ストレスコーピングとは?親子でできるストレス対処法も紹介!
ストレスとは?原因やメカニズム
「ストレス」とは、そもそもどういう状態のことを指すのでしょうか。ストレスの原因やメカニズムを確認しましょう。
ストレスとは
ストレスとは、外から受けるさまざまな刺激によって生じる緊張状態のこと。ストレスは、その強弱に関わらず、人の性質によって、問題のとらえ方が大きく変わるのも特徴です。ストレスを感じると防御反応が働きますが、うまく制御できなかった場合には体や心に大きな影響を与えることがあります。
ストレスのメカニズム
ストレスは、「ストレッサー」、「認知」、「ストレス反応」の3つの構成要素からなっています。
「ストレッサー」とは、ストレスの原因のこと。ストレッサーとなるものは、大きく、物理的・科学的なもの、生理的なもの、心理的・社会的なものの3種類に分けることができます。人間にとっては、人間関係などによって生じる心理的・社会的なストレスが大きいといわれています。
「認知」とは、ストレッサーに対するストレスを自覚すること。ストレスに対してどのようにとらえるかは人それぞれであるのに加え、無意識に認知することもあります。
「ストレス反応」とは、ストレッサーを認知したことで起きる反応のこと。気分の低下など心理的なもの、腹痛など身体的なもの、暴飲暴食など行動的なものなど、さまざまな反応が生じます。
ストレスは、「ストレッサーを認知することでストレス反応が起きる」というメカニズムで成り立っています。
SOS!ストレスのサイン
ストレス状態になったとき、SOSのサインは心や体などにあらわれます。厚生労働省が発表している、心や体にあらわれるストレスのサインを見てみましょう。
<こころのサイン>
・不安や緊張が高まって、イライラしたり怒りっぽくなる
・ちょっとしたことで驚いたり、急に泣き出したりする
・気分が落ち込んで、やる気がなくなる
・人づきあいが面倒になって避けるようになる
<体のサイン>
・肩こりや頭痛、腹痛、腰痛などの痛みが出てくる
・寝つきが悪くなったり、夜中や朝方に目が覚める
・食欲がなくなって食べられなくなったり、逆に食べすぎてしまう
・下痢したり、便秘しやすくなる
・めまいや耳鳴りがする
子どものストレスに対する反応は、大人と比べると、やや体や行動に出やすい傾向があります。特に、ストレスによる不調をうまく言葉にできない小学校中学年くらいまでは、自分の気持ちの変化をとらえるのが難しいのが原因です。子どもが、「おなかが痛い」「ねむれない」と不調を訴えたり、動物や友だちをいじめ、ものに八つ当たりしたりすることはありませんか?子どもは「心が不調だ」と言えないだけで、実は体や行動で心のSOSサインを出している可能性があります。
ストレスコーピングとは?
ストレスコーピングとは、アメリカの心理学者であるラザルスによって提唱された「ストレス対処法」のこと。ストレスの“もと”となるものに、うまく対処しようとすることを指します。ストレスが極端にかかったり、長期的にかかったりすると心や体に悪影響があるため習得する必要があるとされ、ストレスの多い現代社会で注目されている理論です。ストレスに強い人、弱い人それぞれに合ったコーピングを探し、実践していく必要があります。
問題焦点型
問題焦点型のコーピングは、「ストレッサー」自体に働きかけて変化させることで解決する対処方法。問題焦点型のコーピングは、「問題焦点型」、「社会的探索支援型」の2種類に分類できます。
「問題焦点型」は、ストレッサーから離れたり、遠ざけたりしてストレス状態を解決する方法。たとえば、職場や学校の人間関係や、いじめ、仕事量などで悩んでいる場合は、転職や休職、または転校をして状況を改善します。ストレス自体に働きかけるため、実行が難しいというデメリットがあります。
「社会的探索支援型」は、周囲に相談したり、助けてもらったりして問題を1人で抱え込まないことで、ストレス状態を解決する方法。職場であれば上司や同僚、学校であれば先生や友人、家族などに相談して状況を改善します。話すことでストレスを軽減することが可能です。
情動焦点型
情動焦点型のコーピングは、ストレスの「認知」を変えて解決する対処方法。情動焦点型のコーピングは、「情動処理型」、「認知的再評価型」の2種類に分類できます。
「情報処理型」は、ストレッサーによってうまれた感情を人に話すことで言語化し、整理してストレス状態を解決する方法。家族や友人だけでなく、カウンセリングや診察などで感情を話すことなども情報処理型にあたります。特に、子どもの場合は感情を人に話すことで、はじめて整理することが可能になることも。子どもにも有効なストレスコーピングです。
「認知的再評価型」は、ストレッサーに対する認知の仕方を変化させることでストレス状態を解決・軽減する方法です。できるだけポジティブにものごとをとらえなおしたり、第三者の視点に立ってさまざまな認知パターンを考えたりします。
ストレス解消型
ストレス解消型のコーピングは、「ストレス反応」を感じたあとにストレスを発散・解消する対処方法。ストレス解消型のコーピングは、「気晴らし型」、「リラクゼーション型」の2種類に分類できます。
「気晴らし型」では、ショッピングやスポーツなど自分の好きなことをして、「リラクゼーション型」では、マッサージやヨガなどリラクゼーションでストレスを発散・解消します。ストレスを軽減・解消はできますが、ストレスの根本を解決することはできないのがデメリットです。
親子でできる!ストレスコーピング5つ
親子でできる、簡単なストレスコーピングを5つご紹介します。ぜひ実践してみてください。
手を握る
いつでもどこでも手軽に実践できる「自分の手を握る」のもストレスコーピングの1つ。まずは手を「グー」の形にして、握りこぶしをつくります。そのあと親子でいっしょに5カウント数えてください。数え終わったら、フッと手の力を抜いて一息つきます。手があたたかくなって、おだやかな気持ちになりませんか?
