レジリエンスを鍛えて、子どもが楽しく生き抜く力を身につけよう
レジリエンスってなに?
レジリエンスとは心の回復力という意味で使われています。英単語の「resilience」は「はね返り・とび返り・弾力・弾性」という意味があり、転じて「たくましさ」「しなやかさ」の意味合いも含んでいます。落ち込んだときに立ち直るには、回復するたくましさだけではなく、困難に柔軟に対応できるしなやかさも必要なのです。
たとえば、子どもがお友だちとけんかをして悲しい気持ちのとき、また明日話しかけてみよう!と立ち直ることができたとします。そういうとき、レジリエンス力があると、どうしてけんかをしてしまったのだろうと考えることができ、ほかに解決策をみつけられる可能性があるのです。
つまり、レジリエンスを鍛えていると日常生活でおこるマイナスな出来事からの立ち直りが早くなり、柔軟に対応していく術を身につけるような成長が期待できます。たくましさとしなやかさの両方を身につけることは、心の回復力を高めるとともに子どもの成長につながっていくのです。
レジリエンスを高めるには?家庭でできる3つのポイント
レジリエンスは、楽観主義やユーモアがあるなど生まれつきの性質もありますが、後天的に身につけていける力です。子どもが優しすぎる、傷つきやすいなどの性格でこの先大丈夫だろうかと心配だとしても、周囲の環境次第で十分に伸ばせます。特別なことは必要ありませんが、一度に身につけることは難しいので、子どもへの接し方を毎日少しずつ意識してみましょう。ポイントをおさえれば、家庭でもレジリエンスを鍛えられます。
それでは、3つの具体例をあげていきます。ぜひ家庭内で取り入れてみてください。
失敗の経験値を積むこと
たくさんの失敗を経験することで、子どものレジリエンスは少しずつ鍛えられます。子どもの悲しむ顔を見たくない気持ちから、親が失敗や困難を先回りして解決していませんか?レジリエンスは立ち直る力なので、ずっと笑顔でいられる環境では高められません。
子どもが悔しい気持ちや、落ち込んでしまったり、心が折れそうになったりしても、レジリエンスを高める機会がきたと思って、少し見守りましょう。小さな経験をたくさん積み重ねて、子どもの心の強さは鍛えられていきます。
子どもが早く走れなくて悔しい、一人でなかなか着替えができない、大事なおもちゃが壊れてしまったなど、レジリエンス強化の経験を重ねる機会はたくさんあります。
大事なのは、うまくいかないままで終わらせないことです。失敗しないように、うまくできるように口出しはぐっとガマンですが、うまくいかない結果となり落ち込んでいる子どもには気持ちに寄り添うような声かけをすると、また安心して挑戦する気持ちが芽生えやすいです。声のかけ方やほめ方は、次にポイントをまとめました。
声をかけること・ほめること
子どもへの声のかけ方やほめ方を工夫すると、レジリエンスを鍛えるための基盤ができます。ポイントは、子どもの気持ちに寄り添う言葉を先に伝えることです。共感をしてもらうと、子どもの気持ちは一度落ち着き、気持ちを分かってもらえたという安心感が生まれ、レジリエンスに結びつきやすいのです。
効果的な声のかけ方
たとえば、子どもが積み木やパズルがうまくできなくて泣いてしまったとき、どんな言葉をかけたらよいのでしょう。つい、もう一度やってみよう!こうすれば簡単だよ!と励ましや解決法を先に伝えていないでしょうか。子どもは、うまくいかないもどかしさや悔しさがおさまらないと、次のやる気へはなかなか切り替えができません。先に「うまくできなくて悔しいね」と子どもの気持ちを一番に考えて伝えることが大事なのです。そして、親が子どものことを見ていると伝わるようにすると子どもの気持ちは落ち着きやすくなります。たとえば、「よく考えながら挑戦していたから次はできると思うよ!やってみる?」といった声かけです。子どもは、親が自分をわかってくれていると感じて、また挑戦してみようと思えるのです。
親がお手本になること
子どもにとって一番身近な親が見本になることもおすすめ。なぜなら、子どもは親の真似をするのが大好きだからです。ここで注意したいポイントは、見本だからと格好つけた姿を見せないことです。
親も失敗してうまくいかないときがあることを子どもにみせるのが大切です。失敗をしたあとに、どう受け止めて、どうやって立ち直っているのかを隠さずにみせると、親も自分と同じ経験をしているのが伝わり子どもも安心するでしょう。困難や失敗に対応する親の姿を見て、落ち込みすぎなくてよいのだと子どもは物事の捉え方を学びます。
年齢別の関わり方
ここまで、レジリエンスを育てるための子どもとの関わり方をいくつかお伝えしてきましたが、子どもの年齢により心の成長は変わります。年齢別におさえるポイントがありますので、参考にしてみてください。
0-1歳
