車道に近い道路ではなるべく近くにいて手をつないだり、車道側をわたしが歩いたりするように意識しています。
ボタンが苦手な娘(2児のママ)
娘は、物心ついたころからボタンが苦手で服のこだわりが強い子どもでした。特に困ったのは保育園の制服です。スモックには大きなボタンが付いているのですが、かたいボタンが気になるのか毎朝嫌がって着てくれません。家だと準備の時間がなくて私もイライラしてしまうので、保育園の駐車場で制服を着させるようにしています。友達の前だと比較的着てくれることも多くなりました。
家庭で抱え込まず相談してみよう
子どもに感覚過敏のような症状が見られ、不安を抱えたまま過ごしていませんか?感覚過敏は身体的な疾患が原因の場合もあるため、聴覚過敏や嗅覚過敏なら耳鼻科、触覚過敏なら皮膚科など、まずは専門医に診てもらう方法があります。また、子どもの発達に心配があり相談するなら、小児科や児童精神科、保健センター、子ども家庭支援センターなどが窓口です。さらに、発達障害の不安があれば発達障害支援センター、児童発達支援センターに相談してみましょう。パパやママだけ子どもの問題を抱え込まず、ひとまず専門家を頼ってみることをおすすめします。
さいごに
感覚過敏にはさまざまな種類や特性があり、いつも一緒にいるママやパパでも発見・理解するのが難しいかもしれません。まずは子どもが何に不安やストレスを感じているか、注意深く見てあげましょう。子どもが少しでも安心して生活できるよう、できる限り先回りして不快を減らす環境づくりを目指しましょう。必要であれば、医療機関や専門機関と連携してサポートしていくことも大切です。
参考サイト
LITALICOジュニア|感覚過敏とは?チェックリストはある?原因や対策、発達障害との関連性も解説します
(https://junior.litalico.jp/column/article/016/ )
スタジオそら|感覚過敏・鈍麻とは?発症のメカニズムとそれぞれの症状・配慮を紹介|スタジオそら|運動・言葉・社会性などの発達を促す療育
(https://studiosora.jp/column/1702/ )
子ども運動教室LUMO|感覚過敏の子どもに当てはまるチェックシートを紹介!対策についても - 児童発達支援・放課後等デイサービス LUMO
(https://www.lumo-by-animom.jp/2024/01/03/hypersensitivity-checklist/ )
感覚過敏研究所|感覚過敏とは?病気なの?どこに相談すればいいの?対策方法は?さまざまな疑問にお答えします。 - 感覚過敏研究所 | 感覚過敏研究所
(https://kabin.life/column/hyperesthesia/ )
LITALICOジュニア|触覚過敏とは?原因や対処法、相談先を解説します
(https://junior.litalico.jp/column/article/086/ )
コペルプラス|感覚過敏とは? - 発達障害との関連性について _ 児童発達支援スクール - コペルプラス _ 発達障害や言葉の遅れが気になる子供の療育_幼児教室
(https://copelplus.copel.co.jp/column/2307_31/ )
企業実務サポートクラブ|16歳の当事者と専門家に聞く「感覚過敏とは何か?」 _ 企業実務サポートクラブ
(https://www.kigyoujitsumu.com/topics_detail69/id=46398 )
LITALICOジュニア|視覚過敏とは?原因や症状、対策などを解説します