コーピングカードを作る
ストレスに対して客観的に向き合うために、自分だけのコーピングカードを親子でいっしょに書いてみましょう。まず、小さな紙を何枚か用意し、自分の心にどんな気持ちがあるのかそれぞれの紙に書き出してください。書きおわったら、子どもに自分が「悲しい・不安なとき」、「イライラしたとき」にどのカードの気持ちに近くなるのか分類してもらいます。カードを作って感情を分類しておくことで、親も、子ども自身もどんな気持ちになったら「ストレス状態」にあるのか一目で分かるようになります。子どもが今どんな気持ちなのか分からず迷っているようだったら、保護者の方が子どもに「どの感情に近いの?」と聞いてみてもいいでしょう。
親子で話しあう
子どもの行動や言動を観察して、ストレスがたまっていそうだと気が付いたら、ストレスの原因となった出来事や気持ちを親子で話し合ってみましょう。「大丈夫?」と子どもの状態を確認するだけの声かけをするのではなく、「困っていることはある?」「助けてほしいことはある?」と子どもが自分の意見を話し出しやすい問いかけをすることが大切です。子どもが話し終わるまで静かに聞き、感情を受け止めましょう。そのうえで、保護者の方が気晴らしの方法やアドバイスを話してみてください。
いらない紙をちぎる
ストレス状態であると感じたら、手を使って細かい単純作業をするのもおすすめです。まずは子どもがちぎってもかまわない、いらない紙を1枚用意して、できるだけ小さく細かく手でちぎるよう子どもに伝えます。1枚でイライラや不安感が収まらないようならもう1枚用意して、さらに細かくちぎってもらいます。子どもがいらない紙をちぎりたくなったら、「ストレス状態」だと気が付くことができるうえ、単純作業をすることで気持ちも収まっているでしょう。
音探し
子どもが落ち着かない気分になっているようだったら、「音探し」がおすすめです。まずは、テレビやラジオなどがついていたら、内容が分からない程度に音量を下げましょう。次に親子で目を閉じて、耳を澄まします。どんな音が聞こえるか、いくつ音が見つけられるか親子で話し合ってみましょう。ひとつ好きな音が見つかったら、1分間その音だけを探して聞き続けます。穏やかで、落ち着いた気分になってきませんか?
さいごに
ストレスの原因やメカニズム、ストレスコーピングについて解説しました。ストレスについて知ったことで、ストレスに客観的に対処できる方法が分かったのではないでしょうか。子どもがストレス状態になったときに出すサインを見逃さずに、ぜひ親子いっしょにストレスコーピングを実践してみてください。子どもに合うストレスコーピングをみつけて、しっかりストレスを解決しましょう。
参考サイト
- クラシエ|ストレスとは?
原因や症状、対策方法を解説
(https://www.kracie.co.jp/ph/coccoapo/magazine/30.html )
- 厚生労働省|ストレス
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-031.html )
- Z-KAI|子どものストレス対処法
(https://www.zkai.co.jp/z-navi/post-3645/ )
- HP大学|コーピングとは?種類とやり方やストレス対策の例を解説
(https://www.hrbrain.jp/media/human-resources-development/coping )
- NHK|ストレスと上手に付き合う ~自分に合ったコーピングを知ろう~
(https://www.nhk.or.jp/citizenlab/mental_health/kiji_0510.html )
- けいクリニック|ストレスコーピングとは?ストレスにうまく対処して生活しやすくするために
(https://www.kei-mental-clinic.com/column/636/ )
- 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター|子どものストレスとそのケアのお話~コロナ禍での体験をばねにして~
(https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/kodomo_liaison/stress.html )
- 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター|新型コロナウィルスに負けないために 親子でできるストレスコーピング編
(https://www.ncchd.go.jp/news/2020/d87c94efa75dede6e54ef2faf38c0b916a05a24d.pdf )
- 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター|ストレス体験をばねに 親子でできるストレスコーピング編
(https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/kodomo_liaison/leaflet1.pdf )
- 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター|やってみよう! ストレスに気づいたときのこと
(https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/kodomo_liaison/leaflet3.pdf )
- 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター|やってみよう! リラクゼーション編
(https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/kodomo_liaison/leaflet2.pdf )