レジリエンスの土台を作る時期です。困ったときにすぐ親がかけつけてくれるという安心感を与えられるよう心掛けましょう。言葉が未発達なので、泣いたり声を出したりすることで子どもは親を求めます。どうしたのかな?お母さんきたよと優しく声をかけながら、スキンシップを繰り返して、安全な場所だと伝えていくことが大切です。子どもはいつも見守られている安心感を積み重ね、親との信頼関係ができ上がっていきます。
2-3歳
レジリエンスを育てる機会がたくさんある年齢です。やりたいことが明確にでてくるけれど、思うようにできないことが多くある年齢なので、子どもの悔しい気持ちや悲しい気持ちにたくさん共感していきましょう。子どもの抱えていたマイナスな気持ちを親が共有することで、子どもは「自分はひとりじゃない」「味方がいる」と安心して自己肯定感が高まっていきます。新たにチャレンジをして成功したときには、その勇気をほめて一緒に喜ぶと、子どもはさらに達成感を味わえます。この繰り返しが、レジリエンスを育てていくのです。
4-5歳
レジリエンスの土台を強化していけるチャンスです。保育園や幼稚園などに通い始めて、子どもの世界が広がっていくと、周りの状況を見て自分の気持ちを抑えることも増えてきます。子どもはたくさん我慢をして、お友だちを優先することもありますので、子どもの気持ちを考えた言葉を伝えましょう。「頑張っているね、今日も大好きだよ」と、シンプルな分かりやすい声かけでいいのです。毎日外の世界で頑張っている子どもに寄り添う言葉は、子どもの自己肯定感をより強くさせ、レジリエンスの強化へつながります。
6歳
人と比べない価値観が大事になってきます。お友だちとの関係が、より親密になってくる年齢ですが、お友だちの存在はプラスに働く反面、比較対象になってしまい、同じようにできない自分に落ち込んでしまう場合もあります。過程をほめる声かけも大切にしながら、子どもの大好きなところを日頃から言葉で伝えましょう。たとえば、「お母さんが困っているときに、すぐ気づいて声をかけてくれてありがとう」「歌を歌っているときは本当に楽しそうだね」といった些細なもので構いません。子ども自身の素敵なところへ目が向くようにサポートが大切です。
自分の好きなところが増えてくると、子どもは自分に自信を持ちやすくなり、レジリエンスが育つ効果も期待できます。自分を好きになると、周りと比べることも減っていくでしょう。
先輩ママの体験談
実際に先輩ママたちは、普段どう子どもに声をかけているのでしょうか。実例をひとつご紹介します。
3歳男の子のママ
サッカーを習い始めた3歳の長男は、始めは楽しく取り組めていたのですが、最近行きたくないというようになりました。そこで気をつけたことは、なにに対して嫌だと感じているのかをしっかり聞いてあげることです。まだ3歳なので、すべてを自分の言葉にするのは難しいため、「先生におこられちゃったの?」「お友だちとなにかあったの?」など根気よく問いかけました。その結果、先生が変わってしまい嫌になったというキッカケがみえてきました。それを受け止めたうえで、できていることをほめたり、また楽しめる方法を提案したりすると、また楽しめる気持ちになった様子です。
さいごに
レジリエンスを高めることは、子どもの将来に役立ちます。今回ご紹介した方法は一例ですが、一つひとつ簡単なものばかりです。子どもとの関わり方を意識して繰り返していくことで、レジリエンスは強くなっていきます。今日からレジリエンスを鍛えていきましょう。
参考サイト
- 明光プラス|子育て心理学:打たれ強い子がもつ「レジリエンス」って?(https://www.meikogijuku.jp/meiko-plus/other/resilience.html )
- 英辞郎 on the WEB |resilienceの意味・使い方・読み方(https://eow.alc.co.jp/search?q=resilience )
- ベネッセ教育情報|「レジリエンス」とは? 教育で注目を高める理由や子どもにとっての重要性を解説(https://benesse.jp/educational_terms/7.html )
- All About|子どものレジリエンスを鍛える10のコツ!逆境を跳ね返す力とは [子育て] (https://allabout.co.jp/gm/gc/444597/ )
- All About|3歳までのほめ方が5年後のやる気に!子供のやる気を引き出す方法 [子育て] (https://allabout.co.jp/gm/gc/432614/ )
- All About|気持ちの切り替えが遅い子と早い子の違い・親ができる対処法 [子育て] (https://allabout.co.jp/gm/gc/468896/#4 )
- たまひよ|子どもの「レジリエンス」をはぐくむために大人ができることは?【臨床心理士/公認心理師 】(https://st.benesse.ne.jp/ikuji/content/?id=97793